Fate/EXTRA IN 衛宮士郎
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デジャヴから起こる始まり
前書き
友人が書いていた二次創作が面白かったのでアレンジして書いてみました。念のため許可は貰いましたからパクリではないと思います。読む際は広い心でお読みください
変わり映えのない陽気な天気に通学路、気だるげに欠伸をこぼしながら傍を歩くクラスメートたち、ニュースやドラマなどの他愛のない話を楽しむ声などのいつもと変わらない日常。
親友である生徒会長の柳洞一成に昨日頼まれた生徒会の備品の修理のため、いつもより早く学校についた俺こと衛宮士郎は生徒会室で早速、目当てのストーブに解析をかける。
「同調開始」
慣れた呪文を口ずさみ、ストーブの見取り図を頭の中に描く。そうしてストーブのダメになった部品を探していくのだ。
普通の奴じゃこんな芸当はできない。これはいわゆる魔術というやつで体に魔術回路がない人には絶対できないある種の魔法のようなものである。
しかし、そういうことを専門に取り扱う連中から言わせればそんなのはただのお遊び、半人前以下の魔術師だと笑うだろう。けれど、そんなことはどうでもよかった。俺はこの力で人助けができればそれでいいのだから。
「衛宮、終わったのか?」
扉の向こうから一成の声が聞こえる。いつの間にか時間が経ったのだろうか…?
「あぁ、今そっちに行く」
魔術は隠匿すべし、作業中この部屋に俺以外が入らないのは、俺の修理方法が魔術だと知られないようにするためである。
一成には悪いがバレないようにするためにはこうする他なかった。
キーンコーンカーンコーン
チャイムがなった。
だがまだ担任は来ないようだ。それに乗じておしゃべりがクラスを蔓延する。
「まぁ、僕ほどの天才なら当たり前だけどね」
自分のことを自慢気にしゃべるっている男がいる。間桐慎二、俺の親友だが何というかこの誇示するくせさえなければ結構クラスに馴染めたのではないかと思う。だが、そんな男でも女はよく寄ってくる。彼の机の周りにはいつも女の子達がいるように思えて仕方ない。
その様子に苦笑しながらもようやく外から聞こえるドタバタした足音を耳が拾う。チャイムが鳴ってから実に5分は過ぎていた。
「おっはよーう、みーんn…ぁ」
勢い余ったのか教卓の手前でこける。クラス中からどっと笑い声が響く。よほど頭を強く打ったのか起き上がる気配は今のところまだない。はぁ…、藤ねぇはいつもこんな調子なんだから…。
藤ねぇこと藤村大河。この2-Aの担任であり、俺の姉的な存在の人である。
うちによくご飯をたかりに来るたびに食料を食い荒らしていく食い気常習犯である。だけど俺の作った料理を口いっぱい頬ばっているその笑顔を見ると、こちらまで嬉しくなるのだから憎めない。
「せ、先生?」
「さすがにヤバくないかこれ」
「誰か声かけてみろよ」
「誰かって誰だ」
「へたな起こし方したら喰い殺されるぞ」
まるで、横たわる猛獣がはたして死んでいるのか眠っているのか確認しあぐねているかのように遠巻きに担任教師を取り囲む生徒達の視線は、やがて一人の男子生徒に注がれた。
生徒や教職員らはもとより、校長先生までもが直々に”人喰い虎の飼育係”に認定している猛獣使い、俺こと衛宮士郎だ。
「頼むっ!お前しかいない」
少し離れた位置にいる席の一成が手を合わせ頼んできた。藤ねえは、一成でも制御するのは無理だからな…………。
「はあ、わかったよ」
この眠れる虎を一撃で叩き起こす方法をここにいる全員が知っている。
だが、事後処理のことを考えると、それを実行できるのは俺をおいて他にいない。
(本当に世話のやける)
おもむろに藤ねえに近付き、俺は自ら虎の尻尾を踏んだ。
「起きろ馬鹿虎ーーーーーーッ!!」
「虎いうなああーーーーーーッ!!」
効果は抜群。即座に反応し跳ね起きた怒れる虎は自身を侮辱した音源に向かって出席名簿を打ち据え
パシッ!
