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久遠の神話

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第九十五話 中田の決断その八

「どんな怪物でも今の貴方なら倒せますし」
「怪物な」
「油断さえされなければ」
 いいというのだ、聡美は今思う範囲の中で述べた。
「ですから」
「だよな、まあ死ぬつもりはないからさ」
「それは本当にお願いします」
「わかってるさ、生きるさ」
 このことは笑顔で言う中田だった。
「そのうえでな」
「最後の戦いをですか」
「まあ。彼もな」
 ここでだ、中田はぽつりとこんなことも言った。
「出来る限りはな」
「?彼?」
「彼とは」
「ああ、その時に話すからな」
 今はこのことも言わないのだった、そのうえで。
 中田は笑顔で次の日を待った、ある覚悟と共に。
 そうしてだ、その朝だった。
 病院に行くとだった、三人共だった。
 病室の中で目を覚ましていた、そしてまだ起き上がっていないが中田の顔を見て笑顔でこう言うのだった。
「ああ、直行か」
「ずっと待っていてくれたのね」
 両親がだ、迎えに来た中田に笑顔で言ってきた。
「何か随分長い間寝ていたみたいだな」
「意識不明だったのね」
「全くな、待たせてくれたよ」
 中田は笑って、心から喜んでいる顔で両親に言った。
「本当にさ」
「心配していたか」
 父が微笑んで息子に言う。
「ずっと」
「当たり前だろ、家族だからな」
 理由はいらない、それで充分だった。
「心配しない筈ないだろ」
「そうか、だからか」
「そうだよ、とにかく目が覚めてな」
「手術成功したのよね」
 小柄な、まだ幼さの残る顔立ちの少女もだ、中田にベッドの中から言ってきた。顔立ちは中田ではなく母親の方に似ている。
「私達」
「ああ、それでな」
「意識も戻ったのね」
「後はね」
 ここでだ、アポロンが医師として彼に言って来た。
「リハビリが必要だけれど」
「日常生活に戻れるんですね」
「うん、そうだよ」
「そうですか、本当によかったです」
 中田は今度は心から安堵している顔と声で述べた。
「何もかもが」
「ハッピーエンドだね」
「ええ、そうですね」
 中田はアポロンの言葉に応えた、尚彼がアポロンであることは既に察しているがそれを言葉には出さずに述べる。
「じゃあ後は」
「楽しくね、ご家族とね」
 アポロンも中田のことはわかっている、だがだった。
 そのことは彼も隠してだった、こう言うのだった。
「暮らすんだよ」
「そうします、ずっと」
「念願だったからね」
「そうです、この日が来るなんて夢みたいですよ」
「けれど夢じゃないからね」
 アポロンはこのことを確かに告げた。
「安心してね」
「ええ、頬を抓ってもですね」
「それは古典的じゃないかな」
「だからしないです、もうしましたから」
 話を聞いた時にだ、既にだというのだ。 
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