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久遠の神話

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第八十五話 消える闇その六

 豊香の前に立つ、豊香はその彼に黄金に輝く宝石を入れた銀色の指輪を差し出した。
「これがです」
「幸運をもたらす指輪か」
「はい、これがです」
「その指輪を手にするとだな」
「貴方には幸運がもたされます」
「そうか」
「この指輪は貴方が願えば姿を消し若し手元から離れても」
 失ってもだというのだ。
「必ず貴方のところに戻ってきます」
「そうなるのか」
「幸運は貴方から離れません」
 それも決して、というのだ。
「ですからこの指輪の力で」
「私は日本の首相になり」
「この国を導いて下さい」
「そうさせてもらう、それではだ」
 権藤は豊香が差し出しているその指輪を受け取った、そして言うのだった。
「これでだ」
「貴方はですね」
「戦いから降りる」
 そうすることだ、ここで宣言した。
「今からな」
「では今から剣を足元に置いて下さい」
 聡美が権藤に説明した。
「横に」
「それでいいのか」
「そのうえで戦いから降りることを宣言されれば」
「それでだな」
「貴方は剣士でなくなります」
 即ち戦いから降りられるというのだ。
「そうなります」
「そうか、それではな」
 権藤は聡美の言葉を受けて彼女が言う通りにした、すると。
 剣は煙の様に消えた、権藤は足元に置いたその剣が消え去ってから女神達に顔を戻してそのうえで言った。
「もうこれで私はこの戦いとは関係がない」
「はい、そうです」
「もうこれで」
 聡美と豊香が権藤のその言葉に答える。
「貴方は戦う必要がありません」
「後は貴方の道を歩まれるだけです」
「わかった、それではな」
 権藤も二人の言葉に頷いた、そしてだった。
 彼は駅を見た、ここで気付いたことがあった。それは何かというと。
「ただ、今の駅はな」
「そうですね、閉まっていますね」
「何も通りませんし誰もいませんから」
 工藤と高橋もここで気付いた。
「それではどうしてここを出るか」
「それが問題ですね」
「抜け出るか」
 権藤は素っ気なく述べた。
「そうするか」
「駅から、ですか」
「全部閉まっていますが」
「日本の駅のガード位はどうということはない」
 権藤の頭脳、そして身体能力を使えばというのだ。
「私ならな」
「いえ、それには及ばないわ」
 智子が抜け出ようとする権藤に告げた。
「貴方はそうする必要もないわ」
「では」
「最後だから」 
 それでだというのだ。
「サービスということになるわ」
「それで外に出してくれるのか」
「それでいいかしら」
「それならそれに甘えさせてもらおう」
 そのサービスにだというのだ。
「私としてもな」
「そう、それではね」
 智子も応えそしてだった。
 右手をさっと挙げた、すると権藤の姿は消えた。工藤と高橋はその権藤が消えたのを見届けて智子に対して問うた。 
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