「「「おおっ!!」」」
音源に真剣白羽取りで阻まれた。 周囲が驚嘆のどよめきをあげる中、そのまま睨み合う虎と猛獣使い。
「んんんっ…………士郎!学校では藤村先生と呼べっていつもいってるでしょう!しかも言うに事欠いて馬鹿虎とは何事かっ!」
「だったら、俺のことも士郎って呼ぶなよ。遅刻した上に勝手にすっ転んで気絶しやがって。藤ねえの気付けにはこれが一番効果的だろうが!」
「にゃにおう!へっ、気絶?」
周囲を見渡し、生徒達が遠巻きに取り囲んでいるのにやっと気がついた藤ねえは、
「ほらほらみんな何してんの。出席を取るわよ!」
出席名簿を打ち鳴らし、何事もなかったように皆を促した。しかし、周りの生徒たちはコソコソと小声で囁き出す。
「気絶したことはごまかす気?しかも、馬鹿虎発言もスルーみたいよ」
「シッ!聞こえるから、知らんふりしとけ。報復を受けるぞ」
「でも受けるとしても衛宮じゃん」
「いや、かわいそうだろ?」
「そうはいっても、この中でとr・・・・いや、藤村先生の報復に対処できるのは衛宮だけでしょ?」
確かに、家に帰ったら俺は報復を受けるかもしれないが、やられたらこっちにも考えがあるので、気にはしてない。
「それじゃあ、みんな今日も頑張ってね!」
藤ねえはそれだけ言うと教室を出て行ってしまった。そんないつもと変わらない日常に俺は安堵を覚える。このまま、何もなく平和に暮らせるということは当たり前に見えて意外と難しい。このままずっと……………
(ごきげんよう、衛宮くん)
(問おう。貴方が私のマスターか?)
「ッ!!」
まただ……………最近よくこのような女の子達の幻聴が聞こえる。まだ授業中だがそっと辺りを見渡す。しかし、声の持ち主は見つからない。
それどころか俺はこの声の主達を知らない。周りにそのような声色を持つ人物にまず心当たりがないのだ。
だが何故か知らないはずなのに覚えがある気がするのは気のせいだろうか………………?
俺はそこで初めて疑問に思った。
声の持ち主をイメージすると浮かんでくるのは決まって赤い服にツインテールの多分女の子、っていうか男だったらそもそもツインテールはしないと思う。もしそんなことをしているやつがいたら、確実にただの変態だ。
そして、もう一人は金髪のライオンをイメージさせる多分?女の子こちらはかなりあやふやだ。男でも違和感がないのはなぜだろう?まさか!?俺にそんな趣味が………………
(なあ、わけないだろう)
くだらない冗談を交えつつ思考を再開する。そもそもこの学校でそのような人物は見かけたことがない。クラスメイトに聞いても知らないの一点張り。あの女の子達は俺の思い過ごしなのか…?
「はーい、みんなー。今日は転校生を紹介するわよー」
ボ〜としていたのか、いつの間にかぶじねぇの隣に誰かいた。そこにいたのは、赤い色のスーツを来た、金髪の少年だ。あれ?でも、さっき藤ねえ教室を出て行かなかったか?いつの間に帰ってきたんだろう?
「皆さん、僕の名は、レオナルド・ビスタリオ・ハーウェイ。いずれ世界中の誰もが僕の事を知りますが、今はあなた達の学友です。この幸運を嬉しく思います。それでは皆さん、暫くよろしくお願いします」
その少年の自己紹介が済むと、教室は無音だった。まるで彼は王だった。誰もが少年の佇まいに圧倒され、あるいは、見惚れていた。
「それと臨時の新しい先生を紹介するわよー」
そんな中、藤ねえだけがいつも通りのテンションで話す。
扉が開き、一人の男が入ってくる。
「……葛木だ」
ビジュアル系の容姿のした男が短く自己紹介するとすぐに黙ってしまう。あまりしゃべらない人なのだろうか?
