FAIRY TAIL 真魂の鼠
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第十四話 『生命』=『生命』
前書き
こんにちは~♪07でぇ~す♪
今回は遂に妖精の尻尾の魔道士全員に自分の正体の事を明かす事が出来たシン。だが、その直後にマスターから名前も顔も知らない自分が生まれる前にすでに他界している父親、シグレ・バンギの事を聞かされた。それを確かめる為、一度も父親の事を話してくれなかった母親のリャナ・バンギがいるリンドウ村に帰還する事にした。果たして、父親の『真実』とはいったい・・・!?
シン目線で書いていきます。
それでは、第十四話・・・どうぞ~♪
ガタンゴトンガタンゴトンガタンゴトンガタンゴトン・・・シュポーーーーーーーーーーッ!!!
俺は列車で約七時間掛けて、自分の故郷であるリンドウ村を目指していた。今回は以前みたいに最強チームはいない。一人でマスターから貰った写真だけを握り締めて飛び出して来たからな。俺はずっと握り締めていた写真を見る。強く握り締めていたせいか、しわくちゃになっている。写真では若い頃のマスターと、誰か分からない人と、父さんが写っている。
マ『お前の父親、シグレ・バンギは、元妖精の尻尾の魔道士じゃ。』
マスターの言葉が脳裏に浮かぶ。
母『世の中には知らない方が良い事もあるのよ。』
母さんの言葉が脳裏に浮かぶ。
なぜ、母さんは父さんの事を話してくれなかったんだ?
なぜ、父さんは妖精の尻尾に加入したんだ?
なぜ、父さんはギルドに数ヶ月間しかいなかったんだ?
一つの疑問が不思議に思うと更に不思議に思う疑問が増えてくる。俺は頭をフル回転させて疑問の答えを探してみたが、全く解決しなかった。
シ「いったい、何なんだよ・・・!」
『えー、次はー、リンドウ村ー、リンドウ村ー。』
考えているうちに、いつの間にか七時間経っていて、列車もリンドウ村の小さな駅に着いていた。俺はたくさんの疑問を抱えながら列車を降りた。
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リンドウ村に着いた時にはすでに空が茜色に染まっていた。家々には明かりが灯り、夕飯のにおいが漂う。都会では感じる事が出来ない田舎の懐かしさだ。誰もいない畑と畑の間を通り、自分の我が家に向かって歩き続ける。俺の前を黒い影が歩く。自分の影を見ながら歩いていた為、気づいたら我が家が目の前だった。俺は握っていた写真をズボンのポケットに押し込むと、ドアを叩いた。
母「開いてますよぉ~。」
中から呑気な母さんの声がした。俺はガラガラとドアを開ける。まず目に飛び込んだ情景は、俺を見てテーブルを拭いたまま一時停止状態の目を見開いた母さんだった。相変わらず、いつもの薄汚れたピンク色のエプロンを着ている。母さんは数回瞬きをして微笑むと、
母「お帰り、シン。」
と言って笑った。その後母さんは急いで台所へ飛んで行き、俺の夕飯の支度をした。献立は、筍と茸と野菜の炊き込みご飯と、焼き魚と、豆腐と若布の味噌汁だ。俺は炊き込みご飯を頬張る。
シ「ふはい・・・」
久々に食べる母さんの料理はものすごく美味しかった。
母「随分、早かったね。」
シ「いや、まだ『戌』の血を持つ十代目と、『卯』の血を持つ十代目しか倒してないよ。」
母「それでもかなりの進歩じゃないか。」
俺が『任務』を順調に達成しているのを聞くと母さんは嬉しそうに笑った。すると、母さんは俺の右腕を見てきょとんとした顔になった。
母「シン、右腕に付いている灰色のものは何?」
シ「あぁ。マグノリアっていう商業都市にある魔道士ギルド、妖精の尻尾の紋章だ。俺、そこに加入したんだ。」
母「妖精の・・尻尾・・・」
「妖精の尻尾」と聞いて、母さんは少し驚いたみたいだ。そりゃそうだ。もう死んだ父さんが一時期加入していた魔道士ギルドだからな。
母「魔道士ギルド・・っていう事は、シンは魔道士になったの?」
シ「あぁ。」
俺はテーブルに箸を置くと、ズボンのポケットから五色腕輪を取り出して母さんに渡した。
シ「それが俺の魔法、五色腕輪だ。赤は炎、黄色は雷、緑は風、青は水、紫は闇で、腕輪ごとに属性が変わるんだ。腕に付けると、その属性を両手に纏う事が出来るんだ。」
母「へぇ~。時代は進んだねぇ~。」
母さんはすっかり五色腕輪に感心している。さて・・・そろそろ本題にいくか。ドクッ、ドクッ、ドクッと俺の鼓動の音が大きくなった。
