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戦国†恋姫~黒衣の人間宿神~

作者:黒鐡
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六章 幕間劇
  京の街の印象×銃での乱戦

「ころちゃん、おかわりー」

「はいはい」

といつもの調子で、宿のご飯を美味しそうに食べるひよだけど。

「うーん・・・・。やっぱりころちゃんや一真様のご飯の方が美味しいかも」

「そう?」

「分かるなそれ。京の料理は味が薄いからか、俺やころのは味が濃いので、そっちの方に慣れてしまったのだろうな」

何かガッツリと来ないんだよな、京の料理。普段は濃いめの味噌汁とか飲んでるからな。

「それもそうですね。普段慣れている方を食べていれば分かりますし、この料理ももう少し濃ければ食欲も出ますけど」

「まあそうですけど。少なくとも干物も、魚の味を生かす味付けになっていますし・・・・私は嫌いではありませんよ」

「それはそれだ。慣れてくるまで時間の問題だろう」

それに毎日これだと、さすがの俺でも飽きるんだけどな。俺の出身は日本となっているが、たまには洋食を食べたいな。パスタやピザ・ドリアにグラタン。あと朝のコーヒーが飲みたいけど、俺の好きな微糖のコーヒー。あれがあると仕事が頑張れるが、今はお茶しかない。

「そうだ一真様。今日のご予定は?」

そういえば今日は何をしようかね?足利家の繋ぎを任されたが、今は特にする事はない。

「お、いたか。一真」

俺らがご飯を食べていると、久遠がふらりと戻ってきた。

「どうした?今日は一日二条館に詰めるんじゃなかったのか?」

「何やら二条は公家がどうこう言う集まりがあるそうでな。面倒に巻き込まれては敵わんし、帰ってきた」

なるほど。久遠はそういうの好みではないしな。どうせ顔合わせをしたら、格式だの家柄で攻めてきそうだし。特に今の久遠は長田三郎って事になってる。まああちらの人にとっては長田でも織田でもどっちでもいいと思っているだろう。一瞬一葉は?と聞こうとしたが、あの公方の事だ。ああいう面倒事は脱走でもしてるかと思うくらいだ。

「それで・・・・だな。一真は今日は出かけんのか?」

「用事はないが、たまには黒鮫隊の顔でも見ておこうかなと思ったが、今はよそう」

「そうか。今日は何か・・・・用があるか?」

「そうだな。お前ら三人は、町で買い物があったよな?」

「は、はい。何か買いたい物があったような気がするので・・・・」

「だそうだ。だから、俺は特に用はないが一緒に町を回るか?久遠」

「うむ。京の町を回りたいところだったのだ。という訳で行くぞ一真」

と、ころが何とか合せてくれたので、俺は飯を食ってから久遠と一緒に出た。俺達が出た後、三人の会話はきっちりと聞かせてもらった。

『ふう、まさか一真様からいきなり来るとは思いませんでした』

『たぶんだけど、一真様は久遠様が二人っきりになりたいという事を察知したんじゃないのかな』

『さすが一真様。私達も一真様と町を歩きたかったな』

『仕方がないよ。一真様は久遠様の恋人だし、・・・・でも私達もいつかなれるといいよね。沙紀さんもそう言ってたし』

と聞いていたが、無害なのでこれ以上聞くのは野暮だと思った俺は盗聴器を回収した。

「で、久遠。どこか行きたいところでもあるのか?」

「いやないが、名高い京の街を見て回りたいと思っただけだ。初日は散々だったからな」

「まあそうだろうな。だけど、この街は何というか龍興がいた頃の井之口を思い出す。久遠はあの時の井之口を知らないんだったな」

「一真や草の報告は受けていたがな。・・・・ではこの巷にも」

「そうだな。足利将軍への怨嗟の声で渦巻いている。龍興だったらいいけど、一葉にはこの声には聞かせたくないな」

まあ、龍興をこの目で見た後にすぐに討ち取ってしまったけどな。そのお蔭で、俺の知行もアップした訳だからなのか。少しずつだが貯金という俺のへそくりがある事は秘密だ。あと一葉にも一度も会っていなかったら、この街を見た時の将軍の印象も違ったであろう。

