『八神はやて』は舞い降りた
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序章 手を取り合って
第2話 最初の願い≠最期の願い
前書き
序章は説明回になります。
結構くどいかもしれませんが、大事な部分なので。
『あしたは、僕の9歳の誕生日。
お父さんと、久しぶりに、朝早くからお出かけして、
夜は一緒にケーキを食べる約束をしました。
明日が早くこないかな。
あと、きれいな青い石をいっぱい河原で拾いました。
お誕生会で、見せようと思います。
みんなびっくりしてくれるかな』
(「199X年6月3日」誰かの日記帳より)
◇
「テートリヒ・シュラアアーク!」
「えぶっ」
ハンマーをたたきつけられ吹き飛ばされる。
「勝者、ヴィータ」
「ぐ、うう、結構自信あったのになあ」
ジャッジ役のシグナムがヴィータの勝利を宣言する。
昨日の宣言通りヴィータと模擬戦をした。
が、見事に敗北。
シグナムに勝利して天狗になりかけていたボクの鼻っ面はへし折られてしまった。
開始と同時に接近戦闘を仕掛けたが、意表をつけなかったのが敗因だろう。
「ま、筋はよかったぜ」
ねぎらいの言葉をかけてくれるヴィータ。
フォローを忘れない姿は、さすが姉御といったところ。
ロリ姉御。これがギャップ萌えというやつか……!
「おいはやて、何か失礼なことを考えてないか?」
思っていませんよ。
ヴィータ姉はかわいいな、と思っただけ。
よせやい、と照れるヴィータ。かわいいやつめ。
などと益体もないことを考えながら、反省会を開く。
彼女たちと出会ってから真面目に続けてきただけあって、慣れたものだ。
本気で身体強化すれば、実は、ボクが一番強かったりするのだが、技量は大事だからね。
その後、皆で夕飯を食べて、お風呂に入って寝る。
あ、ザッフィーの散歩を忘れていた。
大人しい――――理性をもっているのだから当然だが――――ザフィーラは、ご近所の人気者なのだ。
彼もまんざらでもないのか、いつも嬉しそうに尻尾をふりふりしている。
それでいいのか盾の守護獣。
繰り返されてきた日常。この日常がずっと続くんだと思っていた。
◇
――――5歳くらいだっただろうか。
頭のなかに「誰かの記憶」が湧いて出てくることに気付いたのは。
その記憶を思い出そうとすると、頭にもやがかかったようになって、顔も名前も家族も個人情報に関する全てを――うまく思い出せない。
その癖、知らない知識が泉のように湧いて出てくる。
知識の使い方や、知識を得る方法など色々なことが「わかった」。
普通、いきなり他人の記憶をみせられたら混乱すると思うが、なぜだか「当たり前のように」馴染むのだ。
まるで、前から知っていたかのように、平然としていた。
戸惑いつつも、とくに気にせず平然と過ごしていた。
今思えば、ずいぶんのんびりとした性格だったと苦笑してしまう。
知らない知識は、一度に全てが蘇るわけではなく、断片的にゆっくりと浮かび上がってきた。
これも、頭が混乱しなかった理由だと思われる。
おかげで、「僕」は、周りから「ちょっと大人びた子ども」と認識され、自由に振る舞うことが出来た。
成長してからは、これは前世の記憶ではないか、と考えるようになった。
ただ、困ったこともあった。
「前世の僕」は、「俺」という言葉を使っていたようで、前世の知識を使って考え事をしているときは、つい「俺」口調になってしまう。
調子にのって、俺俺言いまくっていたら、父に泣かれたので、なんとか改めたが、それでも、思考は、男性寄りで「俺」だった。
きっと「前世の僕」は、男だったのだろう――当時は、そう思っていた。
――――おかげさまで、身体とのギャップには、なかなか慣れることが出来なかった。
(割り切った今でも、たまに戸惑うことがあるしね)
困りごとは、もうひとつある。
「僕」はなんと、複数の物事を同時に処理することができた。
至極自然とできていたために当時は気づかなかったが、異常な才能だったと、今なら分かる。
複数の物事を並列して処理する――マルチタスクというらしい――とき、「僕」ではなく、「わたし」で考えることが多かった。
ちなみに、前世の知識と併用する場合、「俺」と「わたし」の両方を使っていた。
さらに、マルチタスクを利用することで、コンピューターもびっくりの演算速度を誇るようになった。まさに、電卓要らず。
マルチタスクを頻繁に利用するようになってから、気づいたことがある。
どうも、体内に宿る「不思議エネルギー」を操作しているようだった。
一度、意識してしまえば、体内の「不思議エネルギー」をはっきりと認識することができた。
どうやら、心臓あたりに、動力機関?――後に、「リンカーコア」だと判明した――があって「不思議エネルギー」を放出しているようだった。
