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聖闘士星矢Ω 虎座の聖闘士

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第十五話 副将戦!大河対カグツチ

『副将戦!黄金のJr.!最強の遺伝子!高嶺大河!カグツチ四人衆!主将!カグツチ!』

会場の声援と共に大河は拳にバンテージを巻き付けその上から聖衣を装着するという独特の姿でコーナーへと向かった。

リングサイドでは満身創痍のシグ・岩鉄・疾風の姿。

それを見て拳を握り締めると澪が大河に歩み寄った。

「さあってと・・・最後だね・・・」

「いや・・・あと二人だ」

「ううん・・・きっとあいつが大将・・・だからあいつを倒せればこの戦いあたし達の勝利だね」

相棒の言葉に闘志がわき上がる大河は少しとぼける事を言った。

「そう言えば・・・何で俺が『最強の遺伝子』なんだよ?」

今までのキャッチフレーズ

岩鉄の『斬り込み隊長』

疾風の『風神』

シグの『巨竜』

全て澪が適当につけたキャッチフレーズだった。岩鉄だけは自分自身で名乗ったのをそのまま流用したのだが・・・

「だって・・・あんたの父親は」

「俺は孤児だ・・・父ちゃんなんて居ない・・・父ちゃん同然の人はいるけど」

澪の言葉を遮るように言ってリングに向かう大河。

その覚悟を決めた背を見つめながら澪は呟いた。

「馬鹿・・・どうあってもそれは変わらない・・・あんたがその身体に流れる血を受け止めない限り・・・あんたの右のファイナルブローは絶対に目覚めない」

データ的確証はない・・・だが澪は大河のその血を確信していた。

そして相棒としてその戦いをその瞳に焼き付けるべく目をそむけない覚悟を決めるのであった。


第十五話 副将戦!大河対カグツチ


リングロープで柔軟運動をしながら大河は瞑想しシグにかけられている誓いの旗を見つめた。

・・・澪・・・シグ・・・岩鉄・・・疾風・・・

仲間達の血と汗と涙を吸った誓いの旗から闘志を受け取る大河はカッと目を見開きカグツチに向かってファイティングポーズを取った。

「虎座の大河・・・この戦いに勝利した物が・・・あのカイザーナックルを得る!!」

カグツチが指差すと王座のような椅子の上で小箱に納められている二つの深紅のナックルの姿が・・・だがそれを見た大河は目を閉じた。

「ふん・・・あれがカイザーナックルだって?・・・どうせ偽もんだろ」

「なに?」

大河の指摘にカグツチは額に汗を流した。

その理由を大河は答えた。

「でなきゃとっくに使ってる・・・カイザーナックルに認められてねえか・・・もしくは俺を倒せば本物のカイザーナックルが現れるか・・・んな事でも狙ってんだろ」

竜児が使っていた物には異様な確信を持つ大河は自分の考察を述べると拳を握り締めた。

「行くぜ・・・カナヅチ」

「私の名は『カグツチ』だ」

独特の闇聖衣を装着し自身の名を訂正するカグツチ。

すると試合開始のゴングが鳴り響くと・・・

「んな事はどうだっていいんだよぉぉぉ!!」

ゴングと同時に大河が飛び出しカグツチに右ストレートを繰り出した。

先手必勝の如く右ストレートがさく裂しカグツチの身体が吹っ飛ばされた。

「きやがれ!これまでの落とし前つけさせてもらうぜ!」

「く!!」

カグツチが構えると大河が瞬時に間合いを取りジャブの連打を繰り広げた。

凄まじい速さのジャブにカグツチは考えた。

(馬鹿な!この試合を繰り出すまでティグリスのジャブは嫌というほど見てきた・・・これはまるで音速を超えているではないか!)

