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戦国†恋姫~黒衣の人間宿神~

作者:黒鐡
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七章 幕間劇
  美しい風景

ん、もう朝か。小鳥の声が聞こえてきたのでな。布団はまだ暖かいから、そうだった。ここは小谷城で、恋人である俺と久遠は一緒に寝ているのであったな。初日から、俺は普通に布団に入ったが久遠は大騒ぎだったけど、次の日から慣れてきたのかそれとも譲らない市に諦めたか。本妻である奏もいい匂いだが、久遠もそのようだった。久遠もまだ寝てるのかな、だったら二度寝がいいと思ったが。

「・・・・一真」

「んー、起きてたか。久遠」

「まあな、起きるか?」

「俺はもう少しこのままいたいな」

と思いつつ、久遠に抱き着く。

「ふひゃあぁああぁぅうっ!?」

「何叫んでるんだよ。いいだろうこれぐらい」

「い、いきなりだったから少し驚いただけだ。それよりこれから遠乗りしたい。供をせい」

「いきなりだな、まあいいだろう。どうせ京より近いのだろう?今から越前に行くって言われても驚かないよ」

「言うではないか。ならば、越前までついて行くか?」

「俺達黒鮫隊が全力で鬼退治する所を、後方で見てたらな。だけど今は出す必要はない」

まあ、俺達が全力でやったらすぐ終わっちゃうけど。その後もう少し抱き着いた後に着替えて厩に行った。俺の馬は空間にあるから厩に行った時に出した。で、厩に行くと市が、馬の支度をしているところだった。

「おはよう、市」

「おはよう、お兄ちゃん。お弁当は朝と昼の分をお姉ちゃんの分だけ用意させたけど、いいの?」

「ああ。こっちにはこちらが用意してあるから、大丈夫だ。それに食べる時は二人仲良く食べるさ」

「そう。それに私もこの準備が終えたら、まこっちゃんのお布団に戻るっていう使命があるからね」

俺と市は話していると、久遠と一緒の布団はどうだった?と聞かれたのでとサイコーだったと言っておいた。まあ、あとは情事でもすればもっと高ぶると思ったが、ここはそれをする機会がないと思う。いきなりの遠乗りでは、もう慣れたと言っておいた。早朝に堺や京に行くぞって言われてからはな。壬月や麦穂に黙って行ってしまったから、帰ったら帰ったで怒られそうだ。

「それより、ひよをすぐに美濃に戻して悪かったな」

「別に気にしなくていいよ。あそこでひよ達を先に帰すのは、正しい判断だったし」

「そうか。まあ朝倉の件が片付いたらまたここに来るかもしれないしな」

「だね。お姉ちゃんの場合、次もいきなりだと思うけど」

「そうだな。次は結菜も連れてきた方がいいな」

「あ、結菜お姉ちゃんも、もうしばらく会ってないや。だったらお兄ちゃん、いきなりでもいいから、次は結菜お姉ちゃんも連れてきてね!」

それにしても久遠遅いな。まあ、女性の場合は遅いけどね。着替えやらメイクとかで遅くなるけど、この時代はまだメイクってあったかな?

「お姉ちゃん、照れ屋だし甘えるの下手だから恥ずかしがっているけど、本当はお兄ちゃんの事好きだと思ってるよ」

「だよなー。じゃないと一緒に風呂や布団に一緒にというのは無理な話だし。それに甘えるのが下手なのは最初から見抜いてたからな」

「何が見抜いていたんだ?」

やっと来たか、久遠。支度は出来ているけど、俺の分はないと告げるとどうするんだ?と聞かれたが俺は大丈夫と言った。朝の携帯食であるカロリーメイトとかで、食べとけば大丈夫だし、昼はトレミーの厨房に頼んでる。のり弁をな。

「布団の件なのだが・・・・やはり二つ・・・・」

「だーめ。小谷城では、恋人であろうが夫婦であろうが一つの布団で寝るのが決まりです!それに今日だって一緒の布団で寝てたんでしょう?お兄ちゃんも嬉しかったって」

「ば・・・・ばばばっ!」

「あはは。真っ赤になってるー!」

「おのれ・・・・」

まあ小谷城は市にとっては、ホームで俺らはビジターだ。アウェー状態の久遠は不利な状況。それとそういう事を言うと弁当を変えるとか言ってたな。見たら鮒寿司だったけど、俺も嫌だな。久遠は眞琴と市が美濃に来たら布団を二組にするぞと言ってたが、市は眞琴の布団に入ればいいと言っていたからな。

「もういい。・・・・行くぞ、一真」

「ああ。じゃあ行ってくるよ。市」

「はーい!行ってらっしゃーい!」

小谷城を出発してから、そのまま北へ。まだ夜は明けてないとはいえ、月明かりもそれなりにはある。
が街灯もないこの時代にとっては、真っ暗に等しいのかもしれない。なので、ゼロの目は暗視ゴーグル並みだからこのような闇でも大丈夫。久遠のペースは速いがまあいい。何も聞かないでついて行った方が良さそうだ。そんな調子で馬を走らせると、やがて彼方から山の端に白い光が見えてきた。昇る朝日はキラキラと淡海の湖を弾いているが。衛星カメラの映像を見るとなるほどな、湖をぐるっと回っているのか。