シ「なぁ、母さん。」
母「ん?」
シ「・・シグレ・バンギって・・知ってる、か?」
母「!」
俺は母さんの体が一瞬だけピクッと身震いしたのを見逃さなかった。そして、俺はポケットからマスターから貰った写真を取り出して母さんに見せる。写真はしわくちゃになっていた。
シ「妖精の尻尾のギルドマスター、マカロフさんから教えてもらったんだ。」
俺は写真に写っている父さんを指差す。
シ「この人が、俺の父さん、シグレ・バンギだって、マスターは言ってた・・・」
母「・・・・・」
母さんは何も言わない。ただ、写真に写っている父さんを見つめているだけだ。
シ「そのマスターからの話だと、マスターが三十歳ぐらいの頃、父さんは妖精の尻尾の魔道士として、数ヶ月間だけギルドに加入してたらしいんだ。その三週間後に、ナズナ山で筍を採りに行って崖から転落した。それから三年後に、俺が生まれたんだよな・・・?」
母「・・・・・」
母さんは何も言わない。
シ「母さんが、俺に父さんの事を一切話さなかったのには、何か訳があるんだよな?・・そろそろ、教えてくれよ。俺の父さんは、シグレ・バンギは、いったい何者なんだよっ!?」
十八年間、一度も母さんに口喧嘩で勝った事が無かったけど、今の俺なら勝てる気がした。すると、母さんは小さく微笑みながらゆっくり目を閉じると、
母「『真実』を話す『時』が、来たみたいだね・・・」
小さく呟いた。母さんはその場にスクッと立ち上がって、エプロンを脱いだ。
母「この時間なら、誰も山にはいないね。シン、ブレスレットは着けている?」
シ「えっ?あ、あぁ。」
俺はいつも肌身離さず左手首に身に着けている緑と赤茶色の石のブレスレットを母さんに見せる。母さんはブレスレットを見ると満足そうに微笑み、
母「シン、これから墓参りに行くよ。」
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空が薄暗くなった頃、俺と母さんはナズナ山へ父さんの墓参りに出かけた。幼かった頃の俺は休憩が必要だったけど、十八歳になった俺にはもう必要ない。逆に、母さんが必要になるんじゃないかと思ったけど、五十一歳になった母さんは今でも元気に山をどんどん登って行く。
母「お父さんは『十二支』の『子』の血を持つ九代目だよ。」
母さんは山の登りながら父さんについて話してくれた。
母「以前も話したとおり、父さんはどんなに歳をとっても三十代前半に見えるんだよ。でも、もっと若かった頃はシンにそっくりだったよ。」
マスターから貰った写真に写っている父さんも、確かに自分にそっくりだ。
シ「写真に写ってた父さんは何歳くらいなんだ?」
母「う~ん・・・四十歳ぐらいだと思うよ。」
四十歳ッ!?全然見えねぇっ!!
母「『子』の血を持つ者は、二十歳ぐらいになると、五十歳ぐらいまで顔の変化があまり変わらなくなるの。だから、いつかシンも三十年くらい若い顔で過ごせるのよ。」
顔が若くても、歳はとってくから、変わらねぇと思うけど・・・
母「でも、『子』の血を持つ十代目だけは、ちょっと違うの。」
シ「えっ?」
「『子』の血を持つ十代目」って・・・俺の事、だよな?
母「『子』の血を持つ十代目は、通常の人間より『時』が進む早さが遅いのよ。」
シ「えっ?」
母「よく考えてみて。妖精の尻尾のギルドマスター、マカロフさんという方が三十歳ぐらいで、それから三年後にお前が生まれた。お前は今十八歳で、そのマカロフさんとゆう方は今何歳なの?」
シ「えぇっとぉ~・・・」
以前、エルザから教えてもらったんだよな。確か・・・八十八歳、だったかな?でも、ミラからの話のよると、妖精の尻尾には何人か歳が七年遅れているんだよな。(最強チームの皆とか・・・)確かマスターもだ。だとすると・・・
シ「九十五歳・・・」
母「九十五から十八を引いてみて。」
95-18=77・・・あれ?
母「話の辻褄が一致しないでしょ?でも、シンの『時』の進む早さが違う事が分かれば、全て辻褄が合うの。」
ちょ、ちょっと待てよっ!!という事は、俺の歳は、本当は十八歳じゃなくて・・・
シ「五十八歳ッ!?」
か、母さんより歳とってるじゃねぇかっ!!何馬鹿げた事してんだ駄作者ッ!!(←えぇっ!?私のせいなのぉっ!? by07)ていうか、俺は通常の人間より約四十年も『時』が遅れてるのかよっ!?
