『八神はやて』は舞い降りた
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第1章 悪魔のような聖女のような悪魔
第9話 旅は道連れ世は情け容赦してくれない
前書き
・ガールズラブ、ボーイズラブはありません。
バイサーを倒した翌日。
兵藤一誠は、木場祐斗、八神はやての傍にいた。
約束通りオカルト研の部室で、昨日の説明してもらうために、だ。
ところが――
放課後の教室は異様な熱気に包まれていた
(……どうしてこうなった!?)
◆
話は少し前にさかのぼる。
帰りのHR(ホームルーム)が終わり、クラスメイトたちは、そそくさと席から離れていこうとする。
その最中、廊下から呼び声がかかった。
どうやら、先にHRが終わっていたようで、彼は教室の扉の前で待っていたらしい。
とくに、珍しい光景ではなかったといえる。ありふれた日常だ。
「やあ、二人とも。待っていたよ」
その声の主が、女生徒に人気のイケメン男子でなければだが。
しかも、声がかかった人物も大問題だった。
なにせ、駒王学園の三大お姉さまとして名高い女生徒と、悪名高い変態だったのだから。
浮いた噂を聞かない美男美女の二人に、変態を加えた3人組。
奇妙な組合せを前にして、クラスメイトたちが面喰らうのも仕方がないといえよう。
木場祐斗は、その容姿や言動から、クール系なイケメンとして女生徒に支持されている。
しかしながら、女性に興味を示さないとして有名だった。数多の女生徒が撃沈している。
イケメン王子である。
八神はやては、三大お姉さまの一人である。
ボーイッシュな性格、女性に優しく、凛々しい姿。
一部の百合百合しい女生徒に熱狂的な信者をもつのも道理だろう。
さらに、男性に興味がない、と本人が公言している。
とはいえ、特定の女生徒と親しいわけでもなかった。
兵藤一誠は、エロ魔人であり、変態として、女生徒から嫌悪されている。
おっぱい紳士を自称するオープンな変態である。
男子生徒には妙な人望があるが、女生徒からは、倦厭されていた。
つい先日も、他校の女子に告白されたと騒いでいたが、振られたと噂されていた。
――――最近、木場祐斗と兵藤一誠が一緒にいる姿が、よく目撃されるようになったらしい
掛け算好きな女生徒の間では、攻守のポジションについて、熱い議論が交わされている。
なお、木場祐斗は、寒気を感じるようになったという。
その話題の人物たちが、ボーイッシュな性格で有名なお姉さまと接触した。
しかも、イケメン王子こと木場祐斗が、女生徒の帰りを待つなど、入学以来初めてに違いない。
変態紳士こと兵藤一誠にしても、八神はやてはからは、避けられている節があった。
三大お姉さまこと八神はやてに至っては、いつも女生徒に囲まれ、木場祐斗と兵藤一誠とは、絡みが一切ない。
実は、接点がない理由は、原作への影響を恐れて、木場祐斗や兵藤一誠といった原作キャラとの接触を、八神はやてが、控えていたことに起因している。
だが、周囲からは、「面識のない男女3人が、急にお近づきになった」という事実しか分からない。
以上が、教室で渦巻く異様な熱気の正体である。
「ここは『今来たところだよ』というのが、男子のあるべき姿ではないかな?」
「それはすまなかった。僕はそういった男女の機微には疎いものだからね」
他人なんて知ったことねえ、と無視しているのか。
あるいは、注目をうけることに慣れているのか。
廊下で待つイケメン男子こと木場祐斗。彼と相対する三大お姉さまこと八神はやて。
お似合い――――ルックスや学内の評判という意味で――――の二人は、気にした様子もなく会話を続ける。
そんな彼らの傍らで、変態こと兵藤一誠は、周囲から向けられる好奇の視線にさらされ戦慄していた。
事情を知らぬ人間がみれば、なんとも不可思議な光景だった。
「ふむ。ならば、なぜ迎えに来たんだい?それともまさかデートのお誘いなどと、言い出さないだろうね?」
「面白いことを言うね。もし、ここで『実は、デートの誘いに来た』といったら、どうするつもりだい?」
――――なぜ、平気な顔をしながら、地雷のような会話にいそしむことが出来るのか
兵藤一誠としては、すぐさまオカルト研の部室に向かいたいところだった。
だがしかし、せめて要らぬ誤解や邪推をなんとかしないと、大変なことになるだろう――――主に彼自身が。
教室には緊迫した空気が漂っている。
誰もかれもが疑問をもてど、とても口を挟める状況ではない。
必然的に、皆が彼らの会話に意識を集中することになる。
「兵藤くんと三人でデートかい?なんとも、不健全なお付き合いだな。兵藤くんはどう思う?」
(おい、なんてこと言いだすんだ!)