並の人間の目には捉えられないくらいのスピードになっている大河のジャブに驚いているカグツチ。

すると

「右ストレート!」

大河のジャブに気を取られ再び右ストレートをまともに食らってしまうカグツチ。

だが踏み止まりアッパーを繰り出すが大河は身体を捻り回避した。

カグツチの拳が頬をかすめるが大河は構わず右ストレートを繰り出した。

腕を交差させてカグツチがガードするが腕が痺れる。

(ティグリスは・・・この戦いの中で力を増し続けたという事か?)

数々の闇闘士を相手にしおのれの潜在能力を開花させていたことに大河自身が気付いたかどうかは分からない。

だがカグツチにとってそれは誤算であった。

すると大河は今まで疑問に思っていたある事をぶつけた。

「一つ聞く・・・何故・・・カイザーナックルを狙った・・・何故竜児さんを狙ったんだ!」

大河の言葉を聞いてカグツチは立ち上がり深呼吸をした。

「ならば答えてやろう・・・カイザーナックルは我らが悲願の為に必要だった・・・そしてその持ち主である高嶺竜児を倒せばカイザーナックルは我らの物となる」

「お前達の悲願だと?」

「この地上を手に入れることよ・・・貴様ら聖闘士を倒してな!!・・・その為に!貰うぞ!貴様らのカイザーナックルを!!!」

カグツチが殴りかかろうとすると大河は拳を握り締めた。

「ふざけるなよ・・・んな事の為に・・・テメエら!!」

カグツチの拳がさく裂する瞬間、怒りに震える大河のジャブがさく裂し状態を崩した。

「竜児さんまで傷つけやがって!!!」

右ストレートでカグツチを殴り飛ばすがそれでもおさまらない大河の怒り・・・

「俺は貴様らを許さん!貴様らの野望なんて!俺が打ち砕いてやる!!竜児さんと菊さんが血と汗を流して生み出した・・・」

左拳を構え

「このブーメランでな!!!」

嵐のような渾身のブーメランフックを繰り出しカグツチを大きく吹き飛ばす大河。

リングサイドでは・・・

(凄い・・・あいつの潜在能力がこれほどなんて・・・あたしでも怖くなってくる・・・今の虎は誰にも止められない・・・行ける!)

その両目に大河の魂を焼きつけながら澪は大河をずっと見ていた。

すると

「・・・く!」

ボロボロの状態で立ち上がるカグツチ。

大河の渾身のブーメランフックを受けているのにもかかわらず立ち上がったのだ。

(流石敵の大将・・・簡単には勝たせてくれないか?・・・どうする?虎?)