母「でも、シンは十八歳だから大丈夫。」
な、何て事だ・・・
母「ほら、着いたよ。」
いつの間にか空はすっかり暗くなっていて、満月が俺と母さんを照らしていた。そして、俺と母さんの目の前に長さの違う二本の細い丸太で作られた十字架が地面に突き刺さっている小さな墓が満月の光に照らされていた。この墓が、俺の父さん、シグレ・バンギの墓だ。
俺と母さんは墓の前にしゃがみ、ゆっくりと目を閉じて顔の前で手を合わせる。
母「・・・さて、そろそろ『真実』を見ようか。シンはちょっと下がってて。」
シ「う、うん。」
母さんは立ち上がると、父さんの墓の前で目を閉じ、胸に手を当てた。
母「『時』は来た。選ばれし『子』の血を持つ者と、その生命を繋げた『子』の血を持つ者・・・今、ここに集う。」
母さんが意味不明な呪文のようなものを唱えていく。すると、父さんの墓の下に巨大な赤い魔法陣が浮かび上がった。俺はその光景に息を呑む。
母「『真実』の扉よ、今ここに、その姿を現せっ!!」
目の前にいる母さんが、母さんじゃないように見えてきた・・・すると、ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・と地鳴りのような音が聞こえた。その音の正体は・・・
シ「・・・え・・・・?」
父さんの墓だった。墓の下に階段が現れたんだ。ど、どうなってんだ・・・?
母「シン、ついておいで。」
シ「えぇっ!?」
母さんは階段を下りていった。最初は戸惑っていた俺も、恐る恐る階段を下りていった。
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階段はかなり奥まで続いていた。下りるだけで三十分くらいは掛かったと思う。そして、最後の一段を下りると、壁際にあった松明に自動的に火が点いた。しかも、青い炎・・・俺と母さんは父さんの墓の下にあった石造りの部屋にいた。
シ「ナ、ナズナ山に、こんな所があったなんて・・・」
母「私も父さんに連れてこられた時は驚いたよ。」
俺は石造りの部屋をぐるりと見回す。青い炎が揺らめき、壁際にある数本の松明が俺の背後に黒い影を作り出す。すると、俺の視界に飛び込んで来たのは部屋の中央に嵌め込まれている赤い縁で飾られたガラスだった。
シ「何だこのガラス?鏡か?」
俺が鏡に歩み寄り、触ろうとすると、
母「触っちゃダメェッ!!」
母さんが叫んだ。俺は驚いて鏡を触ろうとした手を慌てて引っ込めた。母さんがこんなに声を荒げたのを初めて聞いた。驚いて振り返ると、母さんはすごく悲しそうな顔をしていた。
シ「か、母さん・・ここは、いったい何なんだ・・・?」
恐る恐る聞くと、
母「ここは『神鼠の部屋』と言ってね、バンギ家の聖地なの。その鏡は『生命の鏡』と言うの。」
母さんはそう言いながら『生命の鏡』を触る。って!
シ「お、おい母さん!さっき俺がこの鏡に触ろうとしたら母さんが自分で「触るな」って言ったよなぁっ!?なのに何で母さんが触ってるんだよっ!?」
母「私は『子』の血は流れていないから、触っても大丈夫なのよ。」
な、なるほど。てか、何で俺は『生命の鏡』に触っちゃダメなんだ?
母「この鏡に触った『子』の血を持つ者は、自分の命と引き換えに、新しい命を生み出す事が出来るの。」
シ「・・・え・・・・?」
その時、俺の脳裏に思いもよらぬ最悪の出来事が浮かび上がった。ま、まさか・・な・・・
母「まだ、シンがお腹にいた頃の事よ。シンはとても心臓が弱かったの。このままじゃ、生まれる前に私のお腹の中で死んじゃうかもしれなかったのよ・・・」
シ「え・・・」
母「でも、シンは『子』の血を持つバンギ家の十代目だったから、そのまま放っておく訳にはいかなかったの。だから、父さんは、この『生命の鏡』を使って、自分の命と引き換えに、新しい命を生み出したの・・・」
シ「・・・・・」
俺は言葉を失った。
母「それからは、シンの心臓も驚くくらいに順調に良くなって、三年後、シンが生まれたの。」
俺は体全身が震え、思考が停止していた。
母「父さんは『生命の鏡』に命を引き換える前に私に言ったの。「この事は、生まれてくる子供に言わないでくれ。」って。それが、父さんから私への最後のお願いだったわ。だから、シンには「崖から転落した」って嘘をついてたの。でも、あそこまで知っちゃったら、もう隠し切れなかったの。」
俺はガクッと膝から崩れ、その場で頭を抱えた。震えが止まらない俺を、母さんは優しく抱き締め、背中を優しく摩ってくれた。
母「シン、あなたの命は、父さんの命と引き換えに生まれたの。父さんの「優しさ」と、「勇敢」さを胸に抱いて、たくましく生きなさい。」
俺は黙って頷いた。
俺のせいで、一人の人間の尊い命が消えた・・・
そう思うと、震えと涙が止まらなかった。父さんは、俺には無い「優しさ」と「勇敢」さを持っていた人間なんだ。俺の左手首で、父さんの形見である緑と赤茶色のブレスレットが鏡に反射して小さく光った。
後書き
第十四話終了~♪
自分の命を引き換えにシンを救ったシンの父親、シグレ・バンギ。それにしても、まさかシンが五十八歳だとは・・・作者本人もびっくりです!!
シンのキャラ説を少し変更しましたので、そちらもよければご覧下さい。
次回はリンドウ村から帰ってきたばかりのシンを連れて、最強チームがとある大仕事に・・・
それではまた次回、お会いしましょう~♪
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