「我もだ」

斎藤家は滅びの道に向かっていたが、一葉は間違った事はしていない。少しずつだが、足利幕府を建て直そうとしている。久遠を見たら自分の人生と重ねたそうだ。あと斎藤家に会ったとしても、滅びの道は止まらなかっただろうな。斎藤飛騨が例えだ。

「市まで行けば、少しは賑やかになるんじゃない?」

「ならばそこまで足を伸ばすか」

ならば、市に行って少しでも情報を集めないといけないな。例え聞きたくない情報であっても聞いておくべきだと。そんな話をしてながら歩いていると、京の街を小走りに駆けていく女性がいたが。

「あれ?」

「あれは・・・・」

どうやら久遠も気付いたようだ。その女性も気付いたのかこっちに来た。

「おお、そなた達か」

「一葉、公家が二条に来てると聞いたが何してるんだ?」

「あんな白塗り共の相手などしていられるか。どうせ上からの物言いで嫌味を言いに来ただけなのだ」

あー、久遠が帰ってきた時点でまさかとは思ったけど、一葉も逃げ出してきたのか。まあ気持ちは分からん訳ではない。

「そんな事よりお主らはどうした。二人仲良く、京の荒ら屋見物にでも繰り出すのか?」

「荒ら屋ねぇ」

「この町並みを見たであろう?寺領から上がりを巻き上げておる寺社連中ならともかく、他はこの有様よ」

「うむ。これ程までとは思わなかった」

「余の庭としては、腐っても京と言いたい所ではあるが、さすがにこれでは・・・・」

ん?気配を感じるな。複数がこちらに近づいてきている。もしかしてまたやったのか?一葉は。

「ア、アニキ!いやしたぜ!」

「このアマァ!」

「で、一葉。今度は何したの?」

「おお、忘れておった。そういえば、こやつ等がいたのであったな」

また面倒事だけどまあいい・・・・。これも軍人のちょっとしたお掃除=お仕事だな。一応追われていた理由も聞いておこう。

「逃げてたならどうしてここに?」

「逃げてなどおらぬ。これも策よ」

「そうだな。こやつらに絡んだのはお主からだろう」

「・・・・別に余とて腕はあるが、お主がいたところだったのでな。策を変更したまでだ」

ちなみに俺の事は、様付ではなくお主か呼び捨てで呼んでもらっている。この前二条館に行った時には、様付で呼ぼうとしてたので俺が頼んだ。いくら神であったとしても今は人間の姿だからな。

「テメェら!俺らを無視してるんじゃねえよ!バカにしてんのか!」

「ふむ、そうじゃな。・・・・お、お助け下さい。旦那様!」

「な・・・・っ!?」

あー、これはあれだな。芝居を打って俺にやれとそう言いたいのかな。まあ俺の胸元には一葉の柔らかい身体がしがみ付いてきてるけど。

「わたくし、あそこの悪漢共に追いかけられて・・・・必死に逃げてきたのですが、恐くて・・・・うぅ・・・・」

俺は確認のために、一葉の顔を見たら泣いて見せかけて、こっちを見たと思ったらドヤ顔だった。これはやらないといけないなーと思った俺であった。

「お助け下さいませ!どうか、どうか・・・・!」

「久遠もやるなら、さっさと来い」

と小さな声でこいつらに聞こえないように言ったら。

「・・・・ふむ。そういう事か。ならば・・・・旦那様、わたくしも恐ろしゅうございます!」

小さい声で言った後に久遠も抱き着いてきた。まあ、男としては嬉しいけどね。

「京の街は恐ろしいと伺っておりましたが、あのような下賤な輩が抜き身を提げてうろついているなど・・・・よよよ・・・・」

泣き真似をしているが、俺には見破っているのでな。だがこういうのも悪くないけど、逆に燃えてくるぜ。あと久遠は楽しんでいるが、超可愛いのは俺の見間違いかな?

