DQ4 導かれちゃった者達…(リュカ伝その3)
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第6章:女の決意・男の勘違い
第26話:高所では爽快感が違うね
(世界樹)
ブライSIDE
リュカの後を追うように世界樹へ登り始めて5時間弱……
生い茂る木々に脚をかけ開けた場所に上がると、遙か先に奴の姿を確認する。
むろん奴だけではなく、奴が言ってた危機に陥ってる美女とやらも一緒に居る様子。
年老いたワシの目では美女の容姿までは確認できない。
だが、先程まで何を行っていたかは確認できる。
なんせ美女の方は慌てて服を着てるからのぅ……
男の方は気にせず裸だと言うのに。
「4時間は余裕があっただろうから、4.5発はヤってるわね!」
奥方が悔しそうに事態を分析する。
「アイツもしかしたら、気球で上空から見下ろしてた時に美女の存在に気が付き、作戦を練ってたのかもしれませんね」
弟子が師匠を冷静に解析する。
「何にせよ……早くリュカさんと合流して、二度と単独行動をとらせないようにしましょう!」
パーティーリーダーは諦め口調で奴の家族に注意を促す。
勿論、無駄である事は重々承知だろう。
だから誰も何も言わない……
ただ黙って奴の下へ近付くだけ。
足下と敵襲にだけ気を付けながら。
「遅せっ……何やってたの、みんな!? あまりにも遅いから、僕……5発も頑張っちゃったよ(笑)」
何が凄いって……妻の前で、娘の前で、義息前で、愛人の前で平然と浮気報告をする神経に驚かされる事だ。
「お前ふざけんなよ……勝手に先へ行くから、俺達がどれだけ大変だったか!」
流石のウルフも怒り心頭。
だがコイツには何を言っても無意味だろう。
「ふざけてないよ。僕が勝手に先へ行かなきゃ、彼女……あぁ彼女はルーシアね、えっとルーシアがモンスターに食い殺されてたんだから!」
「モンスターに食われるか、お前に喰われるかの違いだろう!」
「大きく違いがあるだろ! モンスターに食われたら死んじゃうけど、僕に喰われても死なない。むしろ気持ちいい! お互いに!」
「お前の快楽なんかどうでも良いんだよ! こっちの苦労も考えろって言ってんだよ!」
「お、何だその言い方? それだと彼女の命がどうなっても良いみたいじゃんか! 僕が急いだから、ルーシアが助かったんだぞ。お前等と一緒に行動してたら、確実に手遅れになってたんだぞ! 解ってて見捨てろと言うのか?」
「そ、そんな事は言ってない! ただ……」
怒りにまかせリュカに刃向かったウルフ……
あっさり返り討ちに遭い口籠もっている。
「まぁまぁ良いじゃないですか。無事に合流できたのだし、そちらの彼女も無事だったんですから! そんな事よりリュカさん……正式に紹介して下さいよ」
「何だシン……彼女に惚れちゃったかな? 随分と物わかりが良くなってきたじゃんか」
確かに……常にリュカの言動に文句を言っていたシンが、ここ最近大人しくなってきたように思える。
初対面の女に惚れたとは考えられないし、やはり奥方の事を意識しての態度じゃろうか?
「新しい彼女は天空人ね。何でこんな所に居るのよ?」
「あ、本当だ羽が生えてる!? 折り畳んでるから全然気付かなかった……ビアンカさんは良く気付きましたね」
「まぁ見慣れてるからね……それよりもウルフ君、もっと冷静になりなさい。何時ものクールな貴方なら、このくらいの事は気が付いてるはずよ。今に始まった事じゃないリュカの言動に惑わされ、熱くなるなんて……らしくないわよ!」
いや……リュカの言動に苛つくなと言う方が無茶だと思う。
「あ、初めまして……私は天空城から参りましたルーシアと申します。世界樹の葉を摂りに来たら、モンスターに襲われてしまい羽を怪我してしまいました。貴女がリュカさんの奥様ですね……」
リュカ一家の遣り取りに唖然としてたルーシアも、慌てて自己紹介を始める。ビアンカに対してはぎこちなく。
「初めましてルーシア。私の旦那は素晴らしかったでしょ? でももう返してもらいますね……その暴れん坊将軍は私のですから(笑)」
「ふふふっ……お返しします。でも……また貸して下さいね?」
もっとギスギスした状態になると思ったが、意外にあっさりしたビアンカの挨拶を皮切りに、各々が自己紹介を始める。
一通り終わった所でルーシアが……
「あの……もしかしてシン様は勇者様なのでしょうか?」
「え……あ、はい。一応天空の防具を装備できるので、勇者らしいです……そう見えませんけどね、あははは」
「あぁ良かった! お願いがあるのですが、私を天空城まで連れて行って下さい。羽を怪我してしまい、帰るに帰れなくなってしまったのです。天空の武具を全て装備した勇者様が一緒なら、世界樹より西にある天空への塔へ入る事が出来ます。私は戦闘能力が低く、一人ではモンスター蔓延る天空への塔を登れません……どうかお願いです、私を連れてって下さい!」
「そ、それは構いませんが……まだ天空の剣を見つけてません。このままじゃ天空への塔には入れないのではないですか?」
「それなら大丈夫です。天空の剣でしたら、そこに……」
戦えないのに一人でモンスター蔓延る世界樹まで降りてきた天空人が、リュカ好みの巨乳を揺らしながら嬉しそうに一角を指さす。
そこには枝葉に隠れるように剣が立て掛けてあり、我々の視線に応えるように神々しさを醸し出す。
「以前から天空の剣をこの場所に隠しておいたんです。ある程度のモンスターは、天空の剣から発せられる破邪のオーラで近付く事が出来ない為、世界樹の葉を採取するのに最適な状況を作れたから……しかし最近はモンスターの邪悪さも増大し、天空の剣が置いてあるだけでは追い払う事が出来なくなってしまいました。お陰で怪我をしてしまいましたが、私は運が良いですね! 丁度勇者様と遭遇するのですから」
どうやら脳に行く栄養が、全て胸に集まってしまったらしく、何とも緩い口調の天空人だ。
ある意味リュカの好みは一貫してると納得する。
姫様が貧乳で本当に良かったわい!
