戦国†恋姫~黒衣の人間宿神~
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六章
繋がり×去った後の会話
「それで、京に来た久遠は将軍と繋がりを持った。これからどうする?この先の事を久遠の口から言ってくれ」
「まず一つ、鬼の件に関しては、しばし置くつもりだ」
エーリカは反論したが、久遠は最後まで聞けと言った。
「エーリカより聞いた話だけでは、状況がうまく掴めん。まずはその情報収集に専念しようと思う。・・・・一葉、手を貸せ」
「良いだろう。力無き公方とはいえ、余はまだ公方であるのだ。日の本の民の事を考えれば、手を貸すしかあるまいよ」
「・・・・ふっ、理屈の多い事よ」
「余は征夷大将軍であるからな。・・・・勝手気ままのできん立場である以上、理屈も多くなる」
「そうだな。・・・・鬼の被害は京以外の畿内において激しく、周辺諸国ではまだ散見される程度だが、我はいずれ広がっていくと睨んでいる」
確かにそうだが、尾張や美濃でも増えている。全国的に増えてくると思うが、トレミーと衛星からの情報では、まだ広がっていない様子だ。ひよは夜出歩かないようにしようと言うが、鬼が出たら退治しなければならない。なので、武術の訓練はころに任せた。俺だと教えようがない、それに俺の剣はエクスカリバーだ。
「で、久遠。織田家はどうするんだ?」
「本国に戻った後、一葉と合流するために動く。・・・・今すぐは無理だが、出来るだけ早くな」
「三好・松永党の脅威に晒されている公方を救出する。そんな大義名分を掲げての上洛ですか。なるほど・・・・。久遠様は公方様を錦旗とし、日の本を一致団結させるしか、鬼には対抗できないとお考えなのですね」
「うむ。広がっていく鬼を駆逐するためには、勢いのある諸勢力が力を合わせるしかなかろう」
「勢力というものを持たん余であるからこそ、勢力に担がれるには最適であるという事か。やれやれ・・・・何とも皮肉な事だ」
「古来よりこの国は、神輿を担ぎ、踊り狂いながら歴史を動かしてきた。・・・・神輿になれるだけの力があると思っておけば良い。少なくとも我は神輿になれん。一真もいずれ乗せる事になるだろうが、今ではないと思う。今正体をばらせば面倒な事が起こるのでな。だから今は一葉の力が必要なのだ」
「分かった。今は一真様の正体は余達のみ心の中に封じておこう。舁夫は任せるぞ」
舁夫・・・・御神輿を担ぐ人のこと
「うむ。・・・・任せておけ」
「神の姿は最後の切り札としておくから、今は足利の将軍を担ぐとしよう。それからどうする?」
「諸勢力を糾合し、この日の本より鬼を駆逐するために、我は、我の考える天下布武を行いたい」
「うむ。そうだな」
所詮、言葉で説明をしようとしても、人間は簡単には信じようとはしない。この日の本で一番とされている将軍の言葉なら聞いてくれるかもしれないし、最悪、現代の技術で説明をしないといけない。映像を見せたとしても、捏造だと思われるので今は見せない。だがいずれ使う時がくるはずなので、こうして鬼の情報があったらゼロかフェルトが纏めてくれる。先程エーリカが言った事は、全て録音と共に鬼の情報としてデータに打ち込んでくれた。そして俺達が、エーリカと出会い、人の脅威となる存在である鬼について知った。理解させるには現状を把握してる人間なら信じさせる事は可能のはずだ。
「家中を調整してすぐに動く。・・・・金柑よ」
「はいっ!」
「我と共に来い。家中の者共に貴様の知っている事を全て説明せい」
「・・・・私の言葉を信用してくれるのですか?」
「鬼の件がなければ妄想と笑ってもいようが、貴様の言葉は、我らが見知っている状況にも合致している。真実を語っていると受け止める方が、理に適っている・・・・我はそう判断した。判断をして・・・・この日の本を不明の鬼などに好きにさせんと心を決めた。だが・・・・貴様がザビエルという坊主の暗殺に成功したとて、日の本に鬼が蔓延していれば、何も知らぬ民達に多大な被害が出よう。だからこそザビエルの処理と鬼の処理は同時に行わねばならん。・・・・だから金柑よ。我に力を貸せ」
「・・・・この命、そして剣を織田三郎久遠様に捧げましょう」
久遠が頷くと、再び一葉と向き合う。
「二条との繋ぎは、一真とその隊の者に任せる事になるだろう。見知っておけ。それと黒鮫隊については、一真の独断で出撃してもよいからな。あれは元々一真の隊だ」
「ふむ。よろしく頼むぞ一真様」
「分かった。主に一真隊で動くが、鬼が出たり敵だと判断した者は俺直属部隊が殲滅させよう。よろしくな、将軍さんよ」
「一葉。我らは数日、町宿に滞在した後、京を出る」
「うむ。・・・・貴様との出会いは僥倖であったぞ」
「ああ。我もそう思う」
強く頷き返した久遠が、ゆっくりと立ち上がる。そして、久遠の声に反応してここを去った。で、今部屋にいるのは一葉と双葉と幽だけ。一応盗聴器を飛ばしてある、あとで回収するが、さて俺達が去った後は何を話すのかな?