その後、俺から見たら藤ねえを口説いているようにも聞こえるようなことを話して、開いている席に座ろうと近づいてきた。
「……あなたは面白い人ですね」
「?」
レオが席に座る直前、明らかに俺の方を見てそう言った。
「あなたと戦うのが、今から楽しみに思います」
そう言うと、言いたい事は終わったのか、レオは席に座り前の方を見た。何で急に声を掛けて来たんだろうか?ますます疑問が増える。アタマが、イタいっ…………
「こら士郎っ、居眠りはゆるさぁぁぁーーーん」
「!?」
気がつくと藤ねぇの怒鳴り声が聞こえた。今は藤ねぇの授業だったのか?そんなことにも気がつかないほど、もはやこの世界は俺にとっては意味のないものだった。
「悪い、藤ね、藤村先生…。ちょっとトイレ…」
逃げるように教室から出ていく。正直、これ以上あの場所にいるのは耐えられない。
階段へ向かおうとするが視界は悪く足もふらつき、廊下にある掲示板に張り付いてしまう。その際目に入った新聞の【最終号】という文字にとてつもない違和感を感じる。脳が鳴らす警鐘を無視して、へばりつくようにして新聞の内容を読み取った。
最終号
【怪奇 視界を覆うノイズ】
学園内に残った生徒たちにお知らせデス。
予選期間はもうすぐ終わっちゃいまーす!
はやく真実を見つけ出して、
きちんとお家に帰りましょう!!
さもないと――― 一生、何処にも帰れませ〜ん
頭痛が、吐き気が、悪寒が、軽く今までの倍になった。その新聞から遠ざかりたい一心で一階に下りる。何度か躓きそうになりながらも少しずつ降りていくと、先ほど以上の強烈な違和感に襲われた。
(一体どうしたんだ?)
今ならはっきりと言えるがここ最近、まるで同じものをずっと見ているかのような違和感を覚える。その上既視感がさっきっから頭の中をぐるぐる回っていた。全ての始まりはあの少女達の幻聴。
(士郎)
(シロウ)
その姿を今しがた思い描いたからだろうか、
(あっ……………)
目の前にその特徴的な少女達が現れたのは。…間違いない、あの女の子達だ。俺の記憶にずっと引っかかっているあの少女達…。
(そして……………俺の…………?)
今俺は何を考えた?この少女達は一体俺のなんなんだ?聞いてみるしかない。だが、その肝心の少女達といえばこちらに気づいていないのか、俺に向かって背を向け歩き出す。
「ま、待ってくれ!」
だが少女達にはその声は聞こえていないらしい。歩く速度は止まらない。その歩みに置いていかれまいと俺もあとに続く。だが一向にその距離は縮まらない。
意外にも少女達の足は速く、少しでも速度を緩めたらその場に置いていかれそうなほどである。置いていかれなかったのはひとえにこの肉体が男だった、それだけである。男としてのプライドが傷つけられた気がした。もう少しトレーニング量を増やすべきかな………………。
一階、廊下の突き当たりまで来ただろうか。この先にはただ壁が立ちふさがるだけの行き止まりにしか見えない。
(遠坂とセイバーはここに何の用があるんだろうか……………………ん?遠坂ってだれだ?セイバーって剣士?)
知るべきはずのない彼 名前を口に出しながら疑問符を浮かべる。
そんな俺の目の前で…次の瞬間、信じられないことが起こった。少女が壁に吸い込まれるようにして壁の向こうに消え去ったのだ。
(な、何が起きたのか!?)
もう一度言おう。この先は壁が立ちはだかり、通るべき道は存在しないのだ。一般人であるならこれを幽霊だと言って騒ぎ立てるだろう。
だが生憎と俺は一般人ではない。魔術使いである。驚きはしたが冷静になりながら壁に向かい、
「同調開始」
お決まりの口頭呪文を唱え、行使し先に機械を修理する際使った構造把握が役立つ時が来たと思いながら壁を解析する。すると不思議なことに先程まで壁だったはずの場所に扉がその存在を主張していた。
(ここに入れば…………)
少女を追えば今まで感じていた奇妙な違和感も解けるはず…。意を決して扉を開き、中へと進む。 扉をくぐるとそれまであった頭痛に吐き気、悪寒などは消えていたが
「なんだここは?」
そこは何というか、倉庫みたいな埃くさい部屋だった。この部屋で存在を主張するものといえば何故か俺の背よりも高いデッサン用の人形。こんなの一体誰が使うのだろうか。そのままその存在を無視して少女を追おうと奥へ進む。
(ん?)
