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魔法少女リリカルなのは ViVid ―The White wing―

作者:鳩麦
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第一章
  一話 彼等の現在状況

 
前書き
一つ目 

 
高町ヴィヴィオは、次元世界中心都市、ミッドチルダ在住のStヒルデ魔法学院に通う初等科、第四学年生の少女である。
歳は10歳。容姿としては長めの金髪と、光彩異色の瞳が特徴的だが、それを除けばごくごく一般的な元気のよい少女と言ったところだろう。
無論、外見上の話では有るのだが。

さて、今回は、彼女の一日の始まりから覗いてゆく事にしよう。
なお、こういった表現を使うと作者がまるでロリコンのストーカーのように思われてしまうかもしれないが断じて否である。そこははっきりと言わせていただく。

朝。彼女は基本的には、母親である高町なのはと共に家を出る。

高町なのはは「公務員」として時空管理局で働いており、名実ともに優秀な魔導師だ。歳は今年で23だが、娘を持っているせいかどこか落ち着いた雰囲気を持っており、若々しい容姿とは裏腹にどこか母親らしさが有る。

「あ、ヴィヴィオ、今日は始業式だけでしょ?」
「うん、そーだよ?」
スキップ調子に玄関先の段差を駆け下りた娘に、母であるなのはが声をかける。

「今日はママもちょっと早く帰って来られるから、晩御飯はヴィヴィオとクラナの進級お祝いモードにしよっか?」
「いいねー♪」
晩御飯に「モード」が有るのかはともかくとして、言わんとする事は理解できるためあえて何も言わない事にする。
ともかく、喜んで同意した娘に向かってなのはは膝を屈めて背丈を合わせると……

「さてそれじゃ!」
「うん!」
「「行ってきまーす!!」」
元気に笑顔でハイタッチ。
なんとも仲むつまじく、二人の容姿のせいでなんとも眼福な朝の一コマであった。

────

Stヒルデ魔法学院は、ミッドチルダ首都、クラナガンの中央部に位置する聖王教会系列の魔法学院である。

学年は初等科、中等科、高等科、そして大学まで一通りの学年層を有しており、学力的にはミッドチルダ内でもかなり上位に入る。長い歴史と伝統を併せ持つ、絵にかいたような名門学校である。

そのためか、どこかお嬢様気質な部分を持つ生徒もおり、校舎の前では新学期初日として登校してきた生徒の「おはよー」や「げんきー」に交じって。「ごきげんよう」等も混じっている。

登校してきたヴィヴィオに最初に声をかけてきた人物の挨拶も、そんな「ごきげんよう」だった。

少しおとなしめな声の「ごきげんよう」と、快活な声の「おはよー」は振り向いて居たヴィヴィオにとっては聞きなれた二人の友人の声。

銀色がかった髪の少し清楚なお嬢様と言った容姿の少女、コロナ・ティミルと藍色が勝った黒髪に白い八重歯が特徴的な元気少女、リオ・ウェズリーである。

「コロナ!リオ!」
駆け寄り、新学期の顔合わせに笑い合う。

「クラス分けもう見た?」
「見た見た!!」
「三人一緒のクラス!!」
コロナの問いにヴィヴィオが答え、リオが締める。そしてここでも……

「「「いえーい!!」」」
三人で息ぴったりのハイタッチ。本当に元気が良い。

それを見た上級生たちにクスクスと笑われ、羞恥で三人が顔を赤く染めたのは御愛嬌と言う物だろう。

────

さて、彼女等の話は此処までとして此処からは我らが主人公、高町クラナの話をさせていただこう。
少々うるおい成分は少なくなるが、ご理解とご協力を頂きたい。

「…………」
高町クラナの今日の予定はヴィヴィオと同じ。始業式のみである。
クラナは矢張りこれもヴィヴィオと同じ、Stヒルデ魔法学院の高等科二年生。校舎はヴィヴィオ達とは違う場所にある。

「よぉっ!クラナ!」
「わっ……あぁ、ライノ」
「なんだぁ?相変わらずそっけねぇなぁ」
「愛想振りまく方が変だよ……」
自席について居たクラナに後ろからボンっと背中を叩いたのは、ライノスティード・ドルク。愛称はライノで、クラナがクラス内で最もよく話す友人である。

「お前今日午後予定は?」
「……ごめん」
「ん、そうか!んじゃまた今度な……所でおまえ長期休暇の宿題終ってる?」
「はぁ……はい」
言うと同時に、クラナがホロキーボードをライノの方へとやり、ライノはそれを「サンキューサンキュー」と言いながら嬉々として受け取る。

ライノが言っているのは、新学期前に出されていた課題の事である。まぁ何処の世界、何処の時代にもこういったのをやって来ていない奴と言うのは居るもので、クラナは良くライノにこう言った宿題を移させてやっている。

その代わりに、クラナは飲み物代やちょっとした間食の費用が浮いたり、さまざまな方法で恩恵を受けている。

「……ライノ、先生来たよ」
「お?おぉ、サンキューなクラナ。このお礼は必ず!」
「……はいはい」
そう言って自席戻って行くライノを、クラナはため息交じりに苦笑して見送る。

