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久遠の神話

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第九十一話 戦いでも得られないものその五

「迷い、そして時にはです」
「誤った選択をしますか」
「そうです、ですから貴方は間違っていますが」
 それでもだというのだ。
「その誤ちを正すべきだったのです」
「では僕は誤ち」
「そこから戻りました」
 穏やかかつ温厚な言葉だった。
「よくぞおわかりになられました」
「家族の言葉を聞きまして」
「ご家族のですか」
「おそらくは」
 その声を聞かせてくれたのは誰かもうわかっていた、コズイレフはそうしたことがわかる程の聡明さも備えているのだ。
「あの方々がそうしてくれました」
「ギリシアの女神達が」
「そうですね、彼女以外考えられませんね」
「やはり」
「はい、では」
「その女神達の導きにより」
「貴方も戦いから降りることになります」
 そうなるというのだ。
「よかったと思います」
「そうですね、確かに」
「誤ちは正せばいいのです」
「償いは」
「貴方は償う罪を犯してはいません」
 そこまでは至っていないというのだ、戦いの中で。
「ですから」
「いいのですね」
「そうです」
 こうコズイレフに言うのだった。
「ですからお気に召されずに」
「戦いから降りるだけでいいのですか」
「そうです、では」
「では、とは」
「貴方が降りる時と場所は聞きましたが」
「その時のことですか」
「私が立ち会わせて頂いて宜しいでしょうか」
 今度の言葉は申し出だった。
「そうさせて頂いて」
「はい、それでは」
「貴方の最後の戦い、そして戦いから降りられる時を」
「御覧になられますか」
「最後の最後まで」
 そうさせてもらうというのだ。
「では」
「はい、それではお願いします」
 彼も頷く、そしてだった。
 コズイレフは大石と話をしてからそうして教会を後にした、大石はすぐに上城達同志に彼が戦いから降りることを伝えた。そのことを携帯で聞いてだった。
 上城はほっとした顔になった、それですぐに自分の部屋連絡を受けた時にいたそこから樹里に連絡をした。彼の携帯で。
 その話を聞いてだ、受理もまたほっとしてこう彼に言った。携帯から。
「そう、よかったわね」
「うん、そうだよね」
「これでコズイレフさんも降りられて」
「残るは二人だね」
「中田さんとね」
「あの人だよ」
 加藤についてはだ、上城は顔を険しくさせて電話の向こうの樹里に告げた。
「加藤さんもね」
「あの人は難しいわよね」
「どうすればいいかな」
 戦いを好む加藤を戦いから降りさせる、それにはというのだ。
「一体」
「戦いたいから戦う人は」
「どうすればいいかわからないよ」
「つまりあの人にとって戦うこと自体が目的なのね」
「それで趣味なんだ」
 もっと言えば生きがい、それである。 
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