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モダンな悪魔

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第二章

 そのうえでだ、こう言うのだ。
「おい、俺を呼んだのはあんた達かい?」
「あんた誰だよ」
 クラウスはそのラッパーを見てすぐにこう言い返した。
「やけに明るいな」
「明るくて悪いかい?」
「一応聞くがあんた悪魔だな」
「そうだぜ、俺の名前はイグナギウスっていうんだよ」
「イグナギウスか」
「ああ、ベリアル様配下のな」
 悪魔は自分の仕える魔王の名前も出した。
「知ってるよな、ベリアル様は」
「まあな、有名な悪魔だからな」
「ソロモン王と関係あったよな」
「ソドムとかゴモラともな」
「日本から来たゲームにも出てたしな」
「そうだよ、俺はそのベリアル様直属の部下の一人なんだよ」
 そうだとだ、こう言う悪魔だった。
「その俺に何か用かい?」
「今の悪魔がどんなのか見たくて呼んだんだけれどな」
「何だよ、随分軽い用件だな」
「まあな、しかしあんた何かな」
「どうだい?このファッション。いかすだろう?」
「全然悪魔に見えないな」
 クラウスは心の底から疑う目その悪魔イグナギウスに返した。
「何者なんだよ」
「何者も何もな」
「悪魔だっていうんだな」
「そうだよ、魔法陣から出て来たからわかるだろう」
「わからないよ、そのまま街に出てもな」
 普通のニューヨーカーに見えるというのだ。
「何処からどう見てもな」
「そうかい?じゃあ街に出てみるかい?」
 イグナギウスは陽気にラップダンスを踊りながら言う。
「そうすれば俺が悪魔だってわかるだろう」
「何処からどう見てもラッパーだよ」
「ニューヨークに何処でもいるな」
「というかあんたみたいな格好うちの学校でも普通だから」
「ちょっと歳食ってるだけでな」
「ヤンキースの帽子といいな」
「ルースが大好きだったんだよ」
 ヤンキースでも活躍していたのだ、尚ヤンキースというとアンチが多いことでも知られている。
「それでこの帽子だけれどな」
「そこでルースかよ」
「スタインブレナー地獄に落ちろとかじゃないんだな」
 スタインブレナーが嫌いな人間の言葉だ。
「とにかくな、あんたのその外見はな」
「ちょっと以上に悪魔に見えないな」
「というか自分で言ってもな」
「信じられないな」
「やれやれだな」
 イグナギウスは少年達の言葉に肩を竦めさせる、そして言うのだった。
「じゃあ街で俺が悪魔だって証拠を見せるぜ」
「ああ、それじゃあな」
「今から街に出るからそういうの見せてくれよ」
「頼むぜ」
「契約成立だな。契約の報酬は」 
 少年達は悪魔の言葉に魂となると思った、だが。
 イグナギウスはアフリカ系の少年が持っている肉の塊を見た、そのうえでこう言った。
「それでいいぜ」
「最初から貢物で持って来たんだけれど」
「俺ステーキが好きなんだよ」
 ここで悪魔らしくない言葉だった。
「それもでかいのがな、だからな」
「じゃあこれでいいんだね」
「ああ、軽い契約だしな」
 魂やそうしたものを要求する程のものではないというのだ。
「だからな」
「そうなんだ、それじゃあ」
「足らないと街でアイスでも買ってもらうからな」
 やはり契約の報酬としてだ。 
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