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DQ4 導かれちゃった者達…(リュカ伝その3)

作者:あちゃ
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第6章:女の決意・男の勘違い
  第25話:集団行動は苦手ですか?

(世界樹の根元)
ウルフSIDE

リュカさんと行動を共にするようになって幾年月……
驚く事ばかりの過去であったが、流石に慣れも感じてきた。
そう簡単に驚かない自信があったのだけど、世界はまだまだ広いらしい。

俺は気球から見下ろす世界樹の大きさに驚いている。1本の木で、これほど巨大な木は無いだろう……
世界樹の根元に気球を降ろしたくても、生い茂る枝葉が邪魔で500メートル以上離れた場所にしか着陸できないのだ。

何とか着陸しまたも驚く事に……
地上から見上げる世界樹の巨大さは、まさに脱帽としか言いようがない。
一体樹齢何年なのか……見当も付かないよ。

もっと近くで世界樹を見ようと根元まで歩く……
すると驚きが再登場!
なんと根元では小さな集落が形成され、生命の営みを感じる事が出来た。

しかも人間だけの集落ではない……
エルフも居れば、ドワーフも居るし、ホビットに魔族までも共に生活を送っている。
俺達はグランバニアで見慣れているが、シン君達には驚愕だったのだろう。

「こんな場所があるのに、何でデスピサロは人間を滅ぼそうとしてるんだ?」
と、シン君の呟きにロザリーさんもラピスさんも頷いていた。
「最初から争う必要なんて無かったのよ」
そう笑顔で諭すビアンカさん……美味しい所を持って行く辺り、夫婦ソックリだな。

だがここで、最大級の驚きが俺の身に降り注ぐ。
“青い鳥”と言う物語があるが、世界がどんなに広くても真の驚きとは身近にある物なのだ。
そう……身内が一番驚きなんだよ!

「あ! 木の上で美女が助けを求めてるぞ!」
誰の台詞か説明しないが、そう言うと突然あの男は世界樹に飛び付き上へと登り始めたのだ。
その登り方がこれまた驚きで、世界樹表面の小さな凹凸(指の先が辛うじて引っかかる程度)を利用し、ロッククライミングの様に(いやこの場合ウッドクライミングだが)スルスルと視界から消えてしまいました。

もう驚きすぎて何も言えなかったね……
我に返ったのはビアンカさんが「あ、拙い……自由を許しちゃったわ」って呟いた時だ。
多分10分は呆然としてたと思うよ。

「あのオッサン、以外とせっかちよね」
そう批判したのは娘のマリー……
世界樹の根元を指差し、父親の非常識さを指摘する。

そう……この世界樹というのは、元より上に登る事を前提とした植物らしく、人の手によって世界樹内に入り登れるように加工されていたのだ。
勿論、直線的に登るより時間はかかるだろうけど、奴のように非常識な事が出来なくても、上に行く事が可能なのである! ……だが、

「私達に聞こえないって事は、相当上の方に居るってことよね……あぁ、また増えるのか」
俺達がリュカさんに合流できるのは、一体何時間後だろうか?
奥方様の嘆きは、この迂回ルートが言わせているのだろう……

俺に出来る事は、
「兎も角急ぎましょう」
と言って、準備もそこそこで世界樹内に入っていく事だけ。

普通の上司、普通の師匠、普通の義父を求めるのは贅沢なんですか?

ウルフSIDE END



(世界樹)
クリフトSIDE

確かに……世界樹の外壁を素手で登るよりは移動しやすいけど、植物に無理矢理通路を造ったので楽ではない。
狭い上に急勾配で、ウルフさんが登るのをサポートするフリをしながらアリーナ様のお尻を押す(触る)のが不愉快だ。尤も……女性全員に行っているから、男性陣全員から不評である。

だが当人の心配事は別にあり、単独行動を許してしまったリュカさんの事を、ずっと愚痴っているのだ。
そして、その愚痴につられるようにビアンカさんが同意し『急いでリュカと合流しないと!』と言うので、世界樹登りをサポートしているように見えるウルフさんのセクハラを、注意する事が出来ません。

「しかしウルフさん……全員で登る必要ってありましたか? 二手に分かれても良かったんじゃないですかねぇ……特にトルネコさんとリューノさんには辛そうですし」
世界樹を登り始めて2時間……シンさんが当然の疑問を提示してきた。今更……

「俺も最初はそう考えてたよ。世界樹に登るグループと、根元の町で情報を収集するグループとに別れる事を……」
私などはそんな事を微塵も考えませんでしたけど、何故実行しなかったんでしょうかね?