「ふむ。もう少し派手に取り乱した方が良いか?」

「そうじゃな。このような物は勢いが大切でな。見ておれ」

さて、次はどういう展開がくるのだろうか。

「あぁ、・・・・お助けくださいまし、旦那様・・・・!旦那様の腕前であれば、あの輩、十も数えぬ間に切り捨てられるとお聞きしました・・・・!」

事実だな、最も剣より銃の方が得意なんだけど。

「わたくしもそのようにお伺いしております・・・・。か弱いわたくし共に救いの手を・・・・お頼み申します!」

「ンだとぅ!ふざけてるのか!」

「構わねえ、やっちまえ!」

とか言ってるチンピラAとチンピラB。一応追っている理由を聞くが・・・・。

「なあなあ、そこの兄さんよ。一応聞くがどうして追っているんだ?」

「そりゃ決まってんだろう!何かそっちの姉ちゃんから絡んで来て、そのくせとっとと逃げ出しやがったからだな・・・・」

「一葉?」

「あぁ・・・・わたくしの言い分と、あのような下賤な者達の悪口雑言・・・・旦那様はわたくしの言を信じてくださらないのですか・・・・およよ・・・・」

「・・・・一真」

「分かってるよ。俺の背中にいろよ?二人共」

と俺から離れた久遠と一葉は、俺の背中に行き空間からショットガンを出した。

「もうグダグダ言ってんじゃねえぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」

「これでも喰らいな!」

ショットガンを向け、まさに来ようとしたゴロツキにショットガンを撃った。と言っても殺傷能力はない奴だ。ゴム弾奴だが結構痛いんだよねこれ。

「ぐえぇ!」

撃たれた奴は吹っ飛んだ。おお、よく吹っ飛ぶな。ちなみに今使っているショットガンは、あの有名な映画で使われたショットガン。

「・・・・ほう」

「な・・・・あ、アニキ・・・・っ!」

「次はお前が喰らうか?最も今のは非殺傷の弾だから生きてるけど、次は本物の弾でも撃とうかね」

で、倒れてはいるが何とか立ち上がったチンピラが言ったアニキと言われた者。

「さてどうする?もう一度喰らいたいのかな?これ以上、女性らに酷い事をするなら次で決める!」

と言いながら全身から覇気と殺気を出した。気絶しない程度だったけど。

「お・・・・覚えてやがれ!!!!」

「くそーっ!」

「あ、アニキーっ!」

「・・・・何じゃ、もう終わりか。つまらん」

と言ったが、まああれが芝居だと分かっていての攻撃だからな。

「それよりその鉄砲は凄いのぅ、一撃で大男を吹っ飛ばした」

「まあな、これは俺達の部隊でも使われてるモノだ。それに弾は非殺傷能力のだから、死にゃあしないけどアバラは折れてると思う」

空間にショットガンをしまったが、先程のは役得だったであろう?と聞かれたらまあなと言った。

「あんな相手すぐに倒せるんじゃないのか?」

「お主の腕を見たくなったのでの。お主直属の部隊は主に鉄砲を使うと聞く、なので見たかったのだ」

何ていうか、はた傍迷惑な話だな。

「じゃが、京の悪党も質が落ちたものよ・・・・。昔は、こちらから一睨みしてやればその場で刀を抜いたものが、今はこの体たらくとはな」

無茶苦茶だな。まああれくらいはどうとなれるが、テロリストだったらもっとピリピリしてたけどね。それにあれぐらいは俺がいた世界でもいたが、さすがに刃物は使わなかった。銃刀法違反で逮捕されるからだ。

「一真の銃の扱い、もう少し見ておきたかったが・・・・あれが相手では仕方がない。初対面の時くらいにならないと話にならんからの、またの機会にしよう」

「そりゃどうも。出来ればもう少し穏便にいきたいけどな」

「さて。それでは、礼の一つもしてやらねばならぬな。荒ら屋巡りの前に、少々余に付き合うがよい」

一葉に案内されたのは茶屋だった。

「茶と団子をくれ。三人分だ」

さっき礼をすると言ったのはこのためか、まあいいけどね。あれぐらいのゴロツキが何人来ようとも。

「はい。お茶と団子ねー」

「すまんな。・・・・ところで女将」

「なんだい?」

「我は初めて京に来たのだが、今の京はというのはどこもこのような有様か?」

「そうさねぇ・・・・。あたしも京なら良い仕事があると思って来たんだけどさ、もう当分こんな感じ何だってさ」

「そうか・・・・。京を治めているのは天下の足利将軍と聞くが、それでも上手くいかんのか・・・・」

一応一葉のところに向くと、特に気にした様子ではなかった。まあこれも、情報収集だと思ってやっているんだろうと思っての事だろうな。たぶん。

「どうなんだろうねぇ。将軍様が京にお戻りになってからしばらく経つけど、その前からずっとこんなだって聞くしねぇ。いてもいなくても関係ないんじゃないかね。最近は堺の方が賑やかだって言うし、あたしもこんな店畳んで、そっちに越した方が楽しくやれるかねぇ?」

