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Tales Of The Abyss 〜Another story〜

作者:じーくw
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#19 チーグルの森・2人の共通点



 一行は、ライガと交渉する為に森の更に奥へと向かっていたその道中。

「ッ!! ルーク危ないっ! 後ろっ!」

 どうやらその場所が近付いたのだろうか。森の茂みの奥から、複数のライガ達がが姿を現していた。

「みゅうぅぅぅ!!」
「うおおおっ!」

 ミュウは大慌て! おまけにルークも同じように大慌て。つられてしまったのだろうか?

「落ち着いて対処なさいっ!」

 ティアが激を飛ばし譜術にはいろうとするが、咆哮と共に複数のライガの内の1匹がティアに襲い掛かった。

「くっ…… 流石に素早いわね!!」

 ティアは、杖で何とか攻撃の直撃は、防げた様で怪我はしていなかった。それを確認したアルは、すかさず攻撃に出る。

「任せて!! 我が元へと集え 邪の化身!《ブラッディ・レイド》」

 アルが放つ譜術の暗黒波動で、ライガ達の動きを封じた。

「うおおおお!! 双牙斬!!」

 動きを封じている間に、その内の1匹をルークの剣技で斬り飛ばし。

「ノクターナルライト!!」

 ティアがナイフを素早く投げ、攻撃した。

「よしっ!こいつで最後だ! 出でよ。神聖なる光の眷属。我敵を貫け。《ルミナンサイス》」

 アルは、闇の波動を一気に反転さし光の属性攻撃で、残ったライガを一掃した。闇の攻撃で耐性が付く可能性があるため、こういった反転譜術はより効果的になるらしい。
……と、頭の中のあの声(・・・)の影響か、何かが説明をしてくれたのだ。


 一行は、ライガ達全員、戦闘不能にする事に成功した。

「ふう…… ありがとう、助かったわ アル」
「けっ! あんな奴ら、俺だけで十分だっての」
「ちょっとルーク! 彼がフォローをしてくれたから!」
「ま、まぁまぁ……。無事で何よりだから……。ケンカしないでー」

 それは、勝利の掛け声、なのだろうか? ちょっと微妙なやり取りだったけれど、皆無事で良かった、と離れて見ていたイオンは微笑んでいたのだった。


 更に奥へ進んでいく時、ティアがアルに話しかけていた。

「それにしても、貴方の使う譜術は、見たことも無いわ。確か、貴方は、過去の記憶が無いと言っていたけど、いったいどうやって身につけたの?」

 ティアも、ジェイド同様に、その話題に触れてきたんだ。それはアルにとって、少し難しい話題だった。信じてもらえるかが判らないから。

「ん………。えっと、難しい質問だね。 これは習ったりしたんじゃないんだ。」
「はぁ? 譜術ってのは指南を受けずに修めれるもんなのか?」

 ティアの隣にいたルークも目を見開かせながら訊いていた。ルークも、師匠の元で剣術の指南を受け続けていたからこそ、今の剣術が使えるのだ。だから、アルの話を訊いて、おかしい、と違和感を感じたのだろう。

「ええっと…… うーん……」

 アルは、腕を組み考えていた。

「あ、別に言いたくなければ無理して言う必要ないわ。ごめんなさい、無理に聞こうとして」

 ティアは、アルの表情からそう読み取ったようで、そう答えていた。別にアル自身は、そんなつもりじゃなかった。その中で、イオンは何に悩んでいたのか分かっていたみたいだ。

「アル。……彼らは信頼できると思いますし、貴方のの言う事も信じてくれると思いますよ」

 アルの事を真っ直ぐ見つめながら、諭してくれた。悩みも見抜かれてしまっていた様だ。アルは、苦笑いをしながら頷いていた。

『頭の中で声が聞えてきて、更にそれが力の使い方を教えてくれて……、あっという間に、使える様になったんですよー!』

 こんな説明をして、夢物語を言って、安易に信じてくれる人なんてそうはいないだろう。ジェイドの様に自分の事を、その裏をも調べて、確信がもてないのならまだしもだ。

「え? それってどういう事?」

 イオンとのやり取りが理解出来なかったのだろう。ティアも少し、きょとんとした表情でこちらを見ていた。

「僕も気になるですの!! アルさんの譜術! とってもカッコいいですの!!」

 ミュウは、アルの周辺をピョンピョン飛び跳ねていた。戦っている間も目を輝かせていたから。でも、アルの傍には、ルークもいるから、そーやって、飛び回っていると。

「うるせーぞ! ブタザル!! 」

 ルークの逆鱗に触れてしまって、ミュウは盛大に蹴っ飛ばされてしまった。

「みゅ~~………っ!」

 ミュウは、ルークの蹴りを受けて、ぼてっ、と転んでしまっていた。更に追撃をしようとするルークを見たアルは。

「ま……まーまー!ルーク落ち着いて落ち着いて……。 はぁ、 そうだね。 ちょっと信じてくれるかどうか、それはとりあえず、判らないから、おいといたとして、説明するよ。……あのね」


*  *  *  *  *  *  *


 とりあえず 以前ジェイドとイオンに話したこと全てそのままルークとティアにも伝えた。

 アルの頭に響く《声》の事を。

 以前暮らしていた町で、モンスターに襲われ、そのモンスターと接触した刹那、その声が再び頭の中に聞こえ出して、力を貸してくれたという事。

 信じにくい、と言うのは体験している自分ですら思える。だから、期待はあまりしてなかったんだけど。
 驚いたことにルークがこの話しに凄い勢いで聞いてきた。

「お前も!? 幻聴があったのか!? それに記憶喪失だと!!」

 『お前も(・・・)』と言う言葉に逆にアルも驚いていた。驚いたことに、ルークとは、記憶障害、幻聴、と共通点が2つもあったみたいだ。
 特殊な事例だと思える現象が2つもある。

――……これは偶然……なのだろうか?