『なかなか面白い奴らであったな。それにこの世に生きている内に神仏の類が見れた』
『そうですね・・・・ふふっ、お姉様、何だか楽しそう。確かにあの御姿を見れば誰でも神様だと思えるのではないでしょうか』
『久しぶりに獅子を見た気がするのだ。・・・・久遠は余と同じである』
『織田殿もなかなか激しい幼少期をお送りになられたと、聞き及んでおりますからな』
『うむ。権謀術数、騙し裏切り。・・・・まさに下克上の名の通り、激しく、辛い人生であったろう』
『なるほど。・・・・ご自分を重ね合わせたのですな』
『それもある。が・・・・何よりも、余は久遠の目に惹かれたのだ。強く、己の為すべき事を為そうとする、信念を持つあの目が余の心に火を点けた。・・・・三好や松永にいいようにやられ、余はいつの間にか諦めてしまっていた。だが久遠の瞳に魅せられ、余はもう一度、戦いたいと思った。現実に負けたくないと・・・・そう思えたのだよ』
『姉様は、久遠さんに負けたくないのですね』
『ふ、そうだな。・・・・同じような人生を歩みながらも、奴はまだ戦おうとしている。・・・・それが悔しかったのかもしれん』
『・・・・良い事ではありませんか。覇気のない将軍など、置物にもなれませんからな。元気があって結構結構』
『ふははっ!確かにそうだ!』
『それで公方様。今後は織田を頼りに?』
『頼るのは好かん。・・・・共闘するのだ』
『なるほど。物は言い様ですなぁ』
『言っておけ。・・・・一真様との繋ぎは余自らが行う。幽は補佐につけ』
『ほぉ。田楽狭間の天人様いや創造神様とは、惚れたのですかな?』
『そうだと信じたいが、あの金色の御姿は誰でも惚れるわ』
『そうですね。冷静沈着な御方ですけど、裏の顔は誰でも惚れてしまうくらいの御姿でした』
『さすがは余の妹だ』
『それに猛々しさと同じく、心中には春うららかな陽気のような、深い深い優しさを感じました』
『余もそう思う。それに好ましい殿方だと思った』
『やれやれ、お二方も物好きな』
『ふむ・・・・幽は反対か』
『別に絶対反対・・・・という訳ではありませぬがね。そもそも一真様は、久遠様の愛妾と聞いております。本妻がいる以上、正室と側室にはなれんでしょう。実ったとしても久遠様と同じように愛妾止まりかと』
『面白いではないか。今の余はお飾りの公方である。その公方が愛妾となって男の側を飾るのも、浮世の一興』
『それ程までに気に行っておいでなのですか』
『うむ。もっとあの御方を知りたいと思う』
『はぁ~・・・・だから会わせたくなかったのですが・・・・』
『ん?何ぞ言ったか?』
『いーえ。物好きの主を持つと苦労する、と、少々、愚痴をこぼしておったまでの事』
『ふふっ、我が儘な姉様でごめんね、幽。だけど姉様をよろしく頼みますよ』
『それがし何ぞがよろしくしなくても、一葉様はお一人で立派に生きていけると思うのですが。はぁ・・・・』
俺は左耳からの通信機でキッチリと会話を聞いていた。その後、あの客室を三人が出てから、空間に手を突っ込み盗聴器を回収した。あとで証拠となる会話だったのでデータとして残した。左耳にある通信機をポケットに入れてから町宿に向かったのであった。
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