「それは困るな。なかなかに美味い団子だ、これが京から無くなるのは惜しい」

「おや、そう言ってもらえると嬉しいね。じゃ、ゆっくりしていっておくれ」

と店の女将が奥に行ったのを確かめると俺はお茶を飲む。

「まあ、これが将軍の評判って奴かな」

「ほほぅ・・・・。で、余の評判はどうであった?」

「この茶屋の情報だけでは足りないので判断ができない。保留と言う事だが、久遠はどう思った?」

「暗君に決まっておろう。宮中の魔を一掃する事なく、街を出歩いては悪漢に喧嘩を売り、こうして呑気に団子を食らっておるなど。それに二条は、その日の食事代や油代にも事欠く有様だと聞いているが、こやつは団子をおごりだと言う。その程度の銭勘定も出来ずして、誰を暗君と言うべきか」

「・・・・誰にモノを言うておるか、分かっておるのであろうな?長田久遠三郎」

「言えと言ったくせに腹を立てるか。征夷大将軍も底が知れるぞ」

ふむ。ピリピリしてきたが、この感じが落ち着くと言うのは俺だけであろうか?しばらく黙っていたが、笑い出した一葉。

「まあ、実際その通りだ。我が二条館は知っての通り、その日の油代にも事欠く有様。金を得ようにも領も知れておる故、金回りの良い尾張のような思い切った策も取れぬ。これでもいくらかは魔を払い、二条館に戻る事も出来はしたが・・・・まだまだよ」

「そういえば、さっき女将さんが言っていたが将軍が戻ってきたと言っていたが?」

「二条館はしばらく三好や松永のモノだった事があるのだ」

「じゃあ、一葉が自力で取り返したという事か」

「この暗君が頭を下げるだけで取り戻せる程度だったがな。・・・・それほど幕府は力を失っていたという証だ」

今さらっと言ったが、それを成し遂げたってのは暗君どころか優秀だって事なのでは?

「人手もない故、こうして街の治安を少しでも良くしようと折りを見ては出歩いてもおるのだが、さすがに余一人ではどうにもならん。それに金のない将軍家だ。余の小遣いくらいは自力で稼がねばな」

ああ、さっきのゴロツキから巻き上げたのか。初対面の時だってそうだったもんな。

「良いな、その目は。将軍本人を前に普通に会話をする輩はそうおらん。気に入ったぞ、一真、久遠」

「そうだな。先程の女将さんも、一葉の目の届かない所では何とでも言うが、一葉が足利将軍と知れば、さすがに何も言わなかっただろうな。だから俺達は一葉の正体を知っていてもこの態度だ」

