真似と開閉と世界旅行
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生と死〜
前書き
だから切り所が・・・ではどうぞ。
・・・ダアトに到着すると、既に三勢力のトップが集まっていた。
「お前たちか!今、アッシュからの手紙を見ていたところだ」
「アッシュからの手紙!?アッシュ本人はどこに行ったんですか?」
ルークの問いにテオドーロさんが答える。
「ローレライの宝珠を探すとかで、セフィロトへ向かった」
「手紙にはなんて?」
「障気を中和する方法を発見したと書いてある。それに従ってレプリカに協力を依頼する代わりに、彼らの保護をしろと言ってきているな」
「あいつ・・・自分が死ぬことは書いてないんだな」
「どういうことだ?」
「ガイ、説明をお願いします」
「・・・また俺かよ。まあいいや、実は・・・」
ガイが事情を説明する。
「アッシュは何を考えているのだ。何千というレプリカと共に心中するとは!」
「当然、許可しませんよね?そんなの駄目ですよね?」
テオドーロさんにアニスが言う。
「レプリカとはいえ、それだけの命を容易く消費する訳にはいかん・・・しかし・・・」
「お父様!しかしではありませんわ!」
「・・・ジェイド。お前は何も言わないのか?」
「私は・・・もっと残酷な答えしか言えませんから」
その言葉にティアが目を見開く。
「・・・大佐。まさか!」
そしてルークが・・・
「・・・俺か?ジェイド」
辺りに沈黙が漂い・・・最初にジェイドの胸ぐらを掴んだのは・・・ガイだった。
「てめぇっ!アッシュの代わりにルークに死ねって言うのか!ふざけるな!」
当然ナタリアも反対する。
「駄目ですわ!そのようなことは認めません!私はルークにもアッシュにも生きていてもらいたいのです!」
俺はガイを落ち着かせる。
「ガイ、この状況で頭に血を上らせんなよ」
「・・・そうだな」
ガイが手を話す。ジェイドは眼鏡をあげ・・・
「私だってそうです。ただ、障気をどうするのかと考えた時、もはや手の施しようもないことは事実ですから」
「俺は・・・」
その時、ティアが叫んだ。
「みんなやめて!そうやってルークを追い詰めないで!ルークが自分自身に価値を求めていることを知っているでしょう!安易な選択をさせないで・・・」
「失礼。確かにティアの言う通りですね」
「・・・少し、考えさせてくれ」
ルークはそう言って一人で歩いていく。
『咲さん、止めないッスか?』
「・・・俺には、説得力がないからな。・・・それに、世の中には本当にどうしようもないことだってある」
『咲さん・・・』
「ま、そこはアイツ次第だな」
知也がそう言ってその場から去る。
「ルークさんの判断を・・・待ちましょう」
「・・・そうだな」
撫子と黒羽も、他のみんなもその場からいなくなる。・・・俺はアリエッタを連れて二人きりになる。
「・・・どうしたの?」
「アリエッタ、今から言うことを怒らずに聞いてくれ」
「え・・・」
「・・・アリエッタ、お前はダアトに残るんだ」
「・・・!?ど、どうして・・・」
「・・・これ以上、お前を連れていく訳にはいかない」
「あ、アリエッタが迷惑かけたから・・・?だったら、だったら謝る!だから、アリエッタを置いていかないで、捨てないで!」
・・・俺は目の高さをアリエッタに合わせ、頭を撫でる。
「・・・別に迷惑な訳じゃない。それに、俺がアリエッタを見捨てるわけないだろ?」
「じゃあ、どうして・・・」
「裏切り者」
「・・・っ」
俺の言葉にアリエッタが絶句する。
「・・・ほらな。この先、きっとまた六神将と戦う時がある。その時・・・堪えられないだろ?」
「・・・がまん、する。リグレットが相手でも、ラルゴが相手でも・・・」
「シンクは?」
「・・・シンク?どうして・・・」
ああ、アリエッタは知らないんだ。俺は意を決してアリエッタに話す。
「シンクの正体は・・・イオンレプリカの・・・一人だ」
「・・・!!」