澪の考察を受信したのか大河もファイティングポーズを崩さなく構えた。

「ふ・・・ふふ・・・私の闇聖衣は今までとは違う・・・私の闇聖衣は特注品でな・・・貴様ら聖闘士の黄金聖衣と同等の硬度を誇るのだ!」

かつて一度も破壊された事の無いと聞く黄金聖衣。

それと同等の硬度を誇るというカグツチの闇聖衣だが大河は恐れずに構えた。

「だからどうした・・・俺の知っている男達は・・・大きな相手と戦ってきたんだ!」

「ふん!セブンセンシズにも目覚めていない聖闘士が何を言うか!!」

カグツチが大河に向かっていこうとするがその背後の威圧感に足を止められてしまった。

・・・大河の背後には5人の偉大な男の姿が・・・

・・・魂が燃え上がっていた・・・

それはセブンセンシズに勝るとも劣らぬ力を秘めていた。

「確かに・・・俺にはセブンセンシズなんてもんはねえ・・・知らねえ!・・・けど!俺には黄金の日本Jr.が見せてくれた魂がある!!それが・・・俺の力だ!!」

拳に宿った虎と共にカグツチを殴り飛ばす大河。

敵の大将をも圧倒する大河にカグツチは悲願の為に立ち上がった。

「負けられぬ・・・我らの悲願・・・その為に・・・カイザーナックル・・・いや!来い!エビルフィスト!!」

カグツチの宣言と共に小箱に納められていたカイザーナックルと呼ばれていた二対のナックルが赤きメッキを弾き飛ばし漆黒となりカグツチの元へと飛んだ。

カグツチの手に納められたその二対のナックルを構えるカグツチ。

「行くぞ!ティグリス!!」

「かかってきやがれ!!」

大河がカグツチに殴りかかろうとした瞬間。

凄まじい衝撃と共に大河のヘッドギアが砕け散った。

「な!」

「ふふ・・・このエビルフィストは我らが武具・・・これを付けた時・・・我が拳は5倍の威力を誇るのだ!」

拳を放ったカグツチの言葉に大河は拳を構え直すが今の一撃で優勢だった勢いを止められてしまった。

カグツチの拳から次々と繰り出される拳圧に大河はガードするが徐々に聖衣のナックル部分がひび割れていく。

拳圧だけで押しとどめられる大河だがいつの間にかカグツチに至近距離を取られてしまった。

「げふ!!」

カグツチの拳をまともに受けてしまった大河は大きく吹き飛ばされ聖衣の右肩部分が粉々に砕け散ってしまった。

「く!!」

「まだまだよ!!」

蹲る大河にカグツチは追撃した。

サンドバッグの様に滅多打ちになる大河、計り知れないダメージを受けながら大河が左拳を構えようとするとカグツチの拳が大河の左腕にヒットした。

「ぐ!ああああああああああああ!!」

鈍い音共に大河が左腕を抑え込んだ。

大河が抑えている左腕は凄まじい血色の悪さを見せていた。

それを見て澪が直感した。

(不味い!左腕がやられた!これで虎はフィニッシュブローが打てない!!)