「久遠、行き先はもしかして朝日を見る事か?」

「ああ、市から聞いた。では行くぞ一真。もう少しで岬の先端だ」

目的地が分かったので、更にペースを上げる久遠。こちらも合わせて久遠を追った。やがて辿り着いた岬の先端で。

「おお、綺麗だな」

「うむ・・・・」

昇る朝日と、彼方に見える今浜の平野。視線を少し南に振れば、広大な淡海の水平線も見える。彼方まで見渡せる岬からの淡海は、視界全てが青一色であった。まるで海のようだ。

「なるほど、これは絶景・・・・。市の目は相変わらず確かだな」

馬を繋いで、荷物の中から弁当を取り出した。

「小谷城も見えるか?」

「ああ。あの辺りが小谷のはずだ」

俺は双眼鏡を取り出してみたら、確かに小谷城が見えた。あそこから俺らは来たのかと。

「一真、それは何だ?」

「双眼鏡っと言ってな、遠くの物を見る物だ。見てみるか?」

と言って俺は双眼鏡を渡した。使い方を教えてから、久遠は双眼鏡で見たら凄いと言っていたな。

「これは弁当な」

「弁当の中身はなんだ?」

「普通のおにぎりだな」

まあ、俺はカロリーメイト食べれば問題はない。水筒も久遠の分だけだ、俺のは空間から500のペットボトルを出せばいいし。

「そうか・・・・。それにしても見事な景色だな」

「そうだな、海っていう事ではないけどな」

「ここまで大きな湖は、我も知らん。一真はここよりも大きな湖は見た事あるか?」

「まああるといえばあるな。ここよりも大きな湖はね」

「そうか。世の中はここよりも広い湖があるのだろうな」

「もしもだ、あったら行ってみたいか?」

「無論だ」

日本一ならここなんだけどね。琵琶湖は。俺が見た事あるのは、ほとんどは世界でだけど。

「近江の名前も、ここからとったんだっけ?」

「そうだ。淡海は近淡海とも呼ぶからな。そこからこの辺りを近江と呼ぶようになったと聞く」

「近つ・・・・。という事は遠つもあるの?」

「遠州にあるぞ。名前もそのまま、遠淡海という」

遠淡海・・・・浜名湖の事。とおつおうみ

そのままだな。近江もそのままだと思うけど。

「遠州・・・・」

「三河と駿河の間辺りだ。我もまだ見た事ないが、やはり大きな湖だと聞く」

ああ、やはり浜名湖か。

「まだ行く予定はないか」

「ないな。上洛を済ませて、今川や北条と事を構えるようになれば行く事になるかもしれんが」

俺はそうかと言ってしばらく無言になった。しばらく無言になるが、久遠は鮒寿司苦手なのかと聞いたら苦手なようだ。前に三河の葵と言う者と一緒に食べたらしいが、もう食べなかったようだ。まあ鮒寿司は苦手な人もいる、俺も苦手だけどな。

「一真、水」

と言われたので渡した。俺は自分の水筒を取り出して飲んだ。うん、美味しくて温かい。これはカフェオレだが、久々に飲んだな。

「一真のそれは水筒か?我のとは随分違う物だな」

「ああこれ?これは温かい飲み物でも、ずっと温かいまま飲める水筒だけど」

「ほう。そうなのか」

俺はカロリーメイトを食べながら、カフェオレを飲む。ん?あの光ってるのは何だろうと思って見たら漁師の舟だった。久遠も気になったので、双眼鏡を渡して見たら人の顔まで見えると喜んでいた。

「渡し船を襲う賊も出るらしいからな。最早、地の者にとっては海と変わらん」

「そんなのまでいるのかよ」

海賊ではなく、湖賊かな。

「湖にも、あの平野にも、民の生活はある」

俺はそうだなという。恐らく朝食の支度何だろうな。彼方に見える白い煙がいくつもの立ち上り始める。あの煙一つずつに人間のいや家族の営みがあるのだろう。

「久遠?」

そんな事を考えていると、肩に乗ってきたのはわずかな重み。

「どうやら、市と眞琴のいちゃつき振りに当てられたらしい。・・・・少し、こうさせてくれんか?」

「喜んで」

と俺は腕を久遠の肩に伸ばした。

「一真?」

「嫌かい?」

「いや、いい」

と言って更に近づいた久遠の身体。そしてこの美しい国を、鬼の手には渡せぬと言った久遠。この国で穏やかに暮らす人達を、不幸にさせてはいけない。例え鬼でもあってもだ。と俺らはもうしばらくこの美しい風景を見るのであった。 
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