「えっと…… お前()ってことは……、ひょっとして、ルークも……?」

 アルは、ルークに聞いた。

「ああそうだ。俺もよくあるんだ。……7年前からだ、俺の幻聴は。記憶を失ってからってことか? 夢ん中でだったり、突然頭の中だったり……」

 ルークは、『もう、うんざりだ!』と言わんばかりの感じで話していた。

「……2人に共通点があり その共通点とは特殊なものです。ただの偶然とは思えませんね……」

 イオンも、ただの偶然だとは思ってないようだった。

「そうですね……。私もそう思います。ルークはその事をお医者様には?」

 ティアがルークに聞くと。

「そんなもん、あったりめーだろ? んで、結構数多くの医者に診て貰ったけど、とーぜんの様に、全員が原因不明だとよ! 『記憶が飛んだときのショックが原因と思われる』 こればっかだし! ショックってなんだっつーの!ちっとも治らねーし!」

 どうやら、ルークは不満だらけのようだった。その後も、ブツブツ言いながら歩いていた。

「あははは……… だよね? こればっかりは中々簡単にはいかないと思うよ。 何せ、脳って、人の体の中でも一番の難解な場所 って言われているしね」

 脳という器官はまだまだ未知数のところが多い。血中音素(フォニム)がどのように作用しているか……、どの様に信号かされ、各器官に命令を出しているのか。等、まだまだはっきりと判らない部分が多い様なのだ。

 名高い教授・研究員が調べている段階らしい。

「ああ?そーなんだ。なんでそんなこと知ってんだよ?お前は。」
「ん? これは全部本の知識だよ? 最新版、って訳じゃないから、古いのかもしれないけど」

 アルは、そう説明をした。すると、それを訊いていたティアはため息を吐いていた。

「……はぁ、ルークも少しは見習ったらいいと思うわよ? 彼の方はつい最近から記憶が無いのに知識で大分遅れているじゃない」

 ティアは、そんな対照的な2人を見ながら、はぁ……っと 本当に判りやすいため息をつきながらそう言った。『なんで火に油を注ぐような事を言うの!』 とアルは凄く思ったようだ。なぜなら。

「うるせーな!!余計な世話だ!!」

 こうやって、ルークが怒鳴るのが直ぐに判るから。

「ま、まぁまぁ! 落ち着いてよ、ルーク。オレだって まだまだハリボテなんだからさ」

 結局はこうなるんだ。『何とか宥めるのは自分の役……なのかなぁ……』とアルは思ってしまっていた。

「みゅ〜〜……ケンカしないで下さいですの!!」

 皆を見ていたミュウも何とか仲良くして貰おうと仲介に入るが、勿論、ルークにとって、ミュウの仲介も火に油だ。

「だまってろ!ブタザル!!」

 ドガッ!! と言う中々に痛そうな音をだしながら、蹴飛ばされていた。

「うみゅうぅぅぅ!」
「わっ、ミュウ、大丈夫?? ……はぁ」

 アルは、段々フォローが疲れてきたようだった。でも……イオンはそんなアルを見てニコリと笑う。

「アル。 ……顔、笑ってますよ? とてもいい笑顔です」

 イオンがアルの側まで来ていて、そう言っていた。それを訊いてアルは少し驚きの表情をしていたが……、直ぐに笑顔を戻していた。


「あ、あはは。うん。オレは……、オレにとっては、全てが新鮮な事なんだなって思ってるから、そのせいかな? ……口では疲れたぁっ! って思ったりしてるけど、こういう賑やかなのもいいかもしれないなって思ってたりもしてるし。 ……アクゼリュスの町の皆も、とても賑やかだったけど。個人だけを考えたら、ルーク以上の人はいないかな?」
「あはははは!そうですね。」

暫くイオンと笑いながら、最初の話題を忘れ言い合いを続けているルークとティア、そしてその周辺を飛びながら必死に止めているミュウを見ていた。。

 言い合い、と言うより、ルークが一方的に言い、それをティアがさら、っと躱しているだけだ。言い合いにすらなっていない。
 後はミュウがやってきたら、ルークがミュウの事を苛めて、ティアが助けて、と言う流れも出来つつある。

「はい。とても、とても賑やかですね。僕もそう思います」
「だよね?」

 皆いい笑顔なのだけど……、この先に待っているモノがなんなのか、判っているのだろうか? 恐らく、そこまで判っていないだろう。


 ……この後、彼らは大変な戦いに巻き込まれてしまうのだから。

 
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