FAIRY TAIL 真魂の鼠
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第二十四話 自分自身
前書き
07でございます☆
今回は赤面の吸血鬼を無事討伐する事が出来た最強チーム。マグノリアに帰ろうとするが、何だかシンの様子が可笑しくて・・・?そして、シンに新たな発展が・・・!?
途中から目線が変わります。最初はルーシィ目線です。
それでは、第二十四話・・・どうぞっ☆
闇ギルド、赤面の吸血鬼を討伐する事に成功した私達最強チーム。体は傷だらけだけど、皆笑っていた。
ナノハナの街へ行って、アレクさんに依頼達成の報告をして報酬の40万Jを受け取った。これで今月の家賃が払える~♪
ハ「ルーシィ、目が¥になってるよ。」
ル「うるさいわねぇ。嬉しいんだから仕方ないじゃない。」
グ「嬉しいのと目が¥になるのは関係ねぇと思うけどな・・・」
いちいちそこは触れなくて良いのよ。アレクさんは、私達に報酬を渡してから評議院に連絡をして、赤面の吸血鬼の魔道士は一人残らず連行されたの。
エ「まず、赤面の吸血鬼は間違いなく二度目の解散命令を出されるだろうな。」
そりゃそうよね。数え切れないくらいの人の命を殺めたんだから。納得のいく罰を受けてもらわなくっちゃ、私達も気が済まないもの。
ナノハナの街の人達は、連行される赤面の吸血鬼の魔道士達の後ろ姿を見届けながら大粒の嬉し涙を流していた。三年間も苦しめられたんだもの。解放された気持ちがどれだけ嬉しいか、私達妖精の尻尾の魔道士には分かる。
ナ「さぁ~て、依頼も達成したし、報酬も貰ったし、さっさとギルドに帰ろうぜ。」
ハ「あい!おいらお腹ペコペコだよぉ~。」
シャ「って言いながら魚持ってるじゃない。」
常に持ち歩いているなら食べなさいよ。
ウェ「日も沈んできましたしね。」
上を見上げると、いつの間にか空はオレンジ色に染まっていた。まるで『マヤ』の髪と瞳の色ね。
エ「よしっ!ギルドに帰るぞ。」
ナ「おう!」
ハ「あいさー!」
ナノハナの街の駅に向かって、大量のスーツケースを積んだ荷車をゴロゴロと引きながら歩くエルザを先頭に、頭の後ろで腕を組みながら歩くナツと、魚を抱えたハッピーが続き、シャルルを抱いたウェンディ、ズボンのポケットに手を突っ込んでいるグレイ、鼻歌を歌いながら歩く私、その後ろをシンが・・・って、
ル「シン?」
後ろに人の気配を感じないから振り向くと、シンは私達に背を向けて評議院に連行されていく赤面の吸血鬼の魔道士の事を静かに見つめていた。
ル「シン、どうしたのよ?もう皆駅に行っちゃったわよ。」
私はくるっと方向転換してシンに駆け寄って声を掛ける。が、シンは私に見向きもせずにただ静かに連行される赤面の吸血鬼の魔道士から目を逸らさなかった。
ル「ねぇ、ちょっとシン、聞いてるの?てか、聞こえてる?」
シ「えっ?あ、何?」
シンはようやく気づいたのか、やっと私の方を振り返った。でも、その仕草が私にはわざとらしく見えて、私は少し表情を曇らせながら、
ル「だーかーらー!「どうしたの?」ってさっきから聞いてるんでしょうがーっ!」
シ「そ、そんな大声で言わなくても聞こえるっての。鼓膜破れるじゃねぇか。」
シンは両耳の穴を人差し指で塞ぎながら顔を顰める。さっきまで聞こえてなかったくせに。
ル「で、どうしたのよ?」
ムスッとした表情で尋ねると、
シ「いや・・大した事ねぇけど・・・」
そこまで言うと、シンはもう一度視線を連行されていく赤面の吸血鬼の魔道士に向ける。
シ「俺が戦った赤面の吸血鬼のS級魔道士の姿が見えねぇんだ。」
ル「えっ?」
・・・最初にシンが言ったとおり、大した事無かった。なぁ~んだ、聞いて損しちゃった。
ル「あんたが見逃しただけなんじゃないの?」
シ「それはぜってぇ~に有り得ねぇ。だって、俺赤面の吸血鬼の魔道士が連行されるとこ、最初っから全部見てたんだぜ。」
そういえば、シンはずっと赤面の吸血鬼が連行されていくのを見てた気が・・・
ル「じゃあ、まだ出て来てないんじゃない?きっと最後の方に出て来るわよ。」
私が言い終わったのと同時に、長い長い赤面の吸血鬼の魔道士達の列の終わりが来た。一番後ろにいるのはナツが倒した赤面の吸血鬼のギルドマスター、ペギルだった。
