一般人(?)が転生して魔王になりました
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話と授業
前書き
お久しぶりです。まあ、長い話はあとがきに書くので置いといて、書いては消し書いては消しを繰り返した駄文です。それではどうぞ。
桜華の話を聞き終えてから蓮華は家に居る時と何ら変わりない行動をしていた。
手馴れた手つきで材料を切っていき、フライパンに入れ炒めていく。そして盛り付けてゆく。
「こんなもんか」
牛フィレ肉を焼き、塩を添えたものと、根菜とトマトソースのパスタである。そして、四種のチーズのピザと、デザートのケーキと様々な料理が出来ていた。
出来上がった料理を見ながらある事を思い出す。
「―――原初異能かー」
蓮華がまつろわぬ神と激動の四日間戦いで遇った神が蓮華に言った謎の言葉。
異能には様々な系統がある。シリウスの持つ肉体系に、桜華の持つ魔眼系。知り合いの自然支配系に、呪現化系と他にも様々な系統がある。そんな中でも原初異能というのは考えた事があったが一度も耳に入れたことは無かった。
「ま、アテナに聞いてみるのが一番か」
蓮華はアテナの居る部屋へと向かったのであった。
◇ ◇ ◇ ◇
ホテルの一室。そこの窓際に座って物思いに耽っている人物がいた。
考えている事は一つ。友人の子について、《投函》の魔術で送られてきた手紙の内容であった。
「……蓮華が神殺しに成った…ね」
何時か成るのだろうと分かっていたので驚きはあまり無い。ただ、有るとすれば十二歳で成ったか位だ。
「久々に顔でも出そうかな?」
それにと呟き、ベッドの方を見る。微かに動いている影は寝息を立てていた。
それを見て丁度いいかと思い、その人物は仕度をするのであった。
◇ ◇ ◇ ◇
本来まつろわぬ神にとって人の食事とは嗜好品である。彼らは食べなくても生きていける。
ただ、家の守護神の場合は三百年程、御剣と過ごしている為、食事を取る変わった神だと言えるだろう。
「何時食べても思うが、本当に良い腕前だな」
「それはどうも。土産物のワインもあるから三階の談話室で飲もう」
今は月が出ていて、月見酒には丁度いい。
「洒落ているな」
「一人酒は詰まらんと言って、十歳の子供に酒を教えた女神の台詞ではないと思うな」
日本酒、神酒、ワインと酒に合う摘みを作らせたり、晩酌につき合わされたりと色々と教えられたのだ。
「仕方あるまい。飲める者が蓮華しか居なかったのだから」
「カズキさんや鏡夜さんも時々来るでしょ」
片や後見人。片や叔父にあたる二人だ。まあ、家に来るのは誕生日や新年の挨拶。行事関係と仕事が忙しくて中々来ないのだが。
「あの二人は酒を嗜む程度にしか飲まんからな。付き合いきれずに酔い潰れる」
「さいでしたね」
そうこう話している内に談話室に着き、コルクを抜き、ワインをグラスに注いでいく。
二人はグラスを持ち上げ、ゆっくりと口に含み、味わう。
「当たりを引いてきたか」
「まあね。これ、神様と戦っている中で助けた人が居て、その人がワインの収集家だから、助けたお礼に一本貰ったんだよね」
摘みであるカマンベールチーズの天ぷらを摘む。揚げたチーズは外はカリッとしていて中はトロトロに溶けて、美味いね。
「さて、聞きたいことがあるんだけど」
「何だ?」
ワインと摘みを飲み食いしているアテナは満足そうに聞いてきた。
「原初異能って何?」
「―――文字通りの始まりの異能でな。この星が始まった時から存在する世界最初にして最古の異能だ」
ワインを一口飲み喉を潤したアテナは語っていく。
「この世に存在している全ての異能は、原初異能から枝分かれした物だ」
その事を知るのは今では神々と極一部の人のみとなった正体不明な異能。
遥か昔から存在する異能のルーツ。