しばらく進んだところで気配を感じ、後ろを振り返る。そこには先ほど倉庫で存在を主張していたデッサンくんが立っていた。
「なんでさっ」
思わず口癖が出てしまうほどには動揺していたのだろう。だがその声に応えるものはここにはいない………………このまま行くしかないのか、この先に。
(はぁ〜まさか人形にストーカーされる日が来るとは思わなかったけど、サーヴァントと思えば少しは楽かな……………ん?)
待てっ、今なんて言った?サーヴァント…、どこかで聞き覚えがあるような…。俺にとっては人生すら変えてしまうくらいとてつもなく重要だった気がする。しかしこの場では思い出すことができない。
進んでいくと目の前に大きな扉を見つけた。目の前で固く鎮座する扉からはかすかに威圧感がある。その空気を押しのけ、一気に開けた。
「!?」
そこは教会にありそうなステンドグラスがある部屋で、床には不思議な文様が描かれていた。常だったらその美しさに見惚れていただろう。だがそんな余裕はない。目に飛び込んできたのは積み上げられた死体の山。一体何がどうなっているんだ!?
あり得ない光景にしばらく固まってしまったが、事態の重要さに気づき、慌てて駆け寄る。
「だ、大丈夫かっ!?」
だが返事はない。起こそうとすれどどれもこれも皆灰色に固まり、ビクともしない。その中でびくりと動いたものがあった。
「よかった!無事で……………!?」
だが、それは人間ではなかった。そう、この部屋に倒れていたドールと呼ばれるもの。それは勢いよく起き上がり、俺にめがけて襲いかかろうとする。
「っ!?」
とっさにその場で地面に転がり、間一髪でその攻撃を避けきる。だが攻撃はやまない。殴る、蹴る、突くと執拗にこちらに向かって攻撃を仕掛けてくるが、後ろについて来ていたドールがそれを防ぐ。
(後ろに控えて、こいつがいなければやられていたな)
俺は、それに援助できるように武器を探す。しかし、辺りには武器となり得るものが存在しない。それでもなんとか手助けしようとしたが、気がつくと二人であるこちらが劣勢に追い込まれていた。俺の体力は限界に達し、死ぬイメージが頭から離れない。
(俺はこんなところで死ぬわけには…………………)
脳裏に蘇るのは大火災の記憶。
助けて、助けて…とすがる人たちを置き去りにして今ここに俺は生きている。その人たちのためにもここでは死ねないんだ!
…ポタッ
雫が垂れる。すでにこの体は満身創痍だがそれでも、諦めるわけにはいかない。だが、しかし
「あ………れ?」
人形が突起の付いた右腕を前に出した瞬間、俺の身体に衝撃が奔る。そして人形は付きだした右腕を戻す。それに引っ張られるように身体も少しだけ前へ引かれる。そして人形の突起に真っ赤な色を認識した瞬間、前に倒れた。
「くっ…………そ」
人形がゆっくりと近づいてくる。止めを刺す気だ。身体に力が入らない。早く動かないと。身体からどんどん熱が引いて行く。
(ここで終わるのか?大切な人を守ることなく)
薄れゆく意識の中、ふと脳裏から何かが自分に問いを投げる、そして湧いてでたその言葉に最後の意識を繋ぎ止められる。なぜか分からないが【大切な人を守る】という部分にひどく後ろ髪をひかれる。思考の中枢に居座ったその言葉を中心に自分の意識は再び構成され再び振り返った。
――分からない。
何故、自分はあそこにいたのか。
――分からない。
大切な人とは――いったい誰なんだ。
ーー分からない。
自分が何を忘れているのかすら。
(……………結局わからないことだらけだな)
自分には分からないことばかりじゃないか。そう思った瞬間、自分の胸に熱が戻ってくる。このままでは終われない。起き上がろうと全身に喝を入れて両手足に力をいれるが、まるで床に縫い付けられたかのように動けない。
それでも、このまま終わわすれるのは、許されない。動かない全身を無理やり起こそうと残ったか細い力を振り絞る。骨が凍ってしまったかのように固まって動かない。そして骨の冷気が最後の熱を奪おうとどんどんと中心へ迫って来る。それでも、こんなところで消えられない…………消えたくない!!