この「不思議エネルギー」は、大気中に微量に含まれているものの、他の人間は、一切保有していなかった。
当然、リンカーコアは、体内に存在すらしていない。
探究心を刺激されたが、所詮年齢一桁の幼女にできることは高が知れていた。
性質も、運用法も謎だらけである。
将来、必ず解明してみせる。と、闘志を燃やしつつも、「不思議エネルギー」が、マルチタスクの補助を行っていることしか分わからなかった。
大変悔しい思いをしたものだ。
しかしながら、望まずとも非日常と邂逅することで、「魔力」「魔力素」と呼称されるエネルギーだと判明することになる。
「わたし」と言う分には、「僕」と「わたし」のどちらを使うのか迷っているのねぇ、と、父には微笑ましく思われていたようだ。
そんなこんなで、「僕」「俺」「わたし」の境はとても曖昧だった。
複数の人格が存在するわけでもなく、頭を切り替えるときに自然と口調が変わってしまう程度。
日常生活において特に支障はなかった――と思う。
――――前世の知識とやらは便利なものだ。
それが、当時の「僕」の認識だった。
あの日までは、そう思っていたのだ。
(なぜ、いままで忘れていたのだろうな)
思い出したときには、もう遅かった。
なにもかも、終わった後だった。
これはもっと後の未来の話。
何もかもが手遅れになったときの話。
救いがあるとしたら、それは――。
◇
ぱちりと目が覚める。
ふわあ、とあくびをしながら、ベッドから身を起した。
何か悪い夢をみていたような気がする。
思いだそうとしても何も思い出せない。
ふと、頭をよぎったのは9つの青い石。
あれは一体――と思い出そうとすると頭が痛くなった。
「マスター、お目覚めですか?」
声をしたほうをみやると、そこにいたのはリインフォース。
そう、リインフォースがいた。
アニメ作品「魔法少女リリカルなのは」では、リインフォースは、消滅してしまう。
が、こうして目の前にリインフォースがいる。
彼女もボクの大切な家族である。
「顔色が優れないようですが、大丈夫ですか」
「大丈夫、夢見が悪かっただけ。おはよう、リインフォース」
心配そうに体調を訪ねてくる。
細かな気配りができて、家事全般を任せられるリインフォースは、八神家のお母さん的存在だと、勝手に思っている。
ちなみに、家事はリインフォースとボクで分担している。
他の家族に任せると、まあ、大惨事になったからねえ。
ヴォルケンズは戦闘では頼りになるが、家事はだめだめだった。
シグナムが掃除すれば、家の中が滅茶苦茶になり。
ヴィータが洗濯すれば、制服がしわしわになり。
シャマルが料理すれば、毒物が出来上がる。
ザフィーラは、まあ、ペットだし。
戦闘ではあんなに便りになるのに……マジ脳筋。
ヴォルケンズ――ヴォルケンリッター、日本語に訳すと雲の騎士。
実は、彼女たちは、人間ではない。
過去の文明の遺品――すなわちロストロギア――の『夜天の書』に付属した守護騎士であり、プログラムである。
リインフォースは彼らを統括する管制人格という存在だ。
人間ではないとはいえ、ボクは彼女たちを本当の家族だと思っている。
夜天の書については、また後で。
説明すると長くなる。
家事については、何度言っても同じ失敗をするダメな子たちだが、わざとではないらしい。
一向に改善が見られないので、ひょっとすると、そのようにプログラムされているからなのかもしれない――とは本人たちの談である。
本当かどうかは知らない。
八神家には、ボクを含めて6人の家族が住んでいる。
ボクこと八神はやて。
ヴォルケンリッターのシグナム、ヴィータ、ザフィーラ、シャマル。
管制人格のリインフォース。
両親は既に他界している。
けれども、頼もしい家族とともに支え合って生きてきた。
顔を洗い、眠気を払ってから、身支度を整え、鏡の前に出る。
その姿は――駒王学園の女子制服を着た八神はやての姿だった。
ボクが住んでいる町の名前は「駒王町」という。
――――ピンと来た方、ご想像の通りだと思う。
この世界は、なんと「ハイスクールD×D」という作品の世界である可能性が高い。
なぜリリカルなのはの八神はやてとして生まれたのかは謎である。
調べてみると「海鳴市」は存在しなかった。
クロス作品でもないらしい。
「神様転生」「オリ主」「TS」というキーワードが、瞬時に思い浮かぶ。
とにもかくにも、今日から晴れて女子高生。ぴっちぴちの1年生である。
そして、物語の舞台『駒王学園』に進学することになる。
ボクは兵藤一誠と同学年――つまり、原作という名の物語が始まるまで、あと1年。
後書き
主人公は八神はやて。
Strikersの姿とほぼ同じです。
二次創作が好きというどうでもいい設定があります。
どじっこなヴォルケンズ。
うっかりシャマルは、オチ担当。
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