「十全に扱い切れれば権能と同等以上の力を発揮する規格外の異能だ。―――ただし、異能に呑まれなければの話だが」
「呑まれる?」
「言葉通りの意味だ。何せこの星が生まれた時から存在する異能だぞ。人に扱いきれるわけが無いだろ
う」
ま、普通に考えれば無理だな。許容量を超えて破裂しそうだし。
「使えるとしたら逸脱者のような人の枠をはみ出している奴等くらいだ」
「……逸脱者ね」
人の枠組みからはみ出た者『逸脱者』。極々稀に人という枠組みからはみ出て、何かが神々の領域に至ったぶっ飛んだ存在。
桜華の魔術と異能然り、シリウスの身体能力然り、泉華さん然り、月華さん然り。
彼らは神や神殺しと勝負が成立する希少すぎる存在だ。
「ま、聞きたいことは聞けたからもう少し付き合って寝るとするよ」
肉体は神殺しとは言え十二の子供。連戦による肉体的疲労と、桜華の話しで精神的に疲れ、酒でその溜まっていた疲れが噴出していた。
「ああ、寝ていろ。聞きたい事が出来れば明日以降に聞けば良い」
「もう一杯飲んでからだけどね」
その後、ワインを飲み干した蓮華は明日に備えて眠りについたのであった。
◇ ◇ ◇ ◇
一人残ったアテナはワインを飲みながら月を見上げていた。
『この先の未来の私の子孫となる神殺しは、私達御剣の全てを超える最後にして最強の存在。けど、それは原石なのよ。だから、戦いの神であるあなたに育ててもらいたいのよ』
人として変り過ぎている逸脱者はそう言った。
『妾に神殺しになる存在を育てろと?』
『ええ。あなたほどの女神なら原石次第で神殺しにすることは出来ると思うのよ』
『断る。何故妾が仇敵である神殺しとなる存在を育てなければならない』
『良いじゃないの。それにこれはお願いよ。彼の場合だと並大抵の実力者では育てる事はできないし。
それに“鋼殺しの魔王”とか面白いと思うわよ』
『……予定なのだろう』
『ええ、そうね。決して変わることの無い未来。“彼が生まれるという未来は、既に選ばれている。”―――でも神殺しに成るか成らないかは、その後どうなるのかは彼次第。まあ、そこから先は弄られていない自由な未来なのよね』
『なんだ、羨ましいのか』
『さあ、どうかしらね』
泉華は人を魅了するように笑いながらそう言った。
そんな会話が彼是三百年程前の話だ。
「全くもってこの三百年程で随分と甘くなったものだな」
「―――甘くなったと言うよりかは、人間味が付いて来ているんじゃないのかと僕は思うけど」
音も無く、気配も無く、桜華は唐突に現れた。
「何用だ、魔神」
「いや何、少し聞きたいことが在るんだよ」
「奇遇だな。妾も聞きたいことが在るのでな、丁度良いだろう」
「それは良かった。では、飲みながらという事で」
こうしてワインを手土産とした大人同士の二次会が始まったのであった。
◇ ◇ ◇ ◇
次の日の朝。
蓮華と桜華は結界によって隔離された世界に居た。
「ではこれより、第一回勉強会(戦闘実習)を始めます。質問のある方は手を上げて下さい」
と言っても蓮華しか居ないのだが。
「桜華さん。何でこんな事になっているんですか」
朝、朝食を食べたら庭に来いと言われて出てきてみれば、こんな事になっている。疑問に思わない奴が居るのならそれはそれで凄いと思う。
「そこは先生と呼ぶように」
ズビッシ!と擬音が聞こえてきそうな位に指を指す。ノリがいいな。
「まあ、強いて言うなら口で言うより、神殺しなんだから実戦で教えたほうが手っ取り早いのでという訳だ」
「……そっちの方が確かに早いからいいけど」
あの四日間で経験済みである。
「実際のところ僕の魔術は色々と混ぜすぎた結果オリジナルのモノに成ったから教え難いというのも在るんだよね。だから技術は観て盗み取れ」
瞳の色が赤く染まっていく。それと同時に蓮華の身に適度な緊張感が張っていく。
