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異世界からチートな常識人が来るそうですよ(タイトル詐欺)

作者:rekyunn
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第二十三話 気付いたら一周年

 
前書き
読み直して今更の今更に気付いた。

証、自己紹介してない!?

あああ、苗字が殆ど出てないというか三話まで名前すら出てないように見えるのはきっと気のせい………だったら良かったのに。

頑張って修正しておきます。………三話まで主人公の名前を出さないとは斬新だな。 

 


北側・52525外門、キリアテ・ヤリム。

「ふんふん、同じ北側でも全然様式が違うんだな。」

「………うん。サラマンドラの所が赤レンガで、ここは自然から切り出した石を加工して造ってるね」

外門から出た二人はそこから見える風景に目を輝かせる。肌を撫でるような熱風は似ているが、景色は全く異なる。まず、地面が砂である。

砂漠のオアシスに似せて造られている街並みである。

二人は興味深そうにその場で見回していたが、唐突にそのうちの一人、____春日部耀は首を傾げてもう一人に尋ねた。

「証、本当に良かったの?」

「ん? あー、別に気にする事でもないと思うよ? てか久遠さんがいいって言ったんだし」

「………そうだね。ありがとう」

くすりと小さく笑う耀から目を逸らし、『砂漠の町』風の町並みを見つめながら風舞証はここまでの経緯を思い返していた。



~~~"ノーネーム"1階大広間。~~~

『ごめんなさい証君。ちょっと急用ができてしまったの。また今度埋め合わせするから。………あ! そ、そうね、春日部さんもいいギフトゲームを探していたから彼女を誘ってみてはどうかしら?』

『お、おう………』

何かすごい作為的なものを感じたのだが、指摘するのも悪いかと思い、何も言わないまま証は耀を誘った。



_____現在に至る。

(まあ、春日部さんが楽しそうで何より、ではあるな)

興味深そうに辺りを見回しながら、鯛焼きを食べている。



―――――鯛焼き?


ふと気になって石造りの街の目抜き通りを注視する。案の定というか………いた。

「なんでオッサンがここにいるんだ?」

「オッサン言うなおにいさんだ」

そう訂正するのは火竜誕生祭にもたい焼き屋を開いていたオッサンだった。

砂漠の街を模した此処にたい焼き屋はとても違和感を感じる。

その疑問に気付いたのか男は豪快に笑う。

「ハッハッハ。いやなに、今がこの街が一番賑わう時期だからな。かきいれ時ってやつだ」

「一番賑わう? 何かあるのか?」

ん? と男は首を傾げる。

「何って、お前さんもギフトゲームに参加しに来たんじゃないのか?」

「いや、招待状を貰っただけで何も説明を受けてない」

はぁ? とまた首を傾げるが、その時証の後ろから声がかけられる。

「お待ちしておりました。風舞証さん。春日部耀さん」

「あ、エミちゃん」

金髪、血のように紅い眼、そしてチビっ子。

「今何か失礼なことを考えませんでしたか?」

「いいえ別に何も」

首を振る証にジト目を送りながら溜息を吐いて説明する。

「そこのオジサンが話していたギフトゲームは、私達のコミュニティ、"契約の櫃"のゲームです」

「オジサンじゃないお兄さんだ!!」

「なるほど。つまりこの人だかりの大半がゲームの参加者か」

辺りを見回せば確かに強者の風格を見せる猛者が多いように感じる。

「ええ、五桁のギフトゲームですから」

そう言って腰に手を当てて誇らしげにするエミを見て、興味の湧いた証は、

「やっぱ凄いのか? 君のコミュニティのゲームは?」

「もちろんです。必ずや私達のギフトゲームは貴方を満足させるでしょう」






証たちの宿に関しては、"契約の櫃"が負担したのでそこに荷物をおいた後、エミに連れられて舞台区画へと向かった。

「うん。ホントに多いな、けどここまで多いと何か参加料として徴収してるのか?」

「ええ、詳しいことは"契約書類"に書かれていますが、金貨一枚ですね」

