ドラクエⅤ・ドーラちゃんの外伝
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キラーパンサーに転生
14パパさんとドーラちゃん
地下室を出て、ドーラちゃんがサンチョさんに桜のひと枝を預けて、サンチョさんと一緒にパパさんを探して。
サンチョさんに見送られて、サンタローズの村を出発します。
サンチョさんとも、しばらくお別れかー……。
サンチョさんはあたしよりももっと長い間、ドーラちゃんとお別れなんだよね……。
サンチョさん、あたしが先にドーラちゃんに会えたら、またちゃんとドーラちゃんを助けて、早く会いに行けるように頑張るからね!
短い間だったけどおいしいごはんと、他にもいろいろお世話してくれてありがとう!
サンチョさんも、絶対にまた会おうね!
村を出て、ラインハットのお城に向かう途中。
魔物が出て、またすぐにパパさんが倒してしまいます。
その様子を眺めながら、目配せし合うドーラちゃんとあたし。
……うん、今じゃなかったよね。
大丈夫、あたしわかってる。
次でも、ないよね。
それもわかってる。
もうちょっと様子を見て、パパさんにもドーラちゃんの様子を見てもらって。
何回か戦闘をやりすごして……それから、だよね!
そうやって、何回かの戦闘で様子を見て。
油断するわけじゃないけどパパさんがいつもの流れに馴染んできて、なんとなくこのまま進んでいくような雰囲気になったころ。
また、さりげなく目配せし合うドーラちゃんとあたし。
……次だね。
次に魔物が出たときに、特に変わったことがなかったら。
いよいよ、作戦開始だね!
急に雰囲気を変えたらパパさんに勘付かれてしまうので集中だけはずっとしていたあたしたちは、次に魔物が出現したところで、とうとう行動に移りました。
ドーラちゃんはあたしの名前を叫ぶと同時に魔物に向かい、あたしは呼ばれるのを待たずに素早くパパさんの動線を遮るように動きます。
「!」
いつものように魔物に向かおうとして妨害が入り、ピクリと反応して一瞬動きを止め、すぐに動線を変更してまた魔物に向かおうとするパパさん。
……させない!
今このとき、この瞬間のためだけに、ベラさんに手伝ってもらってたくさん練習したんだから!
いくらパパさんでも味方からの不意打ちに戸惑ってるこの状態なら、そう簡単には抜けさせない!
勝負は一瞬、あとほんのちょっとをしのげば、きっと。
ドーラちゃんならきっと、やってくれるはず……!
ドーラちゃんを信じてパパさんの動きに集中し、どんな動きにも対応できるように、でもフェイントにはひっかからないように、神経を研ぎ澄ましつつ冷静に対応し続けるあたし。
一瞬が永遠に感じるような、でも長さがどうとか考える余裕なんて全くない緊張感の中、とうとう背後から待ちかねた声が。
「モモ!やりました!」
やった?
……ほんとにやったんだね、ドーラちゃん!
「ニャー!」
やった!
あたしたち、やったんだね!
あの苦労が、とうとう報われたんだね……!!
ドーラちゃんと見つめ合い、少しの間喜びをわかち合ったあと、ドーラちゃんがパパさんに顔を向けて、呼びかけます。
「おとうさん!わたしも、すこしは、つよく、なったんですよ!もう、まものも、たおせます!」
あ、そうだ。
パパさんのこと、忘れてた。
あたしたちは、思った通りに上手くいってよかったけど。
パパさんは、どうなのかな?
パパさんはドーラちゃんを魔物に近付けたくなかったのに、こんなことしちゃって。
もしかして、怒ってるかな?
黙ったままのパパさんから逃げるように離れて、ドーラちゃんの後ろに隠れます。
どうしよう、怒らせちゃったなら、謝ったほうがいいかな?
ドーラちゃんのお願いでも、あたしがしたことには違いないんだから。
でもパパさんの大事なドーラちゃんを危ない目にあわせた悪い子みたいに思われてたら、謝っても許してもらえないかも……。
こんな悪い子はドーラちゃんの側に置いておけない、なんて思われちゃってたら……。
謝りたいけど謝るのも怖くて立ちすくむあたしを、ドーラちゃんが優しく撫でてくれます。
「モモを、おこらないでくださいね?わたしが、おねがいしたんです!」
……あたしは、怒られて済むなら、それでもいいんだけど。
でもドーラちゃんのパパが、あたしのことどう思ってるか、よくわからないから。
ドーラちゃんのせいにするみたいに、隠れちゃってごめんね。
でも、かばってくれてありがとう。
そのあと、困ったみたいに笑ってドーラちゃんに謝ったパパさんは、全然怒ってはなかったみたいで。
あたしはほっとしたけど、ドーラちゃんは逆に焦って言い訳みたいなのを始めてて。
……ドーラちゃん、どうしたんだろう?
