ドリトル先生学校に行く
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第一幕 充実している学園その九
「日本語もこのコツを使って覚えましたし」
「そういえば先生の日本語お上手ですね」
「凄く流暢ですよ」
学生さん達も紅茶をご馳走になりながら先生の日本語について応えます。
「イギリス訛りがあまりないですし」
「言葉の使い方も」
「日本語をよくご存知ですね」
「僕達が知らない言葉まで」
そのことが凄いというのです。
「素晴らしいですね」
「いや、本当に」
「有り難うございます」
先生は学生さん達の言葉に穏やかな笑顔で応えます。
「これからも日本語を勉強していきますので」
「古典とか読まれますか?」
学生さんの一人が先生に右手を挙げて尋ねてきました。
「そういう本は」
「古典ですか」
「源氏物語とか平家物語は」
「源氏物語は恋愛小説でしたね」
先生は源氏物語と聞いてこう言いました。
「そうでしたね」
「はい、そうなりますね」
学生さんも源氏物語についてはこう言います。
「学校の授業でも勉強しますが」
「英語訳されているものを読んだことがあります」
「日本語ではないのですか」
「源氏物語を読んだのは学生の頃です」
先生は若き日に読んでいたのです、源氏物語を。
「中々面白かったです」
「そうですか」
「あの主人公の様にはとてもなれませんが」
「光源氏ですね」
「凄いですね、あの主人公は」
先生は源氏の君については苦笑いを浮かべて言います。
「綺麗な人と次々にですから」
「そうですね、言われてみれば」
「光源氏は凄いですよね」
「とにかく美人といつもですから」
「恋仲になっていって」
「あんなことはとても無理です」
またこう言う先生でした。
「あの主人公の様にはなれないです」
「先生にはですか」
「とてもですか」
「はい、とてもです」
無理だというのです。
「あの人の様には生きられません」
「ううん、確かに凄いですし」
「あんな風にはなれませんね」
「修羅場もありますし」
「生霊も出てきたりして」
「僕にとっては恋愛はとても難しい問題です」
先生は女の人に対してはとても奥手です、紳士でありますがそれでもまだ独身であることにはこのことに理由があります。
「とてもあんな風には絶対」
「いや、あの人は普通じゃないですから」
「普通の人じゃないですよ」
「小説の主人公ですから」
「実在人物じゃないです」
「そうですね、最後は悲しいですし」
先生は源氏の君の晩年については寂しい顔でお話しました。
「そしてその続編も」
「宇治十帖ですね」
「あちらですね」
「あれは悲しい作品ですね」
こう言うのでした、源氏物語の後半やその息子薫のお話については。
「最後まで読むと」
「ううん、最後まで読まれるとは」
「先生は凄いですね」
「日本人でもそんなにいないですよ」
「あの本を最後まで読んだ人も」
「そうなんですか」
先生は日本人の中でも源氏物語を最後まで読んだ人が少ないと聞いて意外なお顔になりました、そのうえで言うのでした。
「日本人なら沢山の人が読んでいると思っていましたが」
「いや、古典ですから」
「文章が昔のものですから」
学生さん達は読んでいるかどうかについては苦笑いをしてこう言いました。
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