「高い!?」

少し前なら交通費込みで"ノーネーム"が経営破綻するレベルの費用がかかるということに珍しく証は叫んでしまった。驚くエミに言い訳するように咳払いをする。

「すまん。いや聞きなれない金額でなちょっと驚いただけだ」

「そうでしたか、けど御心配なく。ゲスト招待なのでお金は徴収しませんよ」

「それは良かった、良かった」

苦笑しながら顔を上げる。そろそろ開始時間なのか、空気が張り詰めてくる。その空気に当てられたのか、ブルっと身を震わせてエミは思い出したように告げる。

「すいません。今から私も準備があるので行かなくては」

「おう、また後でな」

「………後で美味しいの、よろしく」

「春日部さん………」

苦笑しながら手を振って去っていったエミを見送り、証は耀に向き直って笑う。

「さて、俺達も周りの奴らに負けないように行くか」

「うん、けど証にも負けない」

耀の言葉に証は今度こそ素で驚いた。彼女の感情表現はとても珍しい。

しかし黙っているわけにもいかないので不敵な笑みを浮かべてそれに応える。

「わかった。俺も本気で戦うさ」






"契約の櫃"本拠前広場。

「おいどういうことだ?」

「わからねぇ。けどなにか変だぞ」

「なんで何も伝えに来ないんだ?」

ザワザワと喧騒が広がっているのは開始の合図と思われる鐘が鳴っても"契約書類"も何も伝えられない。そんな異常事態が5分立ってからであった。

耀も首を傾げて疑問を口にする。

「何か問題でも起こったのかな?」

「みたいだな。上」

「え?」

証がボソッと呟いたので一瞬理解できなかったが、言葉に習って上を向く。

「………え? あれって………」

耀の視力だからこそ捉えられた高度にバラ撒かれた黒い羊皮紙。他の参加者も遅れて目視し、ざわめく。

証は一人黙って黒い羊皮紙の文面を読む。




―――――『ギフトゲーム名・"契約の櫃"

参加者・

        契約の櫃”から招待状を受け取ったコミュニティ。または個人。及び”契約の櫃”のギフトゲームに参加費を払いカードを受け取った参加者。



参加者一段回目勝利条件・

        "第一の門"に招待状の赤い砂時計の砂が下に全て落ちるまでに辿り着くこと。

        "第二の門"に招待状の青い砂時計の砂が下に全て落ちるまでに辿り着くこと。

        大通りに設置された噴水で智天使に向かってギブアップを宣言する。


参加者敗北条件・

        "第一の門"に招待状の赤い砂時計の砂が全て落ちるまでに辿りつけない場合。

        "第二の門"に招待状の青い砂時計の砂が全て落ちるまでに辿りつけない場合。

        噴水以外の場所でギブアップを宣言した場合。


追記・妨害としてケルビムが砂時計の砂が落ち始めた瞬間噴水から出現します。

追記・敗北条件を満たした場合、その参加者は全て主催者に隷属されます。


上記を尊重し、"■■■■"はギフトゲームを開催します。』


―――――全ての参加者が絶望するギフトゲームが開催される。 
 

 
後書き
いかがでしたか? 書き終わって気付いたのが、なんと投稿した日でちょうど一周年!

逃走しかけたりしましたがなんとかここまでやってこれたのもこの駄文に評価ポイントを付けてくれた読者様のお陰です。


ありがとうございます。


―――さて、今回はオリジナルのギフトゲームに参加する直前で止めましたが、別にどのように話を進めるか考えていなかったのではなく、単にその方がきりが良かったからです。ええ、決して物語の展開をまだ考えられていないわけではありません。

―――主催者の勝利敗北条件がない?

―――契約の櫃が関係していない? コミュニティはどうなった?

いいえ、これはまだ勝利敗北のない勝負、一段階目のギフトゲームです。他の疑問もこの程度で終わるようには作られていません。お楽しみに。耀がとばっちりを受けそうで不安です。

二年目も逃走しないように頑張ります。


感想を頂けたら幸いです。

 
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