シ「・・・どこにもいねぇ。ユウヤが、消えた・・・・」
シンが小さく呟いた。
シ「全身黒ずくめだったからすぐ見つかると思ったんだけどなぁ~。」
シンは悔しそうに髪の毛がぐしゃぐしゃになるまで頭を掻く。
ル「ねぇ、何でその黒ずくめの人を捜してるの?」
シ「俺が戦った赤面の吸血鬼のS級魔道士、俺と同じ『十二支』の血を持つ人間だったんだよ。」
ル「えぇっ!?」
私は目を見開く。『十二支』の血を持つ人間って・・・闇ギルドにも存在するんだ・・・・
シ「俺も最初は驚いた。それに、今回戦った奴は意味の分かんねぇ事を言ってたんだ。」
ル「意味の分からない事?」
私がもう一度聞き返すと、シンはゆっくりと頷いて、
シ「「赤面の吸血鬼が、俺の最後。」って言ったんだ。」
ル「?」
俺の最後?赤面の吸血鬼が?さっぱり意味が分からない。
シ「俺は、まだ自分が持っている『能力』の事、自分が挑む『お釈迦様』の『任務』の事、他の『十二支』の血を持つ十代目の事・・・何も、知らねぇんだ。だから、少しでも情報になりそうな事があったら探りたいんだけど、その情報は、必ず俺から遠ざかっていくんだ・・・・・」
シンは顔を顰め、固く拳を握り締めると、
シ「俺は、永遠に謎に満ちた空間を彷徨い続けているんだ・・・」
悔しそうに、でも、どこか悲しそうな表情で小さく呟いた。
ル「シン・・・」
今の私には、シンの力にはなれない。私も、シンの事をまだよく知らない。それは私だけじゃない。ナツやハッピー、グレイやエルザに、ウェンディやシャルル。妖精の尻尾の皆や、マグノリアの人達も、シンの事をまだよく知らない。
同じなんだ・・・シンも、私も。皆も・・・・・
ナ「おーいルーシィ!シーン!」
ウェ「列車発車しちゃいますよぉ~!」
グ「急がねぇと乗り遅れるぞ~!」
ハ「早く早く~!」
駅の方からナツ達の声が聞こえた。ヤバイ!列車が発車しちゃう!
ル「シン!駅まで走る・・・・シン?」
私は言いかけた言葉を止めた。なぜかと言うと、シンが今までで見た事の無いくらい真剣な顔をしていたから。
シ「ルーシィ・・・・」
シンは私の名前を呼ぶと、赤い瞳を少し細め、口元を緩めると、
シ「・・俺は、いったい、何者何だ・・・?」
私とシンの間を静かに風が通り、私とシンの髪をなびかせた。私は突然すぎる意味不明なシンの問いに戸惑う。が、それはほんの一瞬だけ。私はシンと同じように茶色がかった瞳を少し細め、口元を緩めると、
ル「シンはシンよ。」
シ「!」
ル「もっと的確に言えば、シンは自分自身よ。家族・仲間思いで、正義感があって、強くて、優しくて、頼りがいがあって・・・」
私は目を瞑りながらシンの良い所を思いつくだけ口に出す。目を瞑ってても分かる。目の前にいるシンが驚いているのが・・・・私はゆっくりと目を開ける。やっぱり、シンは赤い瞳を少し見開いて驚いていた。
ル「シン、これが私が思うあなた自身の魅力。シンは素敵な魅力をたくさん持っているの。」
私はシンに歩み寄り、シンの右肩に優しく手を置く。
ル「シン、自分を信じて。もし、自分が自分だと信じられなくなったとしても、シンの周りには妖精の尻尾の皆が、家族がいる。私達が、必ずシンを助ける。その事を、忘れないで。」
シンは硬直したみたいに瞬き一つせず黙っていたけど、しばらくした後、ゆっくりと大きく頷いた。
ル「よしっ!じゃあ全速力で駅まで競争よっ!!」
シ「えっ?ちょっ、ルーシィ待っ・・・!」
ル「よぉ~い・・・ドォ~ン!!」
私とシンは夕暮れのナノハナの街を全速力で駆け抜けた。だから、気づかなかった。ナノハナの街の小さな駅の屋根の上に、一羽の鴉が止まっていた事に・・・その鴉が、黒くて小さな円らな瞳で、私とシンの事を見つめていた事に・・・
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『ここからシン目線で書いていきます。』
ナノハナの街から帰って来た次の日。俺はギルドのバーカウンターでミラが淹れてくれたお茶を飲んでいた。
シ「はぁ~・・・」
ミ「どうしたのシン?深いため息なんかついちゃって?何か悩み事でもあるの?」
シ「い、いや・・!別に///////////////」
ミ「?」
