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精霊と命の歌

作者:蒼鈴六花
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Disc1
  鈴鳴る氷の洞窟

 
前書き
ラタ様大暴走。
何でこうなった!

今回はエミルを活躍させようと思ったのに何時の間にかラタトスクの活躍になってしまった……
まあ、エミルの活躍もこれから増やせば良いや。

そんな感じで、最新話どうぞ。
 

 
夜が明け、起きて準備を整えた僕達は森から来たモーグリにモーグリの縦笛をもらってから出発する。

石化してしまったブランクさんからもらったという地図を頼りに霧がたち込める霧の大陸を抜け出すためにここから平原を越えた先にある洞窟を目指す事になった。
平原はそこまで広いものでもなく、目的の洞窟にはすぐに着いたんだけれど……

(すごく寒そうだね……まるで氷の神殿みたいだ)

(そうだな。だが……何か嫌な気配を感じる。気をつけろ)

(うん)

ビビによると氷の洞窟と言う場所みたい。
話の途中でビビのおじいちゃんが死んでしまっている事が分かったけれど……
ちょっと暗い雰囲気になってしまったけれど僕達は氷の洞窟に入った。

「うわぁ……すごく綺麗だね」

「でも、とっても寒いね……」

奥から冷たい風が吹いてくるから余計寒く感じる。
綺麗な場所だしゆっくり進みたいけれど長居はできそうにない。
先に進もうと言うジタンの意見に賛成して僕達は洞窟を進む。

(おい、その風が吹いている所は通るな)

(え?)

(魔物の気配がする……どうやらこの風は魔物の通り道らしい。うかつに近寄るな、無駄な戦闘になる)

(わ、分かった)

でも、これを皆にどう伝えよう?

「あ、ビビ! そこは通っちゃだめ!」

ビビが風の吹いている所を通ろうとして慌てて止める。

「どうしたんだよ、エミル」

「え、その、この風からなんだか嫌な予感がして」

「うーん、オレは特に感じないけれど……エミルがそう言うなら避けて通るか」

そう言って風を避けて通るジタン。
自分を信じてくれたのが嬉しいけれどなんだか少し後ろめたいような気もする。

「ありがと……」

「お礼を言われるほどの事じゃないさ。嫌な予感は避けた方がいいだろ?」

そう言って笑うジタン。

(……できればジタン達にラタトスクの事を言いたいけれど、どう言えば良いんだろう?)

(俺の事は気にするな。説明が面倒だし、こいつらとの旅が長く続くとも限らない。短い旅なら言わない方が余計な混乱を招かねぇだろ)

(ラタトスク……)

皆は、僕は知っていてもラタトスクは知らない。
ラタトスクも一緒に旅をしているのに。
それは、なんだか悲しい。
確かに短い旅になるかもしれない。でも、ラタトスクの事を知って欲しいな……
でも、どうやって伝えよう?

どんどん寒さが強くなる洞窟。
こんな場所で伝えるのもどうかと思うからとりあえず今は先に進む事に集中する。
途中、ジタンがビビに頼んで氷を溶かしてもらって宝箱を見つけていたり氷漬けのモーグリに出会ったりしながら進む。

激しさが増す凍える風に皆の動きがだんだん鈍くなる。
特にビビの動きが鈍い。

「大丈夫? ビビ」

「だいじょう、ぶ……」

「っ! ビビ!」

そう言いつつもビビの足取りはかなり危うくなっていて道から落ちてしまった。
その後に続いて騎士の人、スタイナーさんも落ちてしまいすぐにガーネット姫やジタンも倒れてしまう。

(ど、どうしよう! このままじゃ、皆が死んじゃう!!)

