| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

黄昏アバンチュール

作者:どるちぇ
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
次ページ > 目次
 

もう一つの温もり



10.

目が覚めると、隣に沙耶の姿がなかった。

一瞬体がこわばったものの、台所から漂ってくるいい匂いで沙耶が朝ごはんの用意をしていることを思い出した。

「…おはようございます」
「「おはよう」」沙耶と、知沙さんがもう台所に立っていた。
「顔洗ってきます…」
顔を洗って、制服に着替えるとやって目が覚めて頭が働きはじめた。
何気なくきた制服きちんとあアイロンがかけてあったのことに私が気づくのは大分後のことである。

もう一度台所に戻り二人に
「手伝います」
と言うと、私も沙耶と一緒にお弁当を作った。沢山いる兄弟の弁当なので、机の上にはカラフルな彩が並んでいる。
私も自分の弁当を自分でつくるようになって大分たつので慣れたものだ。

二人は朝早く、何を話したのだろうか。
でも、知沙さんが朝私を見て笑ってくれたのは本当のことだ。


賑やかな朝食を終えて外に出ると、知沙さんと、兄弟達が見送ってくれた。
沙耶が一番学校が遠いので、出るのが早いのだ。

駅に向かう道の途中で
「沙耶、大丈夫?」
「…うん、昨日ね花乃ちゃんがすごいあったかかったの。だから…大丈夫」
「へ?」
なんとも間抜けな声が出てしまった。

「…なんでもない、でも、昨日はありがとうね」
と、私の耳に寄せて小声で囁いた。なんだかどきっとしてしまったのだ。


「今日はすごい晴れてる」
「昨日天気予報では明日は雨が降るって言ってたんだよ?」
「私ね、雨の日も嫌いじゃないの。濡れちゃうし嫌なんだけどね、でも、雨ってやんだらすごい綺麗な青空になったり、虹かでたりするでしょ?それがすごい好きなの。」
「そっか…そう考えたら雨も悪くないかもね」
私は笑った。

「でも、まだ終わったわけじゃないからね?部活終わったら教室でね」


そのまま学校に行き私達はいつも通り授業を受けた。


そのままいつも通り部活に行き、約束通りに教室で待ち合わせをした。
「待った?」
「うん」
少しだけ沙耶の顔が強ばっている。
「大丈夫。」


階段のところで
「少し、待っててね今、見てくるから」

そういって、先生がいる部屋のドアをあけた。
案の定吉川もいたが、伊藤先生もいた。

「どうした?」
吉川の顔が少しひきつっている気がした。
「先生、少しいいですか、部活のことで、あと質問したいんです」

「あー、じゃあ、隣にいこうか」

「あのー先生…」吉川が焦っている。

「なに?」
「いや、なんでもないです」

先生にが教室に入ってくると失礼を承知で腕を掴んで教室に一番後ろに引っ張った。

「ど、どうしたの…?」

私は真剣なかおで囁いた。
「先生に聞いてもらいたいことがあるんです。少し付き合ってもらえませんか」

普段真面目な顔なんてしない私が真剣な顔をしていたので驚いたのだろう。

先生が真面目な顔で呟いた。
「わかった、なら、別の教室行こうか」


そして吉川先生には秘密にして欲しい、という旨を伝え、後で合流することにした。



「とりあえずなんとかなったよ」
「…うん。」

元気がない。状況で元気になれ、というのも酷だが元気がない。

「いこっか、」
「…どこいくの?」

「資料室、だって、職員室のとなりの隅っこにあるの」
「そんな部屋、あるんだね」
「一般生徒はしらないよ?これ」と、私は笑った。

そして、その資料室の前についたが、
「…入口どこ?」
「このさ、小さいとこじゃない?」
「すごい部屋だね…でも、なんか秘密基地みたい」
「すごいね…」

そして、なかにはいると、椅子とテーブルと、そして本が並んでいた。
「すごいほこりっぽいね…」
「掃除したいよー…」
綺麗ずきな沙耶にはかなり応えるらしい。

そうして話していると先生がやってきた。

「腰が…」
「…大丈夫ですか?」
「でも、すごいですね、この部屋」
「この学校にきたときね、ちょっと本を探してて見つけたのよ。知らない先生も結構いるはずよ」
「なんだか、秘密基地みたいで楽しいですね」

「で、話ってなにかな?」

「あ、あの化学の吉川先生のことなんですけど…」
「え、吉川くんがどうかしたの?」
「えっーとですね…」
「大丈夫、花乃ちゃん。ちゃんと自分で言うよ」


そういうと沙耶はぽつぽつと話はじめた。



話始めた時には茜色だった空がいつの間にか真っ暗になっていた。

「…そっか。わかりました。」

先生も浮かない顔である。
そして、今にも泣き出しそうな沙耶を抱きしめた。

「ごめんなさいね、何も気づいてあげられなくて」
「これは、私達大人の問題だから、私達で何とかするわ。大丈夫、木暮さんの名前は出てこないようにするから。」

「…はい、ありがとうございます」

「じゃあ、連絡は和泉さんを通して、でいいかな?」
「大丈夫です。」

「じゃあ、今日は二人で帰りなさい。吉川くんがどうでるかもわからないしね。あ、途中まで送ってくわ」


そして、校門をでると私達は二人きりになった。
「…こないよね、あの人」
「多分先生がなんとかしてくれてるはず」

駅に着くと電車はタイミングを見計らったようにすぐやってきた。
「入口まで送ってくよ」
「悪いよ…」
「大丈夫大丈夫、でなけりゃただだし」


「私ね、お母さんっていっても良く分からないの。いっつもいないし、たまにしか会えないし。お姉ちゃんが親代わりみたいなとこもあるけど、でも、やっぱり違うでしょ。なんだか、今日はすごいあたたかかった。私でもこんなに寂しいのに、お姉ちゃんはきっと…ずっとさみしい思いをしていたのかな…」

「聞いてみたらいいんじゃない?お姉ちゃんに直接」

「…え、お姉ちゃん…」

改札には知沙さんがたっていた。

「お姉ちゃん…っ!!!!」

「バッチリじゃない…私」
二人の姿を見届けることもなく私は鐘が鳴り響いているホームに戻っていった。 
 

 
後書き


どうしようかなー、と悩んでいたらいつの間にかこんなに間が…いや、コンスタントに書くって難しいですね 
次ページ > 目次
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