ミラにこの事を話すと冷やかされるのはすでに経験済みだ。読者の皆は覚えているか?以前、俺がルーシィの事を見るとドキドキするって言ったのを?昨日から更に激化して来てるんだ。以前は『友情』だと思い込んでいたが、ここまで激化すると、ミラが言ったとおり、これは『恋』なのかもしれない////////////////////
ミ「シン?顔が真っ赤だけど、大丈夫?」
シ「えぇっ!?あ、いやっ!ほ、ほら!ミラが淹れてくれたこの熱いお茶のせいだっ!いやぁ~、このお茶めちゃくちゃ熱いなぁ~。」
ミ「・・そのお茶、氷の入った冷たい麦茶何だけど・・・?」
シ「・・・・えっ・・・」
ミラが言ったとおり、湯飲みに入ってる熱々の麦茶ではなく、硝子のコップに入った冷たい麦茶がそこにはあった。カランと氷が音を立てる。ミラはバーカウンターに両肘を着いて、重ねた両手の甲に顎を乗せると、
ミ「私、シンの『恋』の悩み、聞きたいなぁ~♪」
小悪魔の笑みを浮かべたミラが俺に微笑み掛ける。俺の頬を冷や汗が伝う。こうなったら最終手段・・・!俺はガタッ!と音を立てて椅子から立ち上がると、ミラの足元を指差して、
シ「ミラ、ゴキブリッ!」
ミ「キャアアアァァァアアァアァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」
ミラの悲鳴がギルド内に響き渡る。俺は一目散にその場から走り去る。あのままあそこにいたら、エルフマンに半殺しされるからな。
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シ「・・はぁ、はぁ・・はぁ・・・はぁ、はぁ、こ、ここまで来れば・・・はぁ、はぁ・・だ、大丈夫な・・・はず、だ・・・・はぁ、はぁ・・はぁ・・・」
俺はギルドからカルディア大聖堂まで全速力で走って来た。お陰で汗でびしょびしょだ。
シ「帰ったら風呂に入るか。」
俺はそのまま家に向かって歩き出した。俺が住んでいる家は川沿いの近くに建っている家賃5万Jの小さな木造建築。一人暮らしだし、あまり大きすぎても困るからな。それに、近くに商店街もあるから便利なんだ。最近知ったばかりだけど、近くにルーシィの家もあるらしい。
シ「ルーシィ・・・」
ふと脳裏にルーシィの笑顔が浮かんだ。俺はぶるんぶるんと音がしそうな勢いで首を左右に振る。俺は何考えてんだよ///////////////
シ「ったく、やっぱ風呂に入って落ち着こう。」
そんな事を考えているうちに、いつの間にか家の前にいた。俺は五色腕輪が入ってるポケットとは反対のポケットから家の鍵を取り出す。チリンと小さな鈴の音が鳴る。小さな銀色の鍵には赤い紐で結んだ銀色の鈴が付いている。鍵穴に鍵を挿して、ガチャッと右に回す。鍵を抜き取ってポケットに仕舞い、ドアノブを捻って中に入ると・・・
グ「お帰り~。」
ナ「よぉっ!」
ハ「あい!」
ル「ヤッホォ~♪」
エ「良い部屋だな。」
ウェ「お、お邪魔してます・・・」
シャ「どうも。」
シ「何でお前等がいるんだあああああああああああああああっ!!?」
なぜか最強チームがソファーや椅子に座って俺の部屋で極楽としていた。
シ「お、おおお前等は泥棒かよっ!?何で俺の家にいるんだよっ!?ルーシィの家じゃねぇのかよっ!?」
ル「それどうゆう意味ィッ!?」
いつもならルーシィの家に勝手に入ってるって聞いたけど・・・すると、エルザが俺に何かを差し出した。受け取ると、それは青い紐で結んだ金色の鈴が付いた小さな銀色の鍵・・・俺の家の鍵だった。
シ「な、なな何でエルザが俺の家の鍵を持ってるんだよっ!?」
エ「お前が自分でギルドに預けたんじゃないか。「もし何かあったらこの鍵を使って俺の家に来てくれ」って。」
確かに預けたけどよ・・・
シ「・・・はぁ。まぁ良いや。で、お前等がここにいるっていう事は、俺に何か用か?」
俺が皆にそう問うと、
ナ「流石シンだな。」
ハ「言う前から見抜いちゃうんだね。」
大体予想はつくからな。
ウェ「実は、最近妙な出来事が立て続けに起こっているんです。」
シ「妙な出来事?」
シャ「あんたも聞いた事あるはずよ。三週間前に海で釣りをしていた人が竿に掛かった物を釣り上げたら、上半身が人間、下半身が魚の生き物が釣れたらしいのよ。」
上半身が人間で、下半身が魚!!?