今の今まで、除け者にされていたはずなのに、最悪のタイミングで話題を振られて固まる。
彼は、いつもの明るさが見る影もなく冷や汗をかいていた。
クラスメイトたちから向けられる、様々な感情――――興味、嫉妬、敵意など――――は、見えない重荷となって、彼を押し潰さんとしている。
特に、エロ仲間たちからの視線は、憎悪どころか殺意まで感じられるありさまだった。
「い、いやあそうですネ。八神さんのような女性なら大歓迎デスヨ?」
彼は、無難に返答した――つもりだが、まったく状況は好転していない。
とにかく、居心地の悪さをどうにかしてほしい気持ちで一杯だった。
「そうかい?まあ、冗談は置いといて――」
(ってオイ、冗談なのかよ!?)
「――木場くんが、誘いに来るとはね。グレモリー先輩に気を使わせてしまったかな?」
「ああ。一応、旧校舎は一般生徒が立ち入りできないからね。僕が案内役を仰せつかったのさ」
「なるほどね。では、喜んでエスコートされるとしようか。だが、兵藤くんについていけば、済む話ではないかな?」
「僕もそう言ったんだけどね。部長曰く『ゴシップを避けるために必要な措置』らしい」
ゴシップを避けるためのはずが、ゴシップをつくっている。
実は、この事態をリアス・グレモリーは想定していた。
兵藤一誠に対するちょっとしたいたずらのつもりだった。
確信犯である。
彼が、なんとか弁明しようにも、雰囲気が許してくれそうにない。
彼にできることはただ、嵐が過ぎ去ることを祈りながら、待つだけであった。
普段ならば、美人と会話する木場に対して呪詛の一つでも送るところだったが。
『グレモリー先輩に頼まれた木場裕斗が、兵藤一誠と八神はやてを迎えに来た』
すでに、事実が明らかになっているにも関わらず、好奇の視線は霧散しない。
滅多にない組み合わせに興味津津なのだ。
(い、生きた心地がしねえッ…!)
「――なるほど。確かに得心がいったよ。現に、クラスメイト達は噂話に忙しいようだしね」
「オカルト研究会の部室に誘うだけだと言うのに、大げさすぎるとは思うけどね」
「まあ、ゴシップ云々を置いておいても、キミがボクを誘う構図は、とても珍しい。仕方ないさ」
「そうかもね――」
その後、しばしの間、歓談する二人。
ときおり、兵藤一誠のほうにも話題が振られるが、彼は生返事しかできなかった。
なんというか、もういっぱいいっぱいだった。
盛り上がる二人の会話。
比例して高まる教室の緊張。
それぞれが、ピークに達したそのとき――――
「――おっと、少々話し込んでしまったようだ。早く行こう。ついてきてくれ」
「ああ。キミとの会話はなかなか楽しかった。つい話し込んでしまったよ。兵藤くんには、すまないことをした」
「い、いや、いいんだ。八神さんと俺は、グレモリー先輩に頼まれた木場に迎えに来てもらった『だけ』なんだからな!!」
渦中の一人、兵藤一誠は、ようやく解放されると喜んだ。
と同時に、釘をさす発言も忘れない。
かくして、残念そうな、安心したような、ゆるんだ空気が教室を漂う。
ようやく彼は安堵することが出来たのであった。
(ハーレムを目指すなら、これくらいの注目は流せるようにならないとな。嫉妬されるのは間違いないだろうし)
なんだかんだで、平常運転な彼だった。
少々の苦難では、へこたれない姿は、まさに「漢」であった。
とは、クラスメイトの一人(変態)が後にした証言である。
後書き
・この作品はエロ控えめです。
・安藤さんのハイスクールD×D二次創作「Irregular World」リスペクトです。ISSEIさんマジかっけー。
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