「もし、アイツがイオンの真似でもして、“裏切り者”・・・なんて言われて・・・堪えられるか?」
「あ・・・あ・・・」
何か言いたそうに口を開くが、声にならず、アリエッタは俯いてしまう。そして・・・
「・・・なさい」
「・・・」
アリエッタの足元に雫が溢れる。
「ごめん、なさい・・・」
「・・・うん。仕方ないよ」
「だけど、サキが心配で、アリエッタも・・・」
俺は空間からあるものを二つ取り出す。
「アリエッタ、後ろ向いて」
「うん・・・」
俺はアリエッタの髪を優しく掴み・・・まとめて縛る。
「ほら、完成」
「え・・・?」
「ラルゴの奴、雑に切ったから髪がバサバサでウザいだろ?だから、俺の予備の髪止めで縛った」
「・・・」
「んで、これ」
俺はアリエッタに、眼鏡を手渡した。
「・・・これ、サキがつけてる・・・」
「そ、眼鏡。まあ、俺の代わりに・・・お守りってことで」
「・・・エイも同じようなの身に付けてた」
「ああ・・・アリエッタは、アニスの報告を聞いたか?」
「・・・よく、わからなかった」
「だろうなぁ・・・んじゃ、ちゃんと説明するよ」
俺は全てを話す。色んな世界のことを・・・
「・・・」
アリエッタは難しい顔をしていた。
「・・・やっぱり、信じられないよな」
「・・・信じる」
「アリエッタ・・・」
「エイの眼鏡と形が似てるのって・・・」
「・・・ああ。アイツに眼鏡を譲ってもらってな。流石に何年も使ったから、ガタが来て始めのは元の世界に置いてきてるけど・・・大体はそれに近い物を選んでるな」
「・・・サキにとって、エイも大切な人なの?」
「・・・ああ。目の前でいなくなってしまった・・・大切な、人だ」
「・・・アリエッタ、待ってる」
「え・・・?」
「もし・・・もしサキが帰っちゃっても、また会えるよね?」
「・・・ああ、必ず。絶対に会いに来る。ここは・・・“サキ・オスロー”の故郷なんだから」
「・・・うん。約束、だね」
「ああ、約束だ。嘘ついたら・・・どうするか?」
「いらない。だって絶対サキは守ってくれるもん」
「・・・そっか」
アリエッタは笑顔を俺に見せる。
「行ってらっしゃい、サキ」
「・・・ああ、行ってきます」
俺は立ち上がる。
「またすぐに戻ってくるよ」
「・・・うん」
そしてみんなと合流しようとした時・・・アッシュと話すみんなを見つけた。
「どうしても死ぬつもりなのか?」
「そんなことはどうでもいい。結局セフィロトを全部回ってもローレライの宝珠はなかった。このままでは、ローレライを解放できない。お前は宝珠を探すんだ」
「お前っ!自分が死ぬってことがどうでもいいことな訳ないだろ!大体宝珠が見つかってもお前がいなきゃ、ローレライは解放できねぇだろーがっ!」
「お前こそ馬鹿か?おまえは俺のレプリカだぞ。こういう時に役立たなくてどうする」
「そんな言い方はやめて!」
「お前は引っ込んでろ!」
アッシュに怒鳴られ、ティアは黙る。
「お前がやれ、ルーク!俺の代わりにな!」
「アッシュ!待てよ!お前を死なせる訳には・・・いや、死なせたくないんだ!」
アッシュがルークを振り払い、立ち上がる前に剣を突きつける。
「くどいっ!!」
「アッシュ・・・」
「もう、これしか方法がねぇんだ!他の解決法もないくせに勝手なこと言うんじゃねぇよ!」
「だったら・・・だったら俺が!俺が代わりに消える!」
「ルーク!?」
「馬鹿言うんじゃない!」
ティアとガイが動揺する。
「代わりに消えるだと・・・?ふざけるな!!」
アッシュが剣を振り下ろし、ルークが防ぎ・・・空間が揺らぐ。
「やめなさい!消すのはダアトの街ではない。障気です!」
「ふん・・・いいか、俺はお前に存在を喰われたんだ!だから、俺がやる」
「アッシュ・・・本当に他の方法はありませんの?私は・・・私達はあなたに生きていて欲しいのです!お願いですからやめてください!」
「俺だって死にたい訳じゃねぇ。・・・死ぬしかないんだよ」
アッシュが去っていく。
「駄目だ!あいつを失う訳にはいかない」
「ルーク!!」
バキィ!