「これが天空の剣。まさかこんな所に置いてあるとは……」
天空の武具、最後の一つを手に取りフル装備状態で構えるシン。
ただの武具ではないことがワシでも解るオーラを出し、思わず気後れしてしまう。
「何か……ダサッ」
しかしリュカは何時も通りだ。
シンから発せられる勇者のオーラに気圧される事無く、自分の言いたい事を平然と言ってくる。
「ティミーがそれを装備すると、凄ー格好いいんだけどなぁ……お前、似合わないな。本当に勇者か?」
「……どうせ俺には似合いませんよ! ですが、これから似合うようになってみせます。もしかしたら生き返るかもしれないシンシアの為にも……あ、そうだ! ルーシアさん、お伺いしたい事があるんですが」
「はい、何でしょう勇者様?」
「この世界樹には、世界樹の花というのが咲くと聞きました。どこに咲いてるか知ってますか? 殺されてしまった彼女を生き返らせる為に、どうしても必要なんです!」
「よくご存じですね!? この世界樹の天辺に、1000年に1度だけ世界樹の花が咲きます。ですが以前咲いてから、まだ800年程しか経ってませんから、蕾があるだけですよ。あと200年は花が咲きませんよ」
唯一の救いだった世界樹の花は、あと200年しないと咲く事がない。
シンだけでなく皆が絶望的な気持ちに陥ってしまう……
しかし、そんな中あの女だけが明るい口調で喋り出した。
「大丈夫よ。取り敢えず蕾だけでも摘んで、天空城へ持って行きましょう。偉大なる神様が、哀れな青年の為に何とかしてくれるはずよ! ね、お父さん……協力してくれるでしょ?」
「えぇ~……めんどくせぇ~……」
「そんな事言わないでよ! アイツにそんな事言えるのお父さんだけなんだから。私達を過去に送る事が出来たのだから、蕾の時間だけを200年進ませる事が出来ると思うの。シンちゃんの為にお願いだから協力してよ!」
「何で僕がコイツの為に……」
「ちょっとは考えなさいよ! お母さんソックリな彼女が居るのよ。お兄ちゃんと同じ天空の勇者なのよ。どう考えてもシンちゃんとシンシアちゃんが、お母さんの先祖でしょう! このままシンシアちゃんを生き返らせないと、未来でお前の妻は存在しなくなるんだぞ!」
「それは一大事だ! よし任せろ、ヒゲメガネを絶対に説得してみせる! ボコボコにぶん殴っても説得してやる!」
今……『ヒゲメガネ』って言ったぞ。
以前から何度かリュカの口から聞こえてきたフレーズだが、もしかして神様の事なのだろうか!?
「あぁ良かった……流石はリュカさん、とても頼りになりますね。ついでに天辺まで行って蕾を摂ってきてくれませんか? 俺達は先に下の町へ降りてますから、サクッと登って蕾を摂ってきて下さいよ」
「何だその言い方……凄くムカつく言い方だぞ! 天空の防具の丈夫さを検証する為に、お前をここから突き落とすぞコノヤロー!」
「あぁ……それもしょうが無い事ですね。運良く生き残れば良いですけど、死んでしまったらビアンカさんの存在も消え去るんですね。ああ無念無念」
「…………」
どうやら珍しく言い負かした様で、シンを睨み膨れっ面を見せるリュカ。
最近リュカの言動を大目に見てたのは、この状況を予測してなのだろうか?
「まぁまぁリュカ……私も一緒に天辺まで行くから、そんなに膨れないで。一緒に木登りを楽しみましょうよ……ね♡」
「うん。ビアンカと一緒に行くぅ~」
そっと寄り添い腕に抱き付き、顔を覗き込むように見て、小首を傾げながら説得するビアンカ。
流石リュカの奥さんだ……旦那の操縦方法を熟知している。
夫婦なのだから許してやろうと思う反面、苛つく心を抑えきれないのは、二人を見て唾を吐き捨てたシンも同様なのだろう。
まぁ何にせよ、これで我々が世界樹に登ってる必要は無くなった。
二人寄り添いながら、更に上へ登って行くリュカとビアンカを尻目に、来た道を戻る大所帯パーティー……
きっとリュカの事だから、ワシ等の直ぐ後に降りてくるだろうと予測する。
しかしウルフの予測は違うらしく……
「きっとあの夫婦……天辺でヤるぞ。高い所が好きな夫婦だから、間違いなくヤるぞ! 下の町には宿屋もあったし、降りたら直ぐに部屋を確保した方がいいな」
「そうね……ラーミアの上でヤる夫婦だし、アイツの上よりヤりやすいだろうし……どこか可笑しい夫婦だからねぇ」
マリーまでも両親の行動をウルフと同じに推測する。
それは“可笑しい”で済む事なのか?
ブライSIDE END
後書き
さあさあ遂にリュカ伝3も2年目に突入です。
つぶやきにコメントしてくれたharuku様の為にも、
今後もドンドコ頑張っていこうと思います。
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