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久遠の神話

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第八十五話 消える闇その二

 二人はあらためて権藤に話をしたのだった。
「それでなのですが」
「今からですね」
「新神戸駅に入ってだな」
「もう駅は閉まってますけれどね」
 高橋はその新神戸駅の方を見た、そこはだった。
 もう閉まっていた、普通に入ることが出来ないのは明らかだ。それで高橋は権藤に対して言ったのである。
「どうするつもりですか?」
「決まっている、飛ぶ」
 そうしてだとだ、権藤は落ち着いた顔で二人に返した。
「それで中に入る」
「それだけの力はもう、ですか」
「備わっているんですね」
「そうだ、しかしだ」
「しかし?」
「しかしといいますと」
「そんな力もどうでもいい」
 剣士としての力、それもだというのだ。
「私にとってはな」
「剣士の力にも興味はないんですね」
「私が興味があるのはl経営、政治、そして世界だ」
 そうしたものだというのだ、だからなのだ。
「こんな狭いものに興味はない」
「だからですか」
「それで」
「そうだ、こんなものは捨てても未練はない」
 それこそ何もだというのだ。
「これで最後になるがな」
「それではですか」
「その力を捨てる戦いでもありますか」
「そういえばそうなるな」
 このこともだ。造作もなく言う権藤だった。
「だがやはりだ」
「どうでもいいですか」
「剣士の力は」
「何度も言うが私は日本の首相になり日本を今以上に素晴らしい国にする」
 そう考えているからだというのだ。
「剣士のことはどうでもいいのだ」
「戦いにも興味がない」
「それで、ですか」
「こんなものはどうでもいい」
 権藤はまた言う。
「ではいいな」
「はい、それではですね」
「今から」
「二人も飛べるな」
 このことをだ、権藤は二人に問うた。
「そうだな」
「はい、剣士の力で」
「出来ます」
「なら行くとしよう」
 権藤は二人には剣を向けていなかった、心のそれを。
 そして今手にそれも出した、しかしそれでもだった。
 構えは取らない、そのうえで二人にこう言うのだ。
「今からな」
「はい、それでは」
「今から」
 二人もそれに応えてだ、そしてだった。
 それぞれの剣を出す、そうして。
 その剣の力で宙に浮かび新神戸駅の上にまで上がる、そして。
 その線路の上に降り立った、するとここで聡美の声がした。
「ようこそ」
「貴女か」
「はい、ここです」
 三人がいるのは岡山に向かう方だ、そちらに身体を向けて立っている。だが聡美の声は新神戸駅のプラットホームから聞こえてきた。 
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