ガイがルークを殴った。
「・・・ってぇ・・・」
「・・・死ねば殴られる感触も味わえない。いい加減に馬鹿なことを考えるのはやめろ!」
「・・・ガイ」
ルークは目を逸らす。
「・・・・・・ごめん」
「ルーク・・・」
ルークは立ち上がる。
「もう、決めたんだ。怖いけど・・・だけど・・・決めたんだ」
「ルーク!あなたという人は・・・」
「・・・ルークもイオン様みたいに消えちゃうの?」
「・・・」
ルークは黙る。
「あなたが本気で決心したなら、私は止めません。ただレムの塔に向かう前に、陛下達への報告だけはしていきましょう」
「・・・みんな・・・ごめん」
・・・俺は黙って遠くからそれを見ていた。
「・・・いいのか?」
いつの間にか背後に外史メンバーがいた。
「・・・さあ、な。俺に・・・あいつを止める資格なんてない・・・ほら、行こうぜ」
そして、俺達は集合する。
「・・・俺。俺・・・やります。俺が命と引き替えに、障気を中和します」
「・・・決心は変わらぬのか?」
「・・・はい」
「生き残る可能性はあるんだろう?」
「・・・いえ、殆どないと思います」
「・・・では、我々は・・・死ねと告げねばならぬのか・・・」
「お祖父様!」
テオドーロさんは続ける。
「このままでは・・・どのみちみんな死んでしまう。新生ローレライ教団のレプリカ大地にかけるという話も出たが・・・この世界を受け入れてくれるとも思えぬ」
「恨んでくれてもいい。人でなしと思われても結構、だが俺達は、俺達の国民を守らなけりゃならない」
「わしは・・・正直なところ、今でも反対なのだ。しかし他に方法が見当たらない。頼んでもいいだろうか・・・ルーク・・・」
「・・・は・・・はい・・・」
「しかし皮肉だ・・・レムの塔がある場所は元は鉱山の街。もしルークが成功すれば、ユリアの預言が成就する」
『!』
「ND2018、ローレライの力を継ぐ者、人々を引き連れ鉱山の街へ向かう」
「そこで若者は力を災いとし、キムラスカの武器となって街と共に消滅す・・・?」
ジェイドとアニスが預言を思い出す。
「ヴァンは言っていたよな。ユリアの預言は歪みを物ともしないって・・・」
「・・・やめて!」
ティアの言葉でその話題は途切れる。・・・そして、ルークが意思を見せた結果、三国同盟、プラネットストーム停止、エルドラントへの進行・・・全ての会議が終了した。
「アッシュはまだ来てないのか・・・」
俺達は再びレムの塔に到着する。・・・そこに、倒れているレプリカを介抱するマリィさんの姿があった。
「この人は・・・」
「・・・北の街で人々に追われ、奴隷のように扱われながらこの塔に辿り着いた同士だ。・・・なぜお前が来たのだ?我らと共に死に至る道を進むのはお前か」
「じゃあ、あなた達は命を・・・?」
・・・マリィさんは撫子の言葉に返してくる。
「・・・それしかない。そう悟った。決めたのだ」
「いいのかよ?アンタらは被験者の為に消えても」
知也が言うが、マリィさんは首を振る。
「・・・被験者の為ではない。まだ辿り着いていない多くの仲間達が、住む場所を見つけるためだ。我らは我らの屍で国を作る。お前達も我らの死を求めているのではないか?」
「・・・それは・・・」
「俺がやると言っただろう!何故ここに来た!?」
昇降機でアッシュが上がってきた。
「アッシュ!!だからそれは俺が・・・」
「レプリカ共。俺が心中してやる。来い!」
レプリカ全員がアッシュを中心に集まる。
「アッシュ!馬鹿なことはおやめになって!」
「そうだアッシュ!やめるんだ!」
「偉そうにぐだぐだ言ってないで、てめぇはさっさとどこかに失せろ!お前もレプリカだ。ここにいれば捲き込まれて消えるんだぞ!そうなったら誰がローレライを解放するんだ!」
「ローレライの解放はお前がやれ!この場は・・・俺がやる!」
「そんなに死にたいのか!?」
「・・・違う!俺だってお前と同じだ!死にたくない!だけど俺はレプリカで、能力が劣化してる。ローレライを解放するには、宝珠を預かることもできなかった俺じゃなくて、お前が必要なんだ。それならここで死ぬのは・・・いらない方の・・・レプリカの俺で充分だろ!」
「いい加減にしろ!いらないだと!?俺は・・・いらない奴のために全てを奪われたっていうのか!!馬鹿にするな!!」
アッシュがローレライの剣を掲げた時、ルークが飛びかかる。
「離せっ!」
「駄目だ!お前を死なせる訳にはいかない!」
ルークが剣を掴むと、うっすらと光だす。
「・・・これは?剣が反応している。宝珠がどこかに・・・?」
アッシュが油断した隙に、ルークが蹴り飛ばし、アッシュはジェイドに拘束される。
「離せっ!」
「私はルークの意見に賛成です!・・・残すなら、レプリカより被験者だ」
ルークが剣を掲げる。
「ルーク!止めて!!」
「・・・みんな。俺に命を下さい。俺も・・・俺も消えるからっ!!」
ティアがルークを止めようと駆け出す。
「来るなっ!」
そのティアを止めたのは・・・ガイだった。ルークは掲げた剣を床に突き刺す。
「・・・ガイ。・・・ありがとう・・・」
「・・・馬鹿野郎がっ・・・」
全てのレプリカの第七音素が集まるが・・・ルークが膝をついてしまう。
「だ、駄目か・・・」
「おかしい・・・集まりかけた第七音素が拡散していきます。このままでは障気は消えない!」
「・・・宝珠か!宝珠の拡散能力が邪魔してやがるんだ。くそ!あの馬鹿が宝珠を持っていることに気付いていなかっただけか!」
アッシュがジェイドの拘束を解いてルークに駆け寄る。
「どこまでも手のかかるレプリカだ!」
・・・アッシュも協力する。・・・だけど、それだけでいいのか?今ここで手札を余らせてどうする。・・・使えるなら・・・全て使ってしまえ!
