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久遠の神話

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第七十話 富と地と名とその一

                  久遠の神話
              第七十話  富と地と名と
 高代は上城と共に学園の中庭のベンチに座っていた、そのうえで彼と二柱の女神達の話を聞いた。
 それからだ、彼は上城にこう言った。
「学園を開くにはです」
「ただお金があるだけではですか」
「はい、出来ません」
 この現実を話すのだった。
「それが出来るにはです」
「学校の場所も必要ですね」
「それに加えまして」
 高代は上城にさらに話す。
「名声も必要です」
「評判ですか」
「人は何も知らない人のところには行きません」
 無名の人物、その者のところにはというのだ。
「名声、それもよいものがある人のところにです」
「人は行くからですか」
「はい、だからです」
 それ故にだ、名声は必要だというのだ。
「人が来てくれる為には」
「人、ですか」
「だから私にはそういったものが必要なので」
 戦う、その道を選んだというのだ。
「そういうことです」
「そうですか」
「その為には」
 上城を見た、そして言うことは。
「君もです」
「倒すっていうんですね」
「勿論私を倒しても構いません」
「倒し、倒されるですか」
「それが剣士ですから」
「倒されてもいいんですか?」
 上城は高代の今の言葉に問うた、言葉のその部分にだ。
「先生がそうなっても」
「倒されることは絶対に」
 高代は上城の問いにこう返した。
「倒します、私は」
「じゃあどうして今そんなことを」
「やはり。本音では」
 強い言葉から穏やかな言葉に変わった、それでまた上城に言ったのである。
「私は戦いたくないと思っているからでしょうね」
「だから倒されるともですか」
「わかっているのです、若し生き残っても」
 剣士の戦いに生き残る、そうなってもだというのだ。
「私の手は血に塗れます」
「剣士達の血で」
 勿論その中には上城もいる、教え子もそこにいるのだ。
「そうなることがですね」
「間違っています、それで困っている子供達を救えたとしても」
「間違っていますか」
「そうです、わかっています」
 高代はそうしたことがわからない人間ではない、はっきりとわかっているのだ。
 だからわかっているからだ、彼はそうも言うのだ。
「だから倒されることもです」
「考えるのですね」
「若し自分が完全に正しいと思っているのなら」
 その時はというのだ。
「私は倒されることは考えないでしょう」
「若し倒されれば」
「私の過ちを止めてもらえます」
 倒される、それによってだというのだ。
「そうしてもらえます」
「だからですか」
「それを期待してもいるのでしょう」
「他の剣士の人達に倒されて止まることもですか」
「はい、期待しているのでしょう」
 そうだというのだ。
「私自身も」
「けれど先生御自身では」
「私が止められる程私は強くはないです」
 自分で自分は、だというのだ。 
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