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久遠の神話

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第八十六話 運という実力その六

「外郎ですね」
「そうです」
 その通りだとだ、権藤は浜崎に答えた。
「この町にはよい和菓子屋がありまして」
「そのお店のものですか」
「外郎も絶品なのです」
 それでだというのだ。
「今回の料理にもです」
「出て来たのですね」
「どうぞお召し上がり下さい」
 権藤は見事に漆が塗られた漆器の上に置かれている四角く切った二切れの外郎を見つつそのうえで浜崎に勧めた。
「これだけ美味な外郎はないと思います」
「そしてその外郎をですね」
「今から」
 食べてくれというのだ。
「そうして下さい」
「そうですね。料理は最後の最後まで済んで、です」
「そうしてですね」
「最後の茶を飲み」
「それで終わりですから」
「懐石料理は最後の最後までですから」
 浜崎も微笑み権藤の説明に応える。
「楽しまねばなりませんね」
「はい、そして最後のお茶もです」
「このお店はいいのですね」
「期待して下さい」
 その茶もだというのだ。
「是非」
「それでは。しかしこうして料亭で政治の話をするのは」
「やはり独特の風情がありますか」
「批判はありますが日本の政治文化です」
 その中にあるものだというのだ。
「それだけに独特の味わいがあります」
「そもそも料亭には野党の議員やマスコミ関係者もよく入りますね」
「彼等は今も結構ですね」
「しかし彼等は批判されず我々だけを批判することは
「どうにも腑に落ちませんが」
 しかし今はだ、浜崎は言う。
「今はこうして話をしましょう」
「日本の政治文化の中にあって」
「実際話をしやすいことも事実です」
 料亭の中で彼等だけで集まり懐石料理を食べながらというのは、というのだ。
「そう思います」
「幹事長は質素と聞いていますが」
「確かに普段の食事や邸宅、着るもの等については」
 質素だというのだ、浜崎も。
「しかし料亭は話をしやすいので」
「使われますか」
「もっと言えば私は私自身を庶民派と喧伝もしません」
 それもないというのだ。
「それで実は違う、尚且つ無能な輩を見てきていますので」
「そういえば野党が政権の時の最後の首相も」
「はい」
 この輩もだというのだ。
「到底でしたね」
「首相の器ではありませんでした」
 こう言い切った、その輩についても。
「我が党なら閣僚にもなれませんでした」
「途中で落選ですか」
「先の二人の首相も」
 そのどちらも酷いものだった、無能なだけでなく人格にも深刻な問題があったのではないかと思える位に。
「マスコミに甘やかされていなければ」
「あそこまでなれませんでしたね」
「マスコミの擁護は毒です」
 浜崎はこうも言い切った。
「何も努力もせずして一定の支持、議席が得られるのですから」
「その党を腐らせる毒ですね」
「政党も甘やかされてはならないのです」
 その左翼政党の様にだ。 
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