「・・・あー、くそっ!性分は変えられねえな!!」
「っ!咲さん、何を!」
「少し無茶をしてくる!・・・悪いな、撫子。説教は短めにな」
「ま、待ってくださ・・・!」
撫子を黒羽が止める。
「アイツが無茶するのは何時ものこと・・・だろ?」
「んで失敗は少ないからな。・・・待ってやろうぜ」
二人に言われたら、撫子も頷くしかなかった。俺はローレライの剣を掴む。
「サキ!?どうして・・・!」
「苦戦してるみたいだからな。・・・俺の闇を利用して、障気を一辺に集める!だからお前達は第七音素の制御に集中してくれ!」
「サキ・・・アッシュ・・・」
俺はAモードを発動。思い切り闇を解放し、それに呼応させるかのように障気を集める。・・・範囲を絞れば、ルークとアッシュの負担は少なくなる。・・・いや、代わりに俺の負担が大きいか。
「・・・言っておくが、心中する気はない。少し超振動の力を貸してやるだけだ。消えるなら一人で消えろ」
「・・・ありがとう・・・アッシュ・・・サキ・・・」
ローレライの剣は宝珠とあれば鍵にもなる。・・・鍵使いは、俺の十八番だ。次の瞬間には視界が光に包まれ・・・その次には全てが終わっていた。
「くぅ・・・!?」
「う・・・っ!?」
「っ・・・!?」
「・・・約束だ。生き残ったレプリカ達に生きる場所を与えてくれ。我々の命と引き替えに・・・」
「私が!キムラスカ王女であるこのナタリアが、命をかけて約束しますわ!」
「俺もだ。レプリカ達を見殺しにはしない。姉上と同じあなたの命のために」
「わ・・・私だって・・・あなた達とイオン様は同じだもん・・・」
マリィさんは光に包まれ・・・消えた。
「俺・・・生きてるのか?どうして・・・」
ティアが笑顔になる。
「よかった・・・!私、もうあなたが消えてしまうと思ってた・・・」
その時、ルークの手に何かが現れた。
「こ、これは・・・?」
「・・・ローレライの宝珠だ」
「これが!?どうして?どこ探してもなかったんでしょ!?」
「こいつは宝珠を受け取っていたんだよ。ただ後生大事に、宝珠を形成する音素を自分の中に取り込んじまってたのさ。体が分解しかけるまでそのことに気づかなかったとは、とんだ間抜け野郎だぜ」
アッシュが去ろうとするが・・・
「お待ちになって!どこへ行きますの!?鍵は揃ったのですわ。一緒に・・・」
「・・・一緒にいたら、六神将に狙われる。ヴァンの居所を突き止めて、直前までは別行動だ」
「ルーク」
ジェイドがルークにベルケンドで検査を受けるよう進める。
「・・・なんとかなったか・・・!?」
一瞬、ほんの一瞬だが、俺の手が透けて見えた。体から何かが抜けるような・・・・・・ああ、そうか。
「(俺も・・・第七譜術士だったな・・・はは・・・)」
どうやら、受け持った負担は予想外にでかそうだ。
「(・・・ったく、この世界の最後まで持てよ。俺の体・・・)」
俺は障気の消えた青空を見上げて、そう思った・・・
後書き
リョウ
「・・・無茶しやがって」
サキ
「無茶すんのが主人公の役目なんだよ。つか文句はワンパターンしか思い付かない作者にいえ」
リョウ
「あのなぁ・・・ま、いいか。それじゃ、次回もよろしく!」
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