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戦国異伝

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第百五十五話 加賀入りその六

「敵の動きを探るのじゃ」
「さすれば」
「我等が」 
 すぐにだ、滝川と蜂須賀が応えてきた。
「忍の者を国生に放ちます」
「そうします」
「うむ、飛騨者達もじゃ」
 彼等もだというのだ。
「物見に行かせよ」
「わかりました、では」
「あの者達も」
「まずは迂闊には進まぬ」
 慎重にというのだ。
「そしてじゃ」
「そのうえで、ですな」
「敵の場所を知ってからですか」
「そうじゃ、おそらく向こうから来る」
 門徒達からというのだ。
「だからここはそうするとする」
「では殿」
 丹羽が信長に言って来た。
「敵を見つけ次第ですな」
「その敵をその都度叩いていく」 
 それが信長の今の考えだった。
「よいな」
「では近江は」
「延暦寺のことか」
「あの寺が気になりますが」
 今織田家の領地、近江もほぼ空になっている。全て本願寺に兵を向けているからだ。
 だからだ、ここで延暦寺が動けばというのだ。
「どうされますか、あの寺は」
「爺に命じておる、どうしてもという時は兵を率いて囲めとな」
「平手殿にですか」
「都には行かせるなとな」
 金ヶ崎城、近江の傍にいる彼にだというのだ。
「命じておる、だからな」
「安心してよいですな」
「爺ならやってくれる」
 平手ならというのだ。
「だからじゃ」
「この国での戦はですか」
「案ずることはない」
 信長は言った。
「全くな」
「ではまずはここで、ですか」
「この陣において」
「守る」
 そうするというのだ。
「そして敵の動きを知ったうえでじゃ」
「敵を攻める」
「そうしますか」
「まだ敵の動きはわからぬ」
 だからだというのだ。
「まずは見るぞ」
「はい、わかりました」
「それでは」
 家臣達も応える、そうして。
 信長は今は兵を動かさず敵を調べさせた、その結果すぐにだった。
 煉獄が信長の前に降り立った、彼はそのまま信長に述べた。
「殿、いたぜ」
「左様か」
「ああ、数は二十七万」 
 煉獄はまずその数から話した。
「ただ、三つに分かれているぜ」
「三つか」
「ここにそれぞれ向かっているぜ」
「北、北東、北西じゃな」
 その方角は信長は自ら言った。
「それぞれじゃな」
「おいおい、まだ言ってないぜ」
「そう思ったがその通りだったのう」
「見えてる訳じゃねえよな」
「ははは、思っただけじゃ」
 笑ってこう返す信長だった。 
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