(落ち着け! この先から嫌な気配が風と流れてくる。おそらくこの吹雪みてぇな風はその気配が原因だ。そいつを何とかすれば吹雪が止むだろう)

ラタトスクがそう言った瞬間、奥から鈴の音が聞こえてくる。
きっと気配の主だろう。僕は急いで気配のもとへと向かおうとした時、ジタンが目を覚ました。

「ジタン! 良かった、気付いたんだね」

「エミル……」

鈴の音で目を覚ましたらしいジタン。
僕はジタンに皆を任せてこの先にいる吹雪の原因を止めに向かおうとしたけれどジタンも一緒に来る事になった。

「チッ、死んでいなかったか……」

そして、先に進むと凍った滝の上にビビに少し似ている羽の生えた人がいた。
吹雪を起こしている原因。

(まるで俺達を殺したかったみたいな言葉だな……)

(そうだとしても一体なんで?)

(知らねぇよ。だが、相手は俺達を殺す気だ。来るぞ!)

羽の生えた人は下りてきたと思ったら氷の巨人を召喚した。
巨大な蛇のような竜のような巨人。
僕とジタンは武器を構え、戦闘を開始した。

僕達は羽の人の魔法を避けたり防いだりしながら巨人に切りかかる。
そして運良く出来た隙に巨人の翼の一部を切り落とす事に成功したけど巨人はすぐに再生する。

「再生した!?」

「何度やっても無駄だ!」

相手の嘲笑う声が響く。

(後ろにいるあいつが回復している! 奴から倒せ!)

ラタトスクの声が響いたと同時にジタンが羽の人に向かって動くのが見えた。

「ジタン!」

「任せな!」

僕が巨人の気を引きつつその間にジタンが羽の人を倒しに行く。

「僕が相手だ!」

巨人は翼や魔法を使い僕に攻撃を仕掛ける。
相手のリーチは長く、接近戦しか出来ない僕は中々近づけない。
せめてイグニスの力が使えれば良かったけれど……
弱くなってしまった今の僕じゃあ防ぐので手一杯。
いや、完全に防ぎきれていない。少しずつ傷が増えている。
途中からジタンが羽の人を倒してこちらに来てくれた。

「大丈夫か? エミル」

「うん、まだいけるよ」

ジタンがいれば相手に近づける。
今の所、相手は広範囲の技は使ってこないから撹乱しながら戦えば何とか近づいて攻撃が出来る。
僕達は少しずつ、しかし確実に相手を追い詰めた。

(? ……エミル、あいつのコアを見ろ!)

(あれ? さっきは青だったのに……今は、黄色?)

そう思っていると相手のコアが赤く変わった。

「ギシャアアアアア!!!」

その瞬間、相手は咆哮して様子が変わり始めた。

(気をつけろ! 何か来る!)

ラタトスクが叫んだ時、相手の後ろの地面から急に水が湧き出して津波のように水が押し寄せてきた。
防ぐ手立てもなく、僕とジタンは押し寄せてきた水に飲み込まれて壁にぶつかる。

「ぐぅっ!?」

水は嘘のようにどこかに消えていったけれどびしょ濡れの状態でさらに体が凍えた。

(い、しきが……)

(おい! エミル! しっかりしろ!!)

壁にぶつかってから僕の意識はどんどん薄れ、気絶してしまった。


◆ ◇ ◆

「っく……エミル!」

相手の攻撃で壁に叩きつけられ、一瞬意識を失いそうになるもののなんとか意識を失わずにすんだ。
だけど、もう戦えそうにない。
少し離れたところで倒れているエミルは完全に気絶してしまったようだ。
このままじゃやられると思うが体が動かない。
そんな間にもエミルに奴が近づいていく。
くそっ! なにも、できないのか! このままやられるのか!

そう思った時、エミルに異変が起きた。
気絶していたエミルがふらりと起きたと思ったら緑色の光に包まれたのだ。
あれは、オレがトランスした時と色は違うけど同じ光……と言う事はエミルがトランスしたって事か!?

