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ドリトル先生と京都の狐

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第三幕その三

「皆高いところは大丈夫だね」
「月に行ったこともあるしね」
「あそこにもね」
 お空よりずっと高い高い場所にだというのです。
「だからどんな高い場所でもね」
「僕達は平気だよ」
「そうだったね、皆月にも行ったことがあったんだ」
 王子は皆の言葉からこのことを思い出しました。
「そうだったね」
「そう、だからね」
「高いところも楽しめるから」
「そこは気にしないで」
「じゃあ行こうね」
 こう楽しくお話してでした、そのうえで。
 皆で京都タワーに向かいます、そこに入ってそうしてその高い京都タワーに昇るとです。
 京都の街が隅から隅まで見えました、そこはというと。
「うわ、凄いね」
「街が端から端まで見えるよ」
「こんなに大きな街だったんだ」
「広いね、色々な建物があって」
「昔のものも今のものも」
「ここもいいね」
 先生もです、京都の街を三百六十度上から眺めながら言うのでした。
「京都の街が全部見えるよ」
「僕ここも好きなんだ」 
 王子は微笑んで先生に答えました。
「だからね」
「それでだね」
「ここにも案内したんだ」
「そうなんだね、有り難う」
「お礼はいいよ、僕も楽しんでるしね」
「ここに来てだね」
「京都を見て回ってね」
 そうしてだというのです、そして。
 そうしたお話をしながら皆で京都を回っているとです、不意にです。
 皆のところにある人が来ました、その人はといいますと。
 白いお顔に吊り上がった細長いお顔、高いお鼻の女の人でした。黒い髪の毛を後ろで上にあげて束ねていて絹の綺麗な、白地に紅の牡丹と桜の和服を着ています。その人を見てです。
 ジップがです、お鼻をくんくんとさせながら言いました。
「この人人間じゃないよ」
「あっ、確かに」
「この人人間の匂いがしないね」
「それに気配だってね」
「人間のものじゃないよ」
 他の動物達もです、こう言うのでした。
「この人は一体」
「誰なのかな」
「人間じゃないけれど」
「だったら」
「狐だよ」 
 ジップが女の人のお顔見上げながら警戒している顔で述べました。
「この人は」
「じゃあまさか」
「南禅寺からの匂いって」
「この人?」
「この人がなんだ」
「はい、実は」
 とても高い声で、です。女の人も皆に答えてきました。とても礼儀正しく落ち着いた動作でそうしてきました。
「私は狐です」
「やっぱりそうなんだ」
「狐だったんだ」
「人間じゃなかったんだね」
「思った通りだよ」
「ドリトル先生ですね」
 狐は先生の前から先生に対して尋ねました。
「そうですね」
「はい、そうですけれど」
「そうですね、実はです」
「実は?」
「神戸にいる親戚から。先生がこちらに来られると聞いて」
 それでだというのです。 
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