そう・・・全てのフィニッシュブローを左腕で習得している大河にとっては正に左腕は命・・・その左腕がやられたという事は敗北に等しいのだ。

カグツチの狙いは最初から大河の左腕だった。

「く・・・うう!!」

それでも痛む左腕を構える大河はまだ戦いを諦めていない。勢いを相手に取られ左腕をやられ、更に相手は武器による能力アップをしている。

大河にとっては絶対的不利な状況は変わらない。

するとカグツチは闇の小宇宙を爆発させた。

「ティグリス!貴様に止めを刺しカイザーナックルを手にする為!!我が最大の拳を食らわせてくれるわ!!」

エビルフィストをはめた両拳を合わせるようにその拳を放った。

「大蛇!好摩暫!!」

独立した八つの軌跡を描いた拳が大河に向かって放たれると大河はその軌跡に混乱し一点に集まったその拳を胸にまともに食らってしまった。

「ぐあああああああああああああ!!!」

胸の聖衣を粉々に破壊され大きく吹き飛ばされる大河がリングに落ちてしまった。

勝利を確信したカグツチが拳を高々と掲げた。

「やったぞ・・・ティグリスを倒した・・・さあ来い!カイザーナックルよ!我がものとなれ!!」

カグツチの言葉が会場中に響き渡るが何も起こらない。

その事にカグツチは吠えた。

「馬鹿な!何故だ!何故来ない!カイザーナックル!!」

カグツチが両腕を降ろすと後ろから凄まじい気配を感じ取り振り返ると其処にはファイティングポーズを取った大河の姿が・・・

聖衣が砕け上半身はむき出しとなり更には左腕をやられてしまった。

だが立ってファイティングポーズをとり今にもカグツチに向かっていこうとする大河の姿・・・

だが大河は全く動く気配はない。

それを見た澪が驚愕し気を失っている疾風から鋼鉄聖衣の残ったナックルを取り自らの右拳に装着するとリングに昇った。

そして強引に自身の身体の能力を上げると・・・

「ジェット!アッパー!!!」

澪の渾身のジェットアッパーが大河の胸に直撃する。

その光景に会場中がざわめいた。

「な!なんだあいつ!?」

「あの女!頭おかしいんじゃねえか!?」

誰もが血迷ったかのように見えるこの光景に澪はジェットアッパーを放った反動で痛む身体を抑えながら再びジェットアッパーの体制に入った。

「・・・くぅぅ・・・負けてもいい・・・けど・・・あたしの前で!死ぬなぁぁぁぁぁっ!!!」

そう・・・大河は心停止を起こしていたのだ・・・

それでも立ち上がりファイティングポーズを崩さない大河を蘇らせるべく不完全ながらもジェットアッパーで大河の胸を殴りつける澪。

だが大河は蘇らない。

「はぁ・・・はぁ・・・4発・・・4発分のフィニッシュブローがあれば・・・」

痛む身体を抑えながら澪が呟いたとき。

「・・・4発・・・だな・・・」

「あんた達!」

澪が振り返るとボロボロで立ち上がる岩鉄・シグ・疾風の姿が・・・

「へ・・・へへ・・・」

腕をぶんぶん回す岩鉄。

「4発・・・ですね・・・」

背中に双龍と雷神を浮かび上がらせる疾風。

「・・・私たちが合わされば4発・・・だが1発打つのが限界だ・・・」

最後の力を振り絞るシグ。

その光景に圧倒されるカグツチは手も足も出ない。

そして

「ドラゴン!ブレーヴェストブリザァァァドッ!!」

「廬山!双龍覇ぁぁぁッ!!」

「ハリケェェン!ボルトォォォッ!!」

三方向から大河を囲むようにフィニッシュブローを放ち大河を蘇らせようとする真友(マブダチ)達。

「帰ってこい!」

「帰ってきて!」

「帰ってこい!!」

シグ・疾風・岩鉄の魂の込められた拳を浴びる大河。

そして澪が拳を放とうとすると・・・

「あ!・・・あぁ・・・」

遂に身体が悲鳴を起こしてしまい倒れてしまう澪。

その場に居た誰もが絶望したその時。

「虎!!」

観客席に居た優しき龍が大河に向かって駆けた。

そして左拳を構え・・・

「ブーメラン!フック!!」

大河の胸に目がけ解き放った!!

会場中を飲み込むような嵐を巻き起こし・・・

その嵐が止むと大河の瞳に闘志が戻りその場にへたり込んでしまった。

会場中の誰もがその男に驚愕した。

そして朦朧とした意識を取り戻しながら大河はその人物を直視し・・・呟いた。

「・・・と・う・・・ちゃん・・・」

「え?」

大河に父と呼ばれたその男は・・・

「あ!あんたは!黄金の日本Jr.!高嶺竜児!!」

竜児だった。

その事に意識を呼び覚ます大河は・・・

「!?竜児さん!」

慌てて訂正した。

その様子に素っ頓狂な表情になった竜児だが、すぐにニコッと笑う竜児。

「まさか・・・どうして?」

竜児の登場に澪も驚きを隠せない。

シグ・岩鉄・疾風も同じだ。

すると竜児はニコッと笑い答えた。

「総帥から知らせを貰ってな・・・」

大河が旅立ってしばらくした後、影道総帥からの手紙で大河の現状・そしてカイザーナックルの在処について知った竜児は黄金のJr,の援護をするべく総帥の元で治療を行い戦えるようにしていたのだ。