「だが、軍の長が常に前線に立ちに来るのは問題だぞ。幽なども頭を抱えていよう」

「当主が先陣に立たずして、何が当主か。我らが率先して道を切り開いてこそ、下々の者も余に命を捧げてくれるというものだ。違うか?長田の」

「違うな。長たる者は後ろで構え、何があっても的確な指示を下せるようにすべきだ。頭を失った後の身体の脆さを知らぬ公方とは言わせんぞ」

「ふん。頭など失った所で、すぐに次の頭が生えるだけよ。お主が思っているほど、身体というのは脆くないぞ、長田の」

何か黙っちゃった二人。久遠の言う事も分かるけど、一葉の言う通り、俺も常に前線に出ている。それに通信機で連絡取りあってるから、何も問題ない。

「それ故に余は剣の腕を磨き、武の技を鍛えるのだ。・・・・それ、一真もなかなか良い身体をしておるではないか」

「む・・・・」

「まあこれでも、部隊の長だからな。自分で守れなくてどうするよ」

「確かか、天の国とやらは戦のない平和な地であったと聞く。それこそ武の技など鍛える必要はないように思うが違うのか?」

「確かに俺がいた世界は戦争がない平和な世界だ。だけど、犯罪や小規模な戦争が起こる時がある。だからなのさ、武も鍛えるが銃の扱いもな」

「常在戦場の心構えか。尚の事良い」

久遠が黙ってしまったが、ヤキモチ妬いているな。何でもないとは言ってるが・・・・。

「今は久遠のために動いているから、一々ヤキモチを妬くな。それでも俺の恋人か?」

「一真」

「一真の言う通りだ。恋人ならば、後ろで構え、何があっても的確な指示を出来るようにするべきではないのか?」

「や・・・・妬いてなどおらぬ」

「とは言え、どうせお主の事だ。一真への手綱と轡は閨の中でしっかり施してあるのであろう?」

「な・・・・ななななな、何をっ!?」

「一葉、まだ久遠とは閨を共にしてないぞ」

「か、一真まで何を言う!」

俺は本当の事を言ったまでだ。それに今はまだだけど、いつかはやるだろうな。一葉や双葉も、いつ顔も知らない相手に、嫁がされるか分からない時代だそうだ。俺の事を良き男と言っていて、久遠が何を気に喰わないのか知らんが勿体ない話だと。

「どうだ一真。閨の中は久遠は愛らしいか?」

「まあな、あの顔を見るとなかなか良い物だったよ。だがこれは俺と久遠だけの秘密だ」

「ほほぅ・・・・」

「ちょ・・・・一真・・・・!貴様、いつ我の寝顔を見た!事と次第によっては貴様とて・・・・」

「久遠・・・・」

「・・・・あ」

あ、じゃねえよ。せっかくフォロー入れてやったのに台無しじゃねえか。

「やれやれ、どうやら本当らしいの一真。こやつが相手をしてくれんで持て余しておるなら、余が侍ってやっても構わんぞ?」

「きききき、貴様っ!?」

「せっかくの申し出だけど今は断っておくよ。俺には本妻がいるのでな」

「本妻と言うのは久遠か?」

「違うよ。俺の妻は別にいるから、久遠は愛妾、だから恋人。まあ行為自体は許してもらってるから構わないけどな」

俺の本妻は奏だけだ。形式上は妻と言う者が数十人いるもんなー。

「さてと。そろそろ行くぞ久遠」

「一葉。団子、馳走になった」

「気にするな。それはただの礼だ。二人とゆっくり話ができて、余も楽しかったぞ」

と俺は一葉に、礼を言って久遠の手を握り行こうとしたのだが、ここでトラブル発生。空気読まないゴロツキの馬鹿者らが仲間を連れて来た。

「いやしたぜ!お頭!」

「やっと見つけたぜ!テメェら!」

「・・・・・・・・・・・誰じゃ?」

「テメェェェェェェェェッ!」

一団の先頭にいるのは、先程いた奴らだった。そして今回は応援なのか、さっきより何倍ものメンツを連れてきている。

「一葉、さっき俺がブチのめした奴らだよ」

「・・・・・・ああ。一真、よくもまあ覚えておるの」

「一葉にとってはどうでもいいとは思うけどな」

「あのような連中、いちいち覚えてなどおるものか」

「ほらお頭!こんな事を言うんですぜこのアマ!」

「一葉、一真に頼らなくて良いのか?」

「おお、そうであった。・・・・お助け下さい、旦那様!」

「わたくしも恐ろしゅうございます!」

またこの流れかよ。しかも今度はこいつらの目の前で打ち合わせしてるし。

「そうじゃな。こうすれば、久遠も公然と一真に抱きつけるの」

「うるさい黙れ」

「あーっ!そいつ、思い出した!」

「お頭!あのアマ、こないだ俺らをボコボコにして有り金全部巻き上げてった奴ですぜ!何か見た事あると思ったら!」

「あの長い髪、間違いねえ!」

「俺達もやられた!博打で勝った金、全部巻き上げてった奴だ!」

「俺も俺も!三月振りの大勝ちだったのに!」

おいおい。こいつらの金巻き上げて小遣いするのか普通?しかもこいつらから奪って成り立つ幕府とはな。あ、あとコイツらがコントしている間に隊員に連絡して戦闘態勢に入れと指示を出した。武器は主にアサルトライフルで、ちゃんと非殺傷能力ある奴で待機させておる。人間相手だから主に男性隊員。

