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久遠の神話

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第七十九話 次期大統領としてその十二

『決して』
「戦いを続けられるというのですね」
『あと少しです』
 だからだというのだ。
『ですから』
「この方を戦わせて」
『そしてせめて』
 スペンサーは戦いを降りることを決意しているのだ、声にもそれを止めることは出来ない。しかしそれでもだというのだ。
『戦いで発散される力だけでも』
「手に入れられるおつもりですか」
『私には力が必要なのです』
 だからだ、どうしてもだというのだ。
『最後の一戦だけでも』
「そこまでしてなのですか」
『私のことは貴女が一番ご存知ですね』
「それは」
『長い間共にいたからこそ』
 まるで実の姉妹の様にだ、だからこそだというのだ。
『貴女は私のことを知っている筈です』
「諦めるこのとない方です」
『そうです、ですから』
 今もだ、それが為だというのだ。
 声、セレネーはスペンサーを戦わせとうというのだ。そしてそこから発散される力を手に入れようというのである。
 聡美は声からそのことを告げられてだ、スペンサーに対して言った。
「この戦いは」
「する必要がないというのですね」
「はい」
 そうだというのだ。
「ですから」
「私が今ここで剣を置けばですね」
「もうそれで終わりです」
「そうですか」
「ですから」
 戦いから降りろとだ、聡美はスペンサーに言うのだ。
 しかしだ、スペンサーはというと。
 彼は落ち着いた声でだ、こう聡美に返した。
「それが一番賢明ですね」
「はい、その通りです」
「私が今ここで剣を置けば全ては終わりです」
 彼の戦い、それはというのだ。
 しかしだ、スペンサーは穏やかな笑みでこう聡美に言うのだ。
「ですがどうもです」
「まさか」
「そのまさかです、無益な戦いはしない主義ですが」
 それでもだというのだ。
「最後の最後で戦わなくては」
「収まらないというのですか」
「その様です、どうやら剣士は最後に一戦交えないと降りられないのかも知れません」
「そうしたルールはないですが」
 聡美はこの戦いのことを知っている、そうしたルールがないことも既に知っている。それでこうスペンサーに答えたのだ。
「ですから今すぐに」
「いえ、やはり」
「それでもですか」
「若しこの怪物を私が倒さなければどうなるか」
『他の剣士にあてるだけです』
 声はこのことについては素っ気なく答えた。
『ただそれだけです』
「他人に責任を押し付けるという形ですか」
『そうした考えにもなりますね』
「そうしたことは好きではありません」
 真面目な軍人であるスペンサーらしい返答だった。
「それでは余計にです」
『では』
「貴女に力をお与えするつもりはありませんが」 
 それでもだというのだ、それで。 
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