ドラクエⅤ・ドーラちゃんの外伝
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キラーパンサーに転生
16ラインハットのお城と王子さま
関所を出て、また魔物を倒しながら旅を続けて。
とうとう、ラインハットの城下町に着きました。
サンタローズの村はもちろん、ビアンカちゃんのいるアルカパの町と比べてもずいぶん人が多いし、建物も多くて立派みたい。
あたしが人間の子供ならはしゃいじゃうところかもしれないけど、今のあたしはケモノの子供なので、はしゃぐよりも気後れしちゃうみたいです。
知らない人の気配がたくさんで疲れるし、人混みに紛れたらドーラちゃんたちを見失っちゃいそうで、気が気じゃないっていうか。
あたしにとっては幸いなことに、王さまに呼ばれてるパパさんは、町は見ないでまっすぐお城に向かってます。
お城はお城で不安なところはあるけど、とりあえずよかった!
パパさんとドーラちゃんのあとに着いて、ドキドキしながらお城に入って。
入り口を守る兵士さんたちは、最初は警戒してパパさんを問い質してたけど、パパさんがちゃんと名乗ったあとは、あたしのことも特に気にせず礼儀正しく通してくれました。
そっか、パパさんは、王さまに呼ばれた大事なお客さんだもんね!
あたしは猫にしてはちょっとおかしいし、例え猫だとしてもペットを連れて王さまに会いに来るのも、それはそれでおかしい気がするけど。
大事なお客さんが連れてるからあたしのことも文句を言わないで、礼儀正しくしてくれるんだね!
猫か魔物かはともかく、子供とペットを連れてるのを見ても気にせず通してくれるなんて、ここの兵士さんたちもすごいね!
うん、あたしを通してくれたこの兵士さんたちにも迷惑をかけないように、ちゃんとおとなしくしてよう!
お城の中ですれ違う兵士さんたちにも変な顔をされることは全然なくて、立派なお城の兵士さんは態度も立派なんだって感心しながら、パパさんとドーラちゃんのあとに着いて王さまのところに向かいます。
さすがに王さまのいるところに、ペットを連れていったらダメなんじゃないかな?
またドキドキしたけど、お城の人もパパさんもドーラちゃんも、あたし以外は誰もそんなこと気にしてないみたいで。
一応あたし魔物なのに、ほんとにいいのかな?
なんだか逆に不安になっちゃうけど、誰も気にしてないんだからいいのかな。
あたしは前世の常識で考えちゃってるけどここは違う世界なんだから、意外と本当に、これでいいのかもしれない。
うん、いいんだと思おう。
開き直ったあたしの前で王さまとパパさんがお話を始めて、ドーラちゃんはあたしを連れてその場を離れ、お城の中を探検し始めます。
うん、そういう手順だったもんね。
あたしたちがお城を探検してる間にパパさんたちのお話が終わって、ヘンリーくんのところに行って。
ヘンリーくんが誘拐されてっていう、そういうお話だもんね。
お城の人たちにお話を聞いて回るドーラちゃんの後ろで、あたしもおとなしくお話を聞いてたけど。
……なんだか、ヘンリーくんの印象が。
ゲームとは、かなり違う感じ。
ゲームではイタズラっ子だったのにみんなのお話からすると、おとなしくて優しいいい子みたいな。
そのせいで王さまに向いてないなんて言われてるみたいだけど、あたしはイタズラっ子より、優しい子のほうがいいなあ。
でもあたしとはちょっとしか一緒にはいないんだから、どっちでもあんまり関係ないけど。
ドレイになって十年間一緒にいることになるドーラちゃんは、どう思ってるんだろう。
優しいのはいいけど、やる気がないとか気が弱いみたいなのは、困るのかな。
ドレイとして働くのも、きっと大変だろうから。
あんまり気が弱かったら、一緒にいるドーラちゃんが大変かも。
ヘンリーくんの性格がゲームと違うかどうかより、それがドーラちゃんを困らせることになるんじゃないかって少し心配しながら、王妃さまとデールくんのお話も聞き終えて、お部屋を出て階段のところに戻ります。
階段のところには、兵士さんたちと一緒にパパさんがいました。
これもちょっとゲームと違うけど、ヘンリーくんの指示みたいです。
やっぱりヘンリーくんは、ゲームとはちょっと違うのかな?
ドーラちゃんは女の子で前世の記憶があるし、キラーパンサーはあたしだし。
他のことだって、違うところがあってもおかしくないもんね。
未来のドーラちゃんは知ってたはずだけど、なにも言ってなかったんだから。
すごく悪い影響のあることなら教えてくれたはずだから、違ったとしてもきっと悪いことではないんだよね。
うん、ちょっと楽しみになってきた!
ゲームの通りのイタズラっ子のヘンリーくんでも事件のあとはそのままではいられないだろうから、ドレイになってからもドーラちゃんに迷惑をかけるだなんて、そんなに心配はしてなかったけど。
もしかしたらもっといい子で、あたしがいない間もドーラちゃんをちゃんと助けてくれる子かもしれない!
実際にどんな子でもそれを見てあたしがなにかできるわけじゃないけど、それでもちゃんと見ておかなくちゃ!