「それにいちいち顔など覚えておらんて。・・・・揃いも揃って同じような顔をしおって」

「ンだとぅ」

「誰が同じ顔だって!」

「まあ、顔が知られておるなら仕方がない。余も・・・・」

臨戦態勢をしようとするが、俺は待てと言って下がらせた。

「・・・・一真?」

「まあ待て、・・・・ここは俺達の出番だ」

「俺達?」

疑問に思っている一葉だったが、今はいい。俺の隣には、結界を張っているが出撃準備完了した隊員達を空間からこっちに来ている。見えないようにしているだけで、結界が張っているとしても発砲したら相手に当たるようにしてる。人の気配と隊員自身を透明にしているだけだ。

「テメェ、この人数を相手に何とかなるつもりなのか?」

「そうだと言ったら?また鉄砲の餌食になりたい?」

「ぐ・・・・・」

「た、確かにあの鉄砲の餌食にはなりたくない」

今は銃持ってないけど。俺が持っている銃を畏怖してくれると助かるんだがな。

「ええい、ビビんじゃねぇよ!たった一人でどんだけ強くても、所詮は一人だ!全員でフクロにしちまえばいいんだよ!」

と一葉は再び前に出ようとするが、再度止めた。

「前に出るな!二人共、蜂の巣になりたいか?」

「やっちまえ!」

「来るのか。野郎共!殺してはダメだ、全員構え!撃て!」

発砲許可出してから、こっちにくるゴロツキらの集団に向かって弾が当たる。いきなりの事で、慌ててるゴロツキら。そして結界を解除させて隊員達を俺の前に出た。

「目標はあのゴロツキ共だ!全員、あいつらに地獄を見せろ!ファイアー!!!」

『おおおおおおおおおおおおお!俺達の日頃の鬱憤を晴らせてやるぜーーーーー!!!』

そう言って向かって行き、アサルトライフルで撃つ者やある者は、先程俺が使ったショットガンを使っていた。数分と経たない内となり全滅に近かった。撃ち方やめいと言った俺は刀を持ち、最後にいたゴロツキの頭領に向けて一閃。峰打ちだけど。俺は、隊員達にご苦労さんと言ってから敬礼。そして隊員達はトレミーに戻した。ふう、いい仕事したぜ。鉄砲の音が聞こえたのか、大騒ぎを聞きつけた検非違使が来た時には、既にゴロツキ共は地に伏せていた。

「うぅ・・・・やるんじゃなかった・・・・」

「キリキリ歩け」

「一真、俺達とはこの事だったのだな」

「まあな。しかし、一葉には説教があるだろうな。なあ、幽」

「一真様に久遠殿。公方様がご迷惑をお掛け申した。それがしも度々注意してはおるのですが、まあ見ての通り聞くようなお方ではありませんので。それにしても一真様直属の鉄砲集団とやらは見たかったですな」

「まあな、あれでも殺してはいないから。それにその内また見れるさ」

「いい戦いを見せてもらった。大義」

「これからお二人は何処へ?」

「うむ。市でも見て回ろうと思っておる」

「左様ですか。では少しでも何かお買い物などして頂いて、京にお金を落としていって下さいませ」

「はあ、棟梁も棟梁だが仕える方も仕える方だなぁ」

「思った事を口に出てるぞ一真」

おっと口に出ていたか。まあ黒鮫野郎隊の鬱憤は晴れたと思うが、あとはそっちで晴らしてくれと思った。今度は鬼戦だといいのだがな、実弾有りで。その方が楽しめると思う。

「まだ二条館には白塗り共がおろう。余はあれの嫌味を聞く気などないぞ」

「公家の方々はもうお帰りになりました。それに、何とかは馬に蹴られて・・・・と申しますぞ?」

「主に蹴りを食らわせるような馬は、馬刺しにでもしてしまえばいいのだ」

「まったくもぅ・・・・。とにかく、帰りますよ」

「ふむ・・・・。ならば仕方がない」

と言って俺と久遠は市に向かった。一葉も戦いたかったようで、ご不満だったらしい。あまり人間とは戦いたくないんだよな、俺達は対鬼戦と対ドウター戦のためだからな。 
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