それを見たカグツチは・・・

「ふ!ふははははは!高嶺竜児!貴様を倒せば確実にカイザーナックルは我の物となる!!大蛇!好摩暫!!」

カグツチの最大の拳が放たれようとすると竜児は真正面からその拳を掴み取った。

衝撃だけが周囲の空気を震わせた。

「慌てるな・・・お前の相手は虎だ・・・」

全くダメージを受けた気配の無い竜児に会場中がざわめいた。

「す・・・凄い・・・あの拳を素手で掴むなんて・・・これが百戦錬磨の男・・・」

その背に龍の闘気を纏う竜児に澪はただ驚愕するだけだった。

「その通りだぜ・・・竜児さん・・・」

ファイティングポーズを取り大河がカグツチと戦う意志を示すと竜児は再び優しい笑みを浮かべ自分がリングサイドへ持って来たバッグからある物を取り出した。

「裸じゃ恥ずかしいぞ・・・これを着な」

竜児が大河に渡したものそれは・・・

「こ!これは!黄金の日本Jr.のユニフォーム!!」

かつて竜児の血と汗と涙を吸った青春の証。

それを大河に渡す。

胸に響いた大河はユニフォームに袖を通した。

大河にとってのそれはどんな聖衣を着るよりも心強い物だった。

三人の真友と二人の大切な人の拳で蘇った大河は再びカグツチに向かって構えた。

そして意識を取り戻した仲間たちは竜児と共に大河の戦いを見届けるべく両目を見開く。

「ふ・・・ふふそんなもの着たところで!私の勝利は揺るがん!!大蛇!好摩暫!!」

カグツチの最大の拳が大河に向かって繰り出される瞬間。

突然大河の目の前が真っ暗になった。

「な!何だ!?」

意志を取り戻したはずなのに暗闇に置かれる大河。

すると謎の声が響き渡った。

(大河・・・高嶺大河・・・高嶺竜児の血をひく者よ・・・)

「だ!誰だ!?」

(ふ・・・そんな事はどうでもよい・・・高嶺大河・・・お前が『正義の戦い』をするというのなら私はお前に『それ』を届けよう)

「『それ』?」

(呼ぶのだ・・・『皇帝』の証・・・)

その言葉に大河は魂を込めて叫んだ!!

「カイザーナックル!!!」

大河の魂の叫びと共に大河の守護星座・虎座が光ると瞳の部分から一つの流星が大河に向かって放たれるとその真紅のナックルが装着された。

「でああああああああああ!!」

その拳を放つ大河はカグツチの拳をいとも簡単に押し返した。

その光景に会場中が唖然とすると大河は拳のナックルに目を奪われた。

「こ・・・こいつは・・・俺の身体にどんどん力が沸き上がってくる!」

大河の拳に納められた深紅のナックル。

皇帝の証・カイザーナックルが!

それを見た澪は・・・

「どうりで・・・探しても見つからないはず・・・カイザーナックルはずっと虎を見守っていたんだ」

「これは・・・偶然じゃない・・・宿命だ・・・」

大河のカイザーナックルを見て竜児も確信を言う。

そしてすかさず竜児が叫んだ。

「虎!カイザーナックルをはめた時!お前のパンチ力は10倍以上になる!!」

「10倍以上・・・これなら・・・行くぜ!カナヅチ!」

カイザーナックルを構え大河がカグツチに向かって叫ぶがカグツチはエビルフィストを構えた。

「ふん!所詮!カイザーナックルなど・・・右拳にはめられた1つのみ!我が両拳のエビルフィストにかなうはず等ない!そして黄金聖衣と同じ硬度の闇聖衣がある!!」

カグツチがエビルフィストを構え大河に向かって駆けたと同時に大河もカイザーナックルを構え駆けた。

「くたばれ!ティグリスぅぅ!!!」

「うなれ!!カイザーナックル!!」

大河の拳とカグツチの拳が交差する瞬間。

大河の拳がカグツチの闇聖衣を貫き粉々に砕いた。カイザーナックルが突き刺さるカグツチは口から吐血しながら呟く。

「ば・・・馬鹿な・・・黄金聖衣と同じ硬度を持った闇聖衣が・・・一撃で・・・」

「黄金聖闘士になんてあったことねえけど・・・一つ分かる事がある・・・オメエみたいな奴が黄金聖衣纏ったって・・・ただのドレスだぁぁぁぁぁ!!」

左拳を繰り出そうとする大河だが激痛で左拳が繰り出せない・・・それを見たカグツチは起死回生と感じ取り大河に向かって至近距離から拳を繰り出そうとするが・・・

「ブ・・・ブーメラン・・・」

しきりに呟く大河。

それを見てあざ笑うカグツチ。

「馬鹿め!その拳でまともなブローなど放てるものか!!!」

カグツチが最後の悪あがきをしようとするが・・・

「俺には・・・ブーメランが!!!あるんだああああああああ!!!」

強引に左拳を繰り出した!!