ドーラちゃんがこんなに焦ってるの、初めて見た。
自分が悪いみたいなこと言ってるけど、ドーラちゃんは悪くないのに。
ただのわがままでこんなことしたんじゃないって、パパさんだってきっとわかってるのに。
焦るドーラちゃんにパパさんが優しくお話をして、ドーラちゃんもなんとか落ち着いたみたいだけど。
「ドーラが、父さんの娘で、良かった」
最後にそう言われたドーラちゃんは、なんだか硬い顔をしていて。
……なんでだろう、ドーラちゃんはパパさんのこと、大好きなんだと思うけど。
だから助けたいんだし、こんなこともしたんだと思うけど。
大好きなパパさんにそう言われたのに、なんで、そんな顔するの?
寂しいみたいな、悲しいみたいな。
すごく悪いことをしてしまったみたいな、そんな顔。
ドーラちゃんはパパさんのことが大好きで、パパさんもおんなじで。
お互いが大切で大好きなのに、なんでなの?
だけど、ドーラちゃんがそんな顔をしてたのは、ほんの一瞬で。
すぐにまた笑顔になって、パパさんに駆け寄っていきました。
あんな悲しい顔をしてたのなんて気のせいだったのかと思ってしまうくらいの、ほんの一瞬のできごと。
……気のせいだったのかな?
そうだったら、そのほうがいいけど。
だけど、気のせいじゃなかったなら。
見ないふりを、気付かないふりをしてしまったら、あたしはきっと後悔する。
ひとりぼっちだったあたしは、ドーラちゃんに助けてもらったのに。
あんな寂しそうな、ひとりぼっちみたいな顔をしたドーラちゃんを。
あたしが、見ないふりで、置き去りにするなんて。
あたしが、この世界でひとりぼっちだと思ってたみたいに。
大好きなパパさんと、他の人たちも一緒でも、ドーラちゃんもそう思ってるなら。
あたしは、一緒にいるんだから。
ドーラちゃんとおんなじあたしが、一緒にいるんだから。
あたしたちと同じじゃなくても、パパさんも他の人たちもドーラちゃんを大切に思ってるんだから、あたしがいなくてもドーラちゃんはひとりぼっちなんかじゃないけど。
だけどもしも、ドーラちゃんがそう思ってるなら。
あたしは、ちゃんとわかって、見てなくちゃ。
ちゃんと見てて、伝えなくちゃ。
あたしが、いるんだって。
ドーラちゃんは、ひとりぼっちなんかじゃないんだって。
お話はできなくても、あたしはずっと、ちゃんと伝えなくちゃ。
……あたしはずっと、また会えたらもう離れないでずっと、ドーラちゃんと一緒にいるけど。
でも、あたしだけじゃなくて。
ドーラちゃんをちゃんと見てくれて、わかってくれて、支えてくれる。
そんな人が、他にもいたらいいのに。
あたしも、ドーラちゃんを支えるけど。
だけどきっと、あたしじゃできないことがあるから。
キラーパンサーで、中身もドーラちゃんより幼いあたしでは、できないことを。
してくれて、ドーラちゃんがひとりぼっちじゃないってわからせてくれて、幸せにしてくれる、そんな人がいたらいいのに。
そんな運命の相手みたいな人が、都合よく見つかるなんて思わないけど。
でも本当に、どこかにいたらいいのに。
気のせいかもしれなかったけど、でもドーラちゃんがあんまり悲しそうだったから、それを見た気がしたあたしがあんまり悲しくなってしまったから、そんなありそうもないことまで考えてしまったけど。
だけど、そんな人がいなくても。
あたしは、あたしだけは絶対に、ずっと一緒にいるからね。
だから、ドーラちゃん。
あたしはちゃんと待ってるから、絶対にあたしを、迎えにきてね!
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