光から出てきたエミルは驚くほど変化していた。
オレと同じ金色の髪は長くなり、腰の辺りで二回ほど三つ編みにしている。
持っていた剣は紺色に輝いて服も少しだけ変わり、背中には不思議な模様の輪が浮いている。
身長も少し伸びて大人びた感じだ。
別人にも見えるが、成長した姿にも見える姿。

エミルはふわりと浮き上がり、目を開く。
開いた目はいつもの優しそうな雰囲気のする緑ではなく、荒々しい雰囲気のする赤へと変わっていた。

「俺を怒らせた事……後悔しろ」

まるで地の底から響くような声はエミルの声なのにエミルとは思えない。

エミルの様子に相手の巨人は怯えたように翼で攻撃するが、全て剣で弾かれる。

「っは! そんなものかぁ!!」

エミルが巨人の片翼が切りさき、巨人は苦しみ叫びだす。
そしてそんな巨人に容赦なく追撃を加え続ける。

「ギィィィィィィ!?」

「うるせぇ……一瞬で終わりにしてやるよ!! 『火炎の息』」

エミルが片手を巨人に向けるとそこから炎を吹き出し、一瞬にして巨人を溶かしていく。

「ギィ……ェェェェェェ……」

「消えろ」

巨人が哀れにも思えるような悲痛な声を上げて消滅し、コアが残ったがそれもエミルに踏み砕かれ消えていく。
コアの欠片も完璧に消滅した所でエミルのトランスが解けるが、あの荒々しい赤い目は変わらない。
一体……エミルに何が起こっているんだ?
少し回復した体を無理やり動かして立ちながら問う。

「お前は……エミルか?」

「……さあな。俺は寝る。後は任せた」

「は? ちょっ! おいっ!」

急に倒れたエミルを咄嗟に支えて床に降ろす。
さっきのエミルは一体どうなっていたのか……
今考えても答えは出てこない。
吹雪が止んだ今、ガーネット姫達の事も気になる。

「……う」

「目が覚めたのか?」

姫達の所へと戻ろうとした時、エミルが目を覚ました。

「え? ジタン! 良かった! 無事だったんだね!」

「あ、ああ。なんとかな」

エミルは、さっきの事を覚えていないのか?
純粋にオレの無事を喜んでいる姿を見ても嘘をついているようには見えない。
ますますさっきのエミルについて気になる所だが、今は姫達の所へ戻ろう。

オレ達は姫達のもとへと向かった。



◆ ◇ ◆

巨人の攻撃で気絶しちゃったけれど、巨人は何とか倒せたみたい。
本当にジタンが無事で良かった。

(ねぇ、ラタトスク。僕が気絶した後の事を詳しく聞きたいんだけれど……)

(……)

(ラタトスク?)

寝ちゃっているのかな? ならそっとしておこう。
そう思いながらジタンと一緒にビビ達の所へ戻ると皆は起きた所だったみたいだ。
良かった……皆無事で……

その後、ジタンとスタイナーさんがまた口論になっていたけれどガーネット姫が止めてそれから僕達は洞窟を出た。

洞窟の外は温かい日光に広い青空。
氷の洞窟は確かに綺麗だけど吹雪のせいで楽しめるものではなかったし、温かい日光はとてもありがたく思える。

僕達は次の目的地を洞窟出口から見える村に決めて向かう事になったけど……そのまえにガーネット姫の言葉遣いや偽名を考えた方が良いとジタンの提案でガーネット姫が偽名を考えた。
その時またジタンとスタイナーさんが喧嘩するけど僕達全員で止め、ガーネット姫はダガーと名乗る事に決定した。

それから僕達は、眼下に見える村へと出発した。






 
 

 
後書き
うーん、ジタンの言葉遣いがいまいち分からない。
ジタン視点、変じゃなかったかな?

それと、ラタトスク(エミル)のトランス。
あんまり姿を変えないかそれとも大胆に変えるか迷った結果、変える事にしました。
イメージ的には精霊っぽくと成長したエミルって感じですかね。

ちなみに背中の輪のイメージはラタトスクの間とサモンナイト3の先生、抜剣バージョンから。
コマンドは魔物の力。クイナの青魔法に近いけど……こちらはラタトスクの騎士の魔物の力。
魔物の力だけを借りるため少しのマナを使うだけですむ的な?ただ、コントロールがとても難しく、トランスの時くらいしか戦闘に使えないみたいです。
 
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