「であああああああああ!!」

「なんだ!これはあああ!!!」

左拳の高回転を至近距離で捻り込まれたカグツチは身体ごと大きく回転し大きく吹き飛ばされた。

その名は・・・

「ブーメラン!スクエアァァァァァッ!!!」

ブーメランフックの2倍・・・いや・・・二乗の威力を持つブーメランスクエアーを土壇場で掴み取った大河。

カグツチは凄まじいスピードで吹き飛ばされスタジアムの壁を貫き、更にスタジアム自体を貫き外へ投げ出されてしまった。

「はぁ・・・はぁ・・・」

会場中が唖然としている最中左腕を構えた大河。

するとレフェリーが・・・

「し!勝者!高嶺大河!!」

大河の勝利宣言と共に会場中が熱狂で包まれるとその場にへたり込んでしまった大河。

「はぁ・・・はぁ・・・」

全ての力を使い切ったのか大河はその場で耐えようとするが会場を突き抜けたカグツチが闇の小宇宙を消滅させながら大河に向かってきた。

大河は再びファイティングポーズをとろうとするがカグツチは笑みを浮かべた。

「ふふ・・・安心しろ・・・私はもうすぐ消滅する・・・だが・・・これで確定した・・・カイザーナックルは貴様の手に渡った・・・この先・・・闇闘士は貴様を狙い続けるだろう・・・ふふふ・・・はははははは!!」

高笑いをしながら消滅するカグツチ・・・だが大河は胸に決めた。

「上等だ・・・受けて立ってやる・・・カイザーナックルは・・・絶対に悪用させねぇ!!が!!」

体力を使い切った大河は意識を手放し倒れ込もうとするが澪が誓いの旗で受け止めた。

すると大河の拳のカイザーナックルが外れ再び星となっていった。

それを見た澪は・・・

「虎・・・あんたまだカイザーナックルに認められたわけじゃないみたい・・・」

そう言って大河を誓いの旗で包み込みリングサイドに下ろそうとすると闇闘士でのこされていたニニギがリングに上がってきた。

「まだだ!まだ終わってねぇ!ここでお前らを全員倒し!俺がカイザーナックルを貰う!」

全員が倒れてしまった今の状況ではもはや戦える戦士が居ない黄金のJr.

澪が疾風の身体に残されていた鋼鉄聖衣をかき集めリングに向かおうとすると竜児が止めた。

「ちょっと!」

「下がってろ」

拳にバンテージを巻きボクシンググローブを装着しリングに上がる竜児。その光景に唖然とする澪と黄金のJr.達。

「へへ・・・正気かよおっさん!」

現役を引退した竜児を甘く見るニニギ。

だが竜児は挑発には乗らなかった。

「6人までなら誰が出ても良かったんだよな?・・・なら俺が飛び入りで出るよ」

「上等だぜ!高嶺竜児を倒せば!俺の名が上がる!」

ニニギが竜児に殴りかかろうとするとき!