ル「二週間前には海に潜っていた漁師が海底で光る物を見つけて、更に深く潜ってみたら数え切れないほどの真珠が海底に沈んであったらしいの。」
海底に、大量の真珠!?
グ「一週間前には早朝海辺でジョギングしてた人が巨大魚の大群が飛び跳ねながら海の中に姿を消したのを見たらしいぜ。」
巨大魚の大群が、飛び跳ねる!?
エ「そして昨日の夕方、ちょうど私達がナノハナの街を出た時だ。遠くの方で夕日に照らされて何かが光っているのが見えて、目を凝らして見ると、孤島に建てられた龍宮城が見えたらしい。」
孤島の龍宮城!!?
エ「ここ一ヶ月の間で四つの奇妙な出来事が立て続けに起こっているんだ。」
ル「今週刊ソーサラーでも話題になってるのよ。」
ナ「マカオやワカバもそんな話してたよな?」
ハ「あい。」
俺も街の噂で聞いた事があったけど、ただの冗談かと思っていた。
シ「という事は、マスターはこの奇妙な四つの出来事を解決して欲しい為に、俺達最強チームに頼んだって事か?」
ウェ「そのとおりです。」
やっぱりな。それにしても、人魚に真珠、巨大魚に龍宮城・・・
シ「出来事が起こったのはここ一ヶ月の間。真珠や巨大魚はともかく、人魚や龍宮城は現実世界ではまず考えられない。だとすると、どっかの誰かが何らかの理由で奇妙な出来事を立て続けに起こしているって事だな。」
エ「あぁ。そして、この四つの奇妙な出来事の唯一の共通点が・・・」
俺達最強チームは顔を寄せ合うと、
全「海。」
声を揃えて言った。
グ「奇妙な出来事の舞台は必ず海。」
シャ「しかも、四つの奇妙な出来事が起こる海は全て同じ海。」
ル「ますます分からなくなってきたわ。」
ますます分からなくなってきたのはルーシィだけじゃない。俺もだんだん頭が痛くなってきた。
シ「・・・とにかく、今日はもう遅い。明日その四つの奇妙な出来事が起こった海に全員で行ってみようぜ。で、どこ何だ?その海ってのは?」
ナ「確か・・・アジミっていう街の海だったよな?」
ハ「アジミじゃなくてアザミ!」
似てるけど違うぞ。
シ「そんじゃ、明日の十時半頃に駅で・・・」
エ「何を言っているんだ?」
シ「えっ?」
俺、今変な事言ったか?すると、ウェンディが申し訳無さそうに部屋の隅を指差した。その隣でシャルルが「はぁ。」呆れたようにため息をついた。恐る恐るウェンディの指先の方に視線を移すと、そこには大小さまざまな大きさのリュックサックやスーツケースが置かれていた。
シ「ま、まさか・・・ここに、荷物を置いて・・こ、今晩、俺の家で・・・泊まるって事、か・・・?」
シ以外「大正解!!!」
その夜、普段は広く感じる部屋の中で六人+二匹がぎゅうぎゅうになって一晩過ごす事になった。
後書き
第二十四話終了ですっ☆
自分が何者なのか分からなくなってしまったシンに手を差し伸べてくれたのはルーシィ。その優しさにシンはどんどん心を惹かれていく。そして、同じ海で立て続けに起きる奇妙な出来事に最強チームが挑む事となった!!
次回はアザミの街に到着した最強チーム。海について聞く為、グレイの知り合い(?)がいるギルドに行くのだが・・・!?
それではまた次回、お会いしましょう~☆
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