パパさんと兵士さんと別れて、ドーラちゃんに着いてヘンリーくんのお部屋に向かいます。
ドーラちゃんがきちんとノックをして、ヘンリーくんのお返事を受けて、お部屋に入って。
反対側を向いていたヘンリーくんが、振り返ってドーラちゃんに呼びかけます。
「やあ!きみが、パパスのむすこかい?はじめまして!ぼくが、このしろの、だいいちおうじ!ヘンリーだ!」
ステキな笑顔に優しい声で、きちんとあいさつしてます。
うん、やっぱりゲームとは違うみたい。
あたしをいじめたバカな男の子たちと歳はあんまり変わらないと思うけど、すごく落ち着いてて優しそう!
王子さまだからかな、見た目もなんだかカッコいい気がするし!
うん、あの子たちとは全然違う!
こんな子なら、ドーラちゃんの隣にいてもおかしくないかも!
これだけでドーラちゃんに相応しい相手だなんて決め付けたわけじゃないけど、とりあえず第一印象は合格だね、なんてあたしが勝手に考えてると。
「はじめまして、おうじさま!パパスの、むすめの!ドーラ、です!」
ドーラちゃんが、変な区切りかたで自己紹介をし返してました。
あれ、そう言えば。
聞き間違いかと思ったけど、パパスの息子って。
あれ、ほんとにそう言ってたのかな?
「そうか、パパスのむす……むすめ?」
ヘンリーくんが聞き返して固まってます。
……本当に、息子って、言ってたんだ。
……ドーラちゃんが、男の子に見えるだなんて!
ちょっと、どこかおかしいんじゃないの!?
そりゃあドーラちゃんは、旅をしてるから!
町で平和に暮らしてる女の子たちみたいな、派手なおしゃれはしてないけど!
だけどそれを差し引いても負けないどころか完全に勝っちゃうくらい、ドーラちゃん自身が可愛いのに!!
なんで?王子さまだから?
派手に着飾った女の子を見慣れてるから、そうしてないと女の子に見えないの?
……許せない!
こんなに見る目のない人に、例え王子さまでもドーラちゃんは渡さないんだから!!
第一印象は合格かと思ったけど、勘違いでした!
不合格です、あり得ません!!
今すぐにも飛びかかって引っかいてやりたい気持ちをなんとか抑えてあたしがおとなしくしてる間にも、自分が女の子だと主張するドーラちゃんと、その度に聞き返すヘンリーくん。
あたしの中で、ヘンリーくんの株は下がる一方です。
「わたし。おとこのこに、みえますか?」
「……いや」
とうとう痺れを切らしたようにはっきり問いかけるドーラちゃんに、答えるヘンリーくん。
あれ。
男の子に見えてたわけじゃないの?
ならなんで、男の子だと思ったの?
ちゃんと見てないのに、なんで男の子だと思って話してたの?
……ちょっと情状酌量の余地が出てきたけど、でもまだ許したわけじゃないんだからね!
なにかの間違いで男の子だと思い込んでたとしても、ちゃんと見ればすぐにわかることなのに!
あたしの可愛いドーラちゃんを男扱いしたなんて、やっぱりちょっと許せないんだから!
場合によってはやっぱり引っかくことも検討するべきかと身構えるあたしの前で、呟くヘンリーくん。
「……そうか……そうだよな、そんなことも、あるよな……そうか、むすめで、ドーラか……リュカじゃなくてか……」
……これは。
なんだかあたしにも覚えがある、この少し混乱してしまった感じは……。
いや、でも、まさかね……。
「……おうじさま。……リュカ、って……?」
リュカ、って?
そう言えばそんなようなことも言ってたけど、それがどうしたの?
「あ、いや。なんでもないんだ」
うん、そんな誰か知らない人の、名前?よりも。
今はもっと、確認しないといけないことがあると思う!
「……おうじさま。わからなかったら、いいんですけど。この、ことばに、おこころあたりは」
「な、なにかな?」
そう、確認を!
確認を、しないとね!
ドーラちゃんとは十年間、一緒にいる人なんだからね!
……リュカっていうのも、あたしが知らないだけで、もしかしたらなにか関係ある名前なのかな?
「ドラゴン……」
「……クエスト?」
……やっぱり、そうなんだ。
ヘンリーくんも、おんなじなんだ。
「スクエア……」
「……エニックス」
そういうことなら、わかるけど。
でも、思い込みはよくないと思う!
やっぱりちょっと、失礼だと思う!
……あたしが人間でお話しできたとして、絶対に同じことをしなかったかは、ちょっと自信ないけど!
「てんくうの……」
「……はなよめ」
……うん、そう考えたら、やっぱり仕方ない部分もあるかな。
びっくりするよね、そこは。
……だからって、無条件で許すわけじゃないんだから!
あたしが許して認めるかどうかは、このあとのヘンリーくんの態度次第です!
前世の記憶がある人なら、中身は大人かもしれないんだから!
中身が大人の変な男の人を、十年間もドーラちゃんの近くに置いておくなんてとんでもないんだから、もしもそうだったら事情を知ってるあたしがなんとしてでも妨害しないと!
ドーラちゃんは、あたしが守るんだから!!
後書き
モモちゃんは小説版を読んでないので、リュカという名前を知りません。
だからどうということはありませんが。
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