そんな調子で、クラナの新学期一日目は過ぎて行った。

────

帰り際。
クラナの耳に、愛機の念話が届く。

『相棒、メールですよ』
「ん……だれから?」
『ヴィヴィオさんです』
「…………」
はつらつとした女性の声で話すクラナのカバンに掛けられたペンライトが彼のデバイス。《アクセルキャリバー》、愛称は《アル》だ。
その名の示すように、有る救助隊員と陸戦部隊の姉妹が持つデバイス。《マッハキャリバー》と、《ブリッツキャリバー》を元に作られたデバイスだ。と言っても、性能や得意分野等はだいぶ異なるが……まぁ、なんにしても、特注である事に変わりはなない。成程、中々どうしてブルジョアである。

『どうしますか?相棒?』
「ん……ちょっと待って」
『はい』
クラナは無言で歩きだすと、校門を出て帰途に就く。
少し学校から離れてから、彼は言った。

「開いて、アル」
『はい』
目の前に少し大きめのホロウィンドウが開かれる。そこに映っていたのは妹である金髪の少女と、その友人であるはずの黒髪、灰色がかった銀髪の少女の写真。
三人並んで、楽しそうに笑ってうつっている。おそらく始業式の後に取ったのだろう。

「はぁ……」
『可愛らしいですね』
「…………」
クラナは一度呆れたように溜息をつくと、その写真ファイルを無言のまま指先でドラッグし……

『あ』
「……」
もえないごみ、と書かれたごみ箱型のホロ表示の中に重ね、指を離した。当然、画像データはそのファイルの中へと消え去る。

『相棒……やめませんか?それ』
「……」
『……ふぅ、返信はどうしましょう?』
「くだらない物送るな」
『はい』
言われたアルは彼の言う通りに文章を打ちこんだ後、「申し訳ありません。落ち込まないで頂ければ幸いです。 アル」と打ち込んで、メールを送信した。

「…………」
クラナは無言で歩く。

────

此処まで来ると言うまでも無いかもしれないが、高町ヴィヴィオと高町クラナ。この二人の兄妹仲は……実はあまり宜しくない。


ちなみに、ヴィヴィオの方はどうかと言うと……少しメールが返ってきたヴィヴィオの様子を覗いてみよう。

────

放課後の寄り道、彼女達は小学生にしては出来すぎたほど健全な場所……市内の公共図書館に来ていた。
実はヴィヴィオ、非常に読書家で有り、初等科三年生のときには既に時空管理局の巨大書庫である、無限書庫の司書資格を取っていると言う中々の頭の持ち主である。というか当時9歳の子供に司書資格とかそれでいいのか管理局……

ま、まぁそれは置いておいて、とにかくヴィヴィオは本が大好きであり、この図書館にもしょっちゅうやってくる。その中の読書スペースで、彼女達はおしゃべりに興じていた。余り図書館でお喋りよ言うのは感心しないが……そこは御愛嬌だ。

「あ、ママからメール返ってきた」
ヴィヴィオが自らの携帯端末を見ながら言う。
司書資格まで持っている彼女だが、実は彼女、自分のデバイスはまだ持っていない。と言うのも、母親であるなのはの教育方針上、「魔法や戦技については基礎を勉強し終えるまでは自分専用のデバイスとかいりません」と言うのが彼女の方針なのだ。流石は現役戦技教導官。そう言った所には厳しい。
自身は九歳の頃に行き成り現在の相棒である《レイジング・ハート》を手にし、即座に空中戦やら誘導弾、砲撃などを含む射砲撃、挙句の果てには収束魔砲等をぶっ放していたとは思えないしっかりママぶりだ。

と、まぁそれも置いといて……とにかく、ヴィヴィオは自らのデバイスを持っていない。そのため自動的に、今のような通信用の携帯端末を持つだけに留まっているのだ。

「何かご用事とか?」
コロナが聞く。10歳の少女が“ご”用事という言葉を使う辺り、やはり中々どうして彼女たちもお嬢様だ。

「あー、へいきへいき、早め帰ってくるとちょっと嬉しい事が有るかもよ。だって」
「そっか。じゃ、借りる本決めちゃお!」
「うんっ!」
リオがそう言うと、三人は元気よく立ちあがる。と、そんなヴィヴィオの携帯端末に、もう一通のメールが届いた。

「あ、お兄ちゃん……」
「え?ヴィヴィオのお兄さんから?」
「う、うん」
恐る恐る、と言った様子で、ヴィヴィオはメールを開く。そうして、少しだけ傷ついたような、悲しげな表情をした。

「ヴィヴィオ?」
「どうしたの……?お兄さん、なんて?」
「う、ううん!別に何でも無いよ!早く帰ってこい、だって!いこっ?」
「う、うん……」
丸で無理に笑うようなヴィヴィオの表情を見て二人は不安げに顔をゆがめたが、しかし手そのまま本棚の方へと向かって行くヴィヴィオを止めることは、二人とも出来なかった。

────

と、こんな感じである。
なんとも、上手くいっていない兄妹。と言うのが今の高町兄妹の現状だ。
しかして、どんなに上手くいっていなくても、高町ヴィヴィオが高町クラナの戸籍上における義妹である事には変わりはない。

誰が何と言おうと、彼等は兄妹なのだ。
 
 

 
後書き
地の文がおかしいのは、少し変わった地の文を試してみたくなったからです。 
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