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久遠の神話

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第七十六話 富を求めるならその十一

「謀略も何でも必要だ」
「現実は綺麗なものばかりじゃないからね」
「そうだ、時にはこうしたことも必要だからな」
「その相手はだね」
「少ないに限る」
 好まないことをするには出来る限りしないというのだ。
「だから君が戦いを降りるならな」
「歓迎してくれるんだね」
「そうさせてもらう」
 言葉には出さないが喜んで、というのだ。
「私にしてもな」
「それは有り難いね、じゃあ今はね」
「帰るといい、私は戦いが降りる相手には何もしない」
 倒すべき相手ではないからだ、それでだというのだ。
「去るのだな」
「そうさせてもらうよ」
「では今度会う時はな」
「もう敵味方じゃないね」
「敵でもないが味方でもないな」
 そのどちらでもないというのだ。
「知り合いかも知れないがな」
「それでもな」
「ああ、それじゃあな」
 こう話してそしてだった、二人は別れ。
 王は自分の店に戻った、そして仕事にも戻った。
 聡美は王が去ったのを見届けてから智子と豊香にこう言った。
「これで一人の剣士がまた戦いから降りれば」
「いいことね」
「また一つ戦いが終わることに近付きますから」
 智子と豊香もこう二人に返す。
「あの人には是非ね」
「勝ってもらいましょう」
「戦いから降りるのなら」
 聡美は言う。
「勝ったうえでそうして欲しいですね」
「ええ、負けても降りられるけれど」
「それでもですね」
「勝って降りることが彼等にとっての望みですから」
 その望みも適えるというのだ。
「そうしたいですから」
「私達はね」
 智子もここで言った、自分達の考えを。
「悪意ではなく善意で動くから」
「善神であるが故に」
「その為ですね」
「そうよ、だからね」
 それでだというのだった、そうして。
「願いを適えて欲しいのよ」
「そうなりますね」
「神にも善意と悪意があります」
 程度の差こそあれどちらも持っている、特にギリシアの神々は人間的な性格を持っていることで知られている。 
「そして私達は」
「善意の方が強いですね」
「そうですね」
 聡美も豊香も智子の言葉に応える。
「だからこそ善神ですね」
「そうなりますね」
「それは貴女の夫君でもある」
 智子は豊香を見た、ペルセポネーである彼女を。
「そうですね」
「はい、あの人もです」
 豊香も彼女の夫のことについて話す。
「決して邪悪な方ではないです」
「そこがよく誤解されているけれど」
「冥界の主神です」
 それがハーデスだ、そこから冥界のあらゆるものを統べているのだ。
「ただそれだけなのですが」
「ハーデス叔父様はくじの結果冥界の神になられたわ」
 智子も彼のことをここで話す。
「けれどそれはね」
「若しくじの結果が違えば」
「ええ、父様jかポセイドン叔父様がね」
 冥界の主神になっていたかも知れないのだ、ゼウスが海神になることもポセイドンが天界の神になる可能性もあったのだ、無論ハーデスもどちらかの世界になった可能性があるのだ。 
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