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久遠の神話

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第八十三話 権力者その十二

「もうな」
『そうでしょうか』
「気をつけることだ、因果は大き過ぎるとその持ち主を飲み込み動かしていく」
 声の心の中を見つつだ、権藤は言うのだった。
「そうなっては自分で動いていると思っていてもだ」
『その因果にですか』
「動かされていることになる」
『自分ではなく』
「人は自分で動かなければだ」
 そうしなければというのだ。
「それが落とし穴になる」
『意味の深いお言葉ですね』
「そうした人間は今まで生きてきて何人か見てきた」
 彼の人生経験からの言葉だった、それ故に確かに言えるのだ。
「貴女もそう思えてきた」
『そうなのですね』
「気をつけることだ」
 またこう告げた権藤だった。
「因果は怪物にもなるからな」
『私が出す怪物達とはまた別のですね』
「心の怪物だ」
 因果はそれにもなるというのだ。
「それになる」
『心の』
「貴女も見てきた筈だ」
 その心の怪物をというのだ。
「必ずだ」
『心の恐ろしさは私も』
 声もだった、そうしたことについては心当たりがあり言えた。
『知っていますが』
「これは自分自身も気付かないうちにだ」
 まさにだ、何時の間にかというのだ。
「取り込むものだ」
『自分自身を』
「本当に気をつけることだ」
 明らかな忠告だった、それを言ったのである。
「お節介だろうがな」
『貴方の仰る意味が』 
 まだだった、声はこう言うのだった。
『どうもわからないので』
「私の今の言葉はか」
『はい、お節介とも』
 思えないというのだ。
『それでは』
「また、か」
『お会いできれば』
 こう言ってその場から気配を消したのだった、そうして。
 権藤は一人に戻った、そしてこう呟いた。
「神も人も心はある、心があればそれにより苦しむこともある」
 こう呟いたのである。
「実に厄介なことだな」
 こう言ってだった、そして。
 人を呼んだ、そのうえでこうその者に問うた。
「明日の会議だが」
「はい、そのことですね」
「業績のことだな」
「新規の」
「その話についてだが」
 仕事の話をしてそしてだった、日常に戻った。そのうえでその時に備えるのだった。


第八十三話   完


                        2013・9・24
 
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