パンデミック
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第三十二話「化け物の統率者」
ーーー【エクスカリバー本部・第1装甲壁】
第1装甲壁のゲートも、既に耐久力が限界に近づいていた。
ゲートは大きく歪み、隙間から無数の感染者と生物兵器の姿が確認できた。
いよいよだ。ゲートが破られ、化け物共が流れ込んでくる。
「よし………やってやるさ…」
「クッソ…………腹ァ括ったはずなのになぁ……」
「だらしないよ、男共……あたし達みたいな女だって覚悟してんだからさ……」
「ここでくたばったら……悔いが残るばかりだ」
第1装甲壁のゲート前で身構える兵士達は、恐怖と緊張を紛らすように、言葉を交わした。
バキン。ガギン。
叩くような、削るような、鈍い音が鳴り響く。そして………
ガギィィィィン!!
大きな音を立て、ゲートが破られた。
その瞬間、ゲートから無数の感染者と生物兵器がエクスカリバー本部内に侵入してきた。
「行くぞぉぉぉぉぉ!!」
ーーー【エクスカリバー本部・第1装甲壁外】
一斉に感染者と生物兵器が動き出した。
サジタリウスは、酒を飲みながらボンヤリと、その様子を眺めていた。
その横には、ハンター(=突然変異種)が2体。しかし、ハンターはサジタリウスに襲いかかってこない。
それどころか、まるで犬のように、腹這いに座ってじっとしている。
それを当然というような態度で、酒を呑気に飲み続けている。
「ゴクッ、ゴクッ………あ~あ、暇なもんだな……」
頭をボリボリと掻きながら辺りを見回す。
何もない。
すると………
「お?あれは……」
ゲートから、3人の兵士が出てきた。
化け物のあまりの多さに、怖じ気づいて外まで逃げてきたか?
「…………………………」
心底暇そうな顔をしていたサジタリウスの表情が、嬉々とした表情に変わった。
やっと仕事ができる。
サジタリウスの目に、変化が表れた。
黒目の部分が、赤黒い爬虫類のような目に変わった。
『命令する。あの兵士共を、喰い殺せ。』
この言葉を聞いた瞬間、今まで座っていたハンターが、2体とも起き上がり咆哮した。
「グガァァァァァァァァ!!」
脚の筋力を最大行使し、地面を抉りながら兵士に向かって駆け出した。
僅か数秒で兵士の元にたどり着き、兵士達をあっという間に喰い殺した。
これこそが、サジタリウスの"適合能力"だ。
"感染生物の統率"
知性が無いハンターや、生物兵器を統率する能力。
空気中に、自身の細胞を含んだウイルス胞子をばらまく。
それを吸い込んだ感染生物は、サジタリウスの細胞に侵食され、同化する。
要するに、サジタリウスと同じ細胞を強制的に、体内に有するということだ。
しかし、この能力には弱点がある。
感染していない生物には、全く効果がないことだ。
人間が吸い込んでも、体内でウイルス胞子が白血球によって死滅するからだ。
だが、サジタリウスにとって、この弱点は大した問題にはならない。
化け物共を統率できれば、何も問題じゃない。
「さてさて………俺自身は大した能力持ってないんだ。俺の代わりにしっかり働いてくれよ、化け物」
禍々しい笑みを浮かべて、化け物の統率者がエクスカリバー本部に入り込んだ。
後書き
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