「トルネコさんやリューノとマリー等を、安心して託せるリュカさんと共に残そうと考えてたんだ。どうせ『え~、この木に登るのぉ~……面倒~い!』とかリュカさんが言いそうだったから、居残り組に計画してたんだよ!」

「なるほど……予想に反してリュカさんが勝手に登ってしまったんですね」
「でもさぁウルフ……だからと言って全員で登る必要性が解らないんだけど」
リバーサイドで『魔法の法衣』を購入し、肌の露出を控えるようになったマーニャさんが、これまた当然の疑問を口にする。

「良いか……パーティーを分けると言う事は、戦闘メインで危険地帯を探索するチームと、比較的安全な場所で情報収集をするチームとに、分ける必要があるんだ。戦闘メインの方は考える事無く戦力重視にすれば問題ないが、情報収集メインの方だ。比較的安全と言っても、以前のようにロザリー抹殺の為にモンスターが襲来するかもしれないだろ。前回はリュカさんが居てくれたから(リバーサイド)も無事だったが、あの馬鹿が単独行動をしたら……」

「しかしなぁウルフ……私やシン殿・アリーナ姫も居るのだ。世界樹(ここ)のモンスター程度なら、問題は無いと自負できるぞ! お前さんやリューラ殿を残しておけば、下で留守番してても大丈夫なのではないか? 我々だけでも世界樹攻略は出来るぞ」

自身の力量を過小評価されたライアンさんは、些か憤慨しながらウルフさんに抗議をする。
だが私も、アリーナ様・シン様・ライアン様が居れば世界樹の方は問題ないと思うし、ウルフさんを中心に居残りをすれば、情報収集チームも危険は少ないと考える。

「違う違う違う! 俺もライアンさんやシン君・アリーナ姫の実力を過小評価するつもりはない! だけど考えて見ろ……リュカさんが先行してしまったら、その後を追うようにビアンカさんは世界樹攻略に加わるだろ!」
「そうね……リュカが何処に居るか解ってて留守番なんて絶対に嫌よ!」

「みんなの実力を信用してても、ビアンカさんに万が一の事があったらって考えると、戦力分散は絶対に出来ないんだ! アイツ今回の件でビアンカさんが怪我をしたら『やっぱり冒険は危険だから、僕は安全な所でビアンカと一緒に暮らすよ!』とか言って、エンドール辺りに引き籠もり俺等の手伝いはボイコットするぞ! あのオッサンを今後も利用する為には、ビアンカさんに傷一つ付けてはいけないんだ……」

なるほど……確かにリュカさんが居ると居ないとでは、安心感が全然違うだろう。
旅をし強くなったアリーナ様やシン様・ライアン様等全員と戦っても、リュカさんの方が強い事は想像出来る。

あの人の存在を利用する為には、ビアンカさんを傷つけてはいけない……
その為には、無駄と解りつつも全員で世界樹攻略を行わねばならない……
発端はリュカさんの所為なのに、彼の為に苦労しなければならないなんて……確かに苛つきますね!

「くっそー……こんな時にティミーさんが居てくれれば!」
ウルフさんのぼやきは止まらない。
きっとティミーさんとは大変頼りになる人物なんだろう。

「一緒にポピーも居たら面白い事になるのにね」
旦那の悪口を言われ続け、少し憤慨気味に反論するビアンカさん。
ポピーさんとは誰だろうか?

「止めて下さいよ恐ろしい! これ以上混乱の元凶を内部に取り入れるなんて悪夢だ! リュカさんにマリー……更にポピー義姉(ねぇ)さんまで加わったらカオス以外の何物でも無い! ヒゲメガネだって、そのくらいは解っててこの結果なんだから」

「マリー……貴女の彼氏は、貴女の事をとても評価してるわね」
「えぇお母様。ポピーお姉様と同系列になるなんて感激ですわ! これからも高貴なる血筋に相応しい生き方をして行きますわ!」

「ふん、勝手にすればいいさ! 良かったリューノに手を出しといて……俺の心のオアシスはリューノだけだよ!」
「大丈夫、そんな事言って? 私にもお父さんの血は流れてるのよ」

「大丈夫だね! スノウさんの血が重要だって最近になって理解した。よく考えたら、ポピー義姉(ねぇ)さんやマリーがアレなのは、母親の所為だって解ってきたからね! 母親の血こそ偉大だって事だよ」

どうやら勝負ありな様で、ビアンカさんとマリーさんが頬を膨らませ黙ってしまってる。
きっとウルフさんは、元の時代に帰ったら酷い目に遭うんだろうけど、今だけは優越感に浸らせてあげようと思います。

彼に神のご加護がありますように……

クリフトSIDE END



 
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