「告げる!汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。
聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ」
頭の中に言葉が浮かび上がってくる。自分でも何を意味しているかは理解しきれていない。
「誓いを此処に!
我は常世総ての善と成る者、
我は常世総ての悪を敷く者」
けれど、俺の中の何かがそれを押している。本能といえば良いのだろうかわからないが、ただ、がむしゃらに口にするだけだ。
「汝三大の言霊を纏う七天、
抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」
突然、ガラスが砕ける音がした瞬間、床が光り始めた。一体なんなんだこれは!?目が眩み、一瞬瞑ってしまう。再び目を開けると
「やれやれ、俺のような役たたずを読んだのは貴様か……って衛宮士郎!?」
そこに現れたのは浅黒い肌をした赤い外套の武人だった。その顔が俺の方を向いた瞬間、顔が歪み般若のような面構えになる。
「なぜ貴様がっっ!!」
肩を思いっきり掴まれる。初対面でこの言われようなんだ?首をひねるもそもそもこんな知り合いは俺にはいなかったはず。
「すまん…………俺、あんたに何かやったのか…?」
「な・ん・だ・と〜」
その行動がさらに相手の火に油を指す結果となってしまい、思いっきり前後に揺さぶられる。
「うぇ」
「貴様には山ほど言いたいことがあるのd」
その言葉が言い終わらないうちに、いつの間にか俺たちの背後に忍び寄ったのか、敵の人形がそのまま攻撃を仕掛けてくる。その気配に
「えぇい、うっとおしい。今、私はこの未熟者と話をしているのだっ。邪魔建てするのならば容赦はしないっ!!」
振り向きざま、腕を振り抜くように拳で敵の人形を殴り飛ばした。
「消えるがいい!」
何処からともなく双剣を出現させると人形に斬りかかる。力の差は歴然だ。人形はものの数秒もかからないうちに細切れになって動かなくなる。
(こいつ、実力が半端ない。一瞬で戦闘不能にしやがった)
一体コイツは何者なんだ…?俺の混乱をよそにそいつは俺の前で剣を消すと、ずかずかとこちらに歩いてくる。
「さて、ゆっくりはなそうではないか。衛宮士郎…」
逃げられないと悟った。しかし、そいつの動きが止めざるを得ないことが起きる。いきなり高らかにファンファーレが室内に流れたと思ったら声が響き渡った。
“聖杯戦争予選突破、おめでとうございま〜す。イェーイ!これからせいぜいがんばってくださいね〜“
聖杯戦争?
「何なんだそれ……………ぐっ!?」
【聖杯戦争】その言葉を口にした瞬間、それに関する記憶が砂地が水を吸い込むかのように一気に脳内へと流れ込む。
(問おう、あなたが私のマスターか)
(セイバー、アーチャー、ランサー、ライダー、キャスター、バーサーカー、アサシン…。過去の英雄をクラスの枠に当てはめ、この世界に現界させ、聖杯を奪い合う儀式)
(さらばだ。理想を抱いて溺死しろ!!)
(士郎、お弁当を作ったから出かけましょう?)
(えへへ。キス、しちゃった)
(今、お前は見たはずだ
未来に待ち受ける現実を。
生涯下らぬ理想にとらわれたまがい物を。
それが自分の正体だと理解したか)
(おまえには負けない!誰かに負けるのはいい………………けど!自分には負けられない!!!)
(いくぞ英雄王!武器の貯蔵は十分か!)
「………………そうだ…………そうだった」
何で俺は、忘れてたんだ……………あの戦いのことを…………そして
「遠坂…………セイバー………」
自分が最も愛していた彼女と俺を守ってくれた少女のことを。
「う、あっ、く…………!?」
体が下に向かって倒れる。遠坂とセイバーのことを忘れていたことにショックを受けたのか、それとも、あまりにも膨大な二週間の記憶とその後の記憶が一気に頭の中を駆け巡り、脳がオーバーヒートを起こしたのかわからないが、不覚にも俺の理想の未来が見ている目の前で意識がブラックアウトしていく
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