竜児の身体から発せられた龍の覇気がニニギの拳を止めてしまった。

「な!何だこれは!この男の覇気は・・・格が・・・格が違いすぎる!!」

竜児の背後に浮かび上がる龍に恐れすら感じるニニギ。

すると竜児は左拳を構えた。

「悪いけど・・・俺ももう若くない・・・一気に決めさせてもらうぜ!!」

ニニギに向かって駆ける竜児が放ったそのブローは・・・

「ブーメラン!フック!!」

ブーメランフックだった・・・大河の物とは比べ物にならないそれはスタジアム全体に嵐を巻き起こした。

「う!うわあああああああああああああ!!!」

凄まじい真空波と共に消滅するニニギ。

その光景に澪は唖然とした。

「こ・・・これが・・・伝説の黄金の日本Jr.・・・世界チャンピオン!高嶺竜児!!」

竜児の見せた本物のブーメランフックに驚愕する澪。

するとレフェリーが宣言した。

「しょ!勝者!高嶺竜児!優勝は!黄金のJr.!!」

会場の熱気と共に黄金のJr.の優勝が決まると竜児が先に控室に向かおうとした。

「ちょっと?」

澪が何事か尋ねようとするつと竜児は笑って答える。

「久しぶりの試合だ・・・少し疲れちまったから先に休むよ・・・虎を頼むぜ」

澪に大河の事を任せると竜児は急いで控室に戻ると戦いの反動で膝をついた。

「はぁ・・・はぁ・・・流石に・・・堪えたな」

呼吸を落ち着ける竜児。やはり体は完全ではなく無理をしていたようだった。

そして大河の守護星座・虎座を見上げながら呟いた。

「カイザー・・・今度は虎にその力を貸してやってくれ・・・」

大河の事を思いながら竜児は傷を癒すのであった。

数日後

一足先に帰った竜児をよそに戦いのダメージで入院していた黄金のJr.。

そして退院の日が来ると一足先に疾風が旅立とうとしていた。

「これで・・・私の任務は終わりました」

疾風が大河達に別れを言わずに五老峰に帰ろうとした疾風の前に大河達が立ちはだかった。

「大河?」

「疾風・・・忘れもんだぜ・・・これ持ってけや」

大河が疾風に投げ渡したのは汚れた布きれだが、それを見た疾風は驚愕した。

「これは!誓いの旗!?」

大河・澪・シグ・岩鉄・疾風・・・五人の血と汗を吸った誓いの旗・・・

「どうしてこれを?」

「お前は・・・凄い困難がありそうだからな・・・忘れるんじゃねえぜ・・・この旗に誓った俺達の青春・・・熱き魂を・・・それさえあればどんな困難が来たって屁でもねえ・・・忘れるんじゃねえぜ・・・疾風」

大河の言葉に強くうなずくシグと岩鉄。

高嶺大河



香取岩鉄

シグ

竜崎疾風

そして

高嶺竜児

6人の熱き魂の名が記された誓いの旗を受け取る疾風はその旗を掲げ自身の戦いへと向かうのだった。

すると澪がある事に気付いた

「そういや・・・あたしの鋼鉄聖衣は?」

鉄くずになったとはいえ直して使おうと思っていた鋼鉄聖衣だが影も形も無い。

そういえばさっき疾風が誓いの旗をトランクにしまっていたがそのトランクは・・・

「あたしの鋼鉄聖衣じゃん・・・」

疾風が自身のトランクケースだと思って持って帰ってしまったようだった。

すると薄暗い空間から水晶玉で大河達の様子を見た仮面を付けた闇闘士の姿が・・・

「ふふ・・・奴らが黄金のJr.・・・カグツチはしくじったようですね・・・ならば・・・わたくし達が挑戦しましょう・・・そしてカイザーナックルは我らの物に・・・」

仮面を外すとそこには笑みを浮かべている女性の顔が・・・


 
 

 
後書き
疾風に鋼鉄聖衣を返してもらおうとやってきたのは五老峰!龍座・龍峰の父であり現・天秤座の黄金聖闘士・紫龍が住むというが俺の前に現れたのはご老体だった。

その老体から剣を与えられた俺は武器を使った闘術を開眼しなければならない!

聖闘士星矢Ω 虎座の聖闘士 新たなる戦い!

 
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