「実戦形式の何でも在り。制限時間は三十分。一日一回。勝敗の判定は、まあ自分で付けるといいさ」
その言葉と同時に蓮華は地を蹴り、一瞬で距離を詰め、勢いよく腕を突き出す。素手では在るものの、神にダメージを与える事ができる拳は、人相手には十分な武器になりえるレベルだ。しかし桜華は、それを完全に避ける。
蓮華はそこから蹴り、拳、手刀と繋げていくが、その全てが避けられる。
「―――なるほど。その年で中々の体術だ。けど」
桜華は、放たれている拳打に優しく撫でるように触れ、拳を逸らし、手首を掴み、力の向きにしたがって空中に放り投げた。
「まだ甘い」
その動作は、あまりにも自然で、無駄が無く、次へと容易に動作を繋げるものであった。
「地帝乱槌」
蓮華の真上に石柱が形成され、重力に従い落ちてくる。
「やば!」
投げられて空中にいた蓮華は落下してくる石柱を虚空瞬動で宙を走り、避ける。
そのまま落ちた石柱は地面を陥没させ、粉塵が舞う。
「地帝乱杭」
同時に桜華が一言呟き、複数の杭が形成され、発射される。
発射された杭が蓮華の頬掠めた瞬間、蓮華は杭の群れに対し、無造作に手を振るい、それらを薙ぎ払った。
「普通の格闘に持ち込んでも意味が無いから、やり方を変えるか」
蓮華の右拳に見えない力の渦が巻き起こり、蓮華はそれを距離が離れているにも拘らず殴りつけた。
放たれたそれは拳打のように桜華に向かっていった。
桜華は障壁を展開し、それを防いぐ。
「念動力とは、シンプルな異能だ。使用者次第で応用性が広がるね」
念動力を大砲のように押し固め、放つ。蓮華が即興で思いついたこれは思いのほか役立つ。だが、決定打足りえなかった。
だから蓮華は次の手札を切る事にした。
「我は敵を討つ神具を造りし鍛造者!炉に鋼を投じ、打ち、鍛え、敵を討つ刃を鍛造する者!」
聖句が発せられると同時に炎の球が現れ、それが渦を巻いていく。触れればその身を溶かすほど熱さのそれに、蓮華は懐から取り出した玉鋼を投じる。
「求め、造りしは鋭利なる刃。眼前の敵を斬る一振りの刀!」
するとすぐさま玉鋼に変化が起き、一振りの刀となり蓮華の手に飛んで行く。
蓮華が最初に殺した神ヘーパイストスから簒奪した権能は神具を造る権能。蓮華がイメージする形から様々なモノを作り出す権能。
後に賢人議会から『神具鍛造(エンシェント・スミス)』と呼ばれる権能だ。
飛んできた刀を掴んだと同時に蓮華は一気に桜華に迫る。
「地帝乱柱」
「ッ!」
しかし眼前に土の柱が現れ蓮華の動きを僅かに止め、その隙に周りに柱が次々と現れ動きを止めた。
―三式__月乃輪―
蓮華は体を独楽のように回し動きを止めていた柱を全て斬った。
「やるね」
舌打ちをしたくなるのを我慢し、思考を巡らせる。
未来視の魔眼により、一瞬先の未来を視る事で桜華は、どの場所に、どんなタイミングで、何処に何が来るかが分かっている。それは戦闘におけるアドバンテージだ。
さらに物理的に作用する地系統の術を使い、直接の対象とするのではなく、間接的に術の効果を与える。
そして、桜華の使う術式。術式自体は見たことのあるものが在るが、理解しきれない。混ぜすぎた結果というが、混ざりすぎて訳分からん。
どうする?
後書き
さて、言い訳をさせてもらうなら、リアルが忙しかったり、書いては消してを繰り返したり、スランプ状態に陥ったりという理由で更新が遅れました。それに他にも何か書こうかなと思ったりしていたり。
ま、それは置いておいて、更新が今後もかなり遅れます。流石に一年空けることは無いかと思いますが、その時は忙しいんだなと思ってください。ではでは、何時に成るかわからない次回で会いましょう。言うまでもないが、
未成年の飲酒は駄目だぞ。
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