ドラクエⅤ主人公に転生したのでモテモテ☆イケメンライフを満喫できるかと思ったら女でした。中の人?女ですが、なにか?
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二部:絶世傾世イケメン美女青年期
百二話:あくまで人助けです
前書き
比較的暴力的な表現があります。
言うほど酷くは無いと思いますが、極端に苦手な方はご注意ください。
イベントの気配に惹かれて近付くと、村人に絡んでいたゴロツキどもがこちらに気付き、睨み付けてきます。
「ああん?なんだ、おめえは!女みてえなキレイな顔しやがった優男が、一丁前に文句でもあんのか?」
女みたいというのはこの場合、馬鹿にされてるんでしょうね!
みたいっていうか、女なんですけどね!
なんにしてもそんな安い挑発に引っ掛かる私では無いので、にっこりと。
営業スマイルっぽい事務的な笑顔を浮かべて答えます。
「文句というのでは無いですが。その方は嫌がっているようですし、騒ぐのも店に迷惑になりますから。その辺にしておいてはどうですか?」
馬鹿にされてるとでも思ったのか、ゴロツキどもの額に青筋が浮かびます。
馬鹿にというか、挑発はしてますけれども。
ゴロツキどもの雰囲気が変わったのに気付き、後ろの村人さんが慌てて口を挟もうとしますが。
「あんた!そんな細っこい腕して、こんなガラのわりいのに、ケンカ売るような真似して!悪いこた言わねえ、早く逃げ」
「おっと!今さら逃げようったって、そうはいかねえ!」
二人いるゴロツキの一人がすかさず遮り、さらにもう一人が私に近付きながら言葉を続けます。
「だな。人を小馬鹿にしたような、涼しげな目ェしやがって。そんなキレイな顔で、さぞかしチヤホヤされて、楽な人生送ってきやがったんだろうな?」
うーん。
チヤホヤはされてきたし、放り込まれた環境の割には楽な人生送ってきたと思うけど。
楽な環境を作るためにやることはやったし、それなりに戦う力がありながら安易な方向に流れてこんなとこで腐ってるゴロツキに言われるほど、楽はしてないと思うんだが。
……まあ、ただしイケメンに限る!
の限られる側にこれほど縁の無さそうな輩も、そうはいないからね!
どこからどう見てもイケメンな、男装中の私が嫉妬されるのも致し方ないね!
こんなヤツらのために、説教して正してやろうなんて気は無いし!
「……そうかもしれませんね。でもそれが、何か関係ありますか?」
よって、さらに挑発します!
つまんないイヤミとかもういいんで、さっさと始めるなら始めて欲しい。
先に手を出してもらわないと、こっちが悪いみたいになっちゃうし。
チョロいことにまた挑発に引っ掛かったゴロツキどもの表情が変わり、拳を握って指を鳴らします。
「……本当に、気に入らねえ野郎だ。世の中、なんでもおめえの思う通りにはならねえってことを、思い知らせてやる!」
そんなことは、もう知ってます。
それを知る必要があるのはキミたちだと思うが、こういうことはそれこそ身をもって思い知らせてやらないとね!
言葉などもはや不要、語るならば全て、肉体言語で!!
宣言とともに殴りかかってきたゴロツキの一人目の拳を躱して腕を掴み、捻り上げます。
「いだだだだ!は、離しやがれ!」
「てめえ!調子に乗りやがって、アニキを離せ!」
さらに思いっきり殴りかかってきた二人目の拳を、一人目を盾にして受け止めます。
「ぐわっ!てめえ、なにしやがる!」
「す、すまねえ、アニキ!だけど、そいつが」
頭悪いなあ。
仕方ないか、ゴロツキなんだし。
怯んだ二人目が距離を取ったところで、捻り上げていた一人目の腕の位置を変え、胸ぐらを掴んで投げ飛ばす体勢に入ります。
「は、離せ!……くっ、どこに、そんな力が」
どこでしょうね?
鍛えても腕がムッキムキに太くなるなんてことは無かったし、ステータスの神秘ですね!
なんてことを思いながらも特に返事はせず、必死に振りほどこうとする一人目の足掻きは物理的にも感情的にも完全に無視して、なんの抵抗も感じずに二人目に向かって投げ飛ばします。
「あ、アニキ!?え、避け、受け……う、うわああああ!!」
「ぎゃああああ!!」
一人目の巨体が軽く宙を舞ったのに呆気に取られ、避けるとも受け止めるとも決めきらずにまごついていた二人目が、飛んできた一人目にまともにぶつかって、巻き込まれて諸共に吹き飛びます。
二人目の行動がどっちつかずだったせいで、普通に床に着地するよりもダメージが大きくなった一人目も、痛みと衝撃に悲鳴を上げてます。
一人目が舌打ちし、二人目に向かって悪態を吐き始めます。
仲間割れとは、余裕ですこと。
「ちっ……この、グズが!避けるなり受けるなり、すぐに決めるくらいできねえのか!」
「す、すまねえ、アニキ。でも避けたら怒られるし、受けるなんてオレにはできねえし」
「とにかく、早く起き上がって……いててて、体が」
「アニキ、早くどいてくれよ!」
床に縺れ合って転がったまま、なんかごちゃごちゃ言ってるゴロツキどもにゆっくりと歩み寄ります。
ゴロツキどもが、小さく悲鳴を上げます。
「ひっ!……ま、待て!今、起きるから、ちょっと待て!」
「そ、そうだ!待てよ、卑怯者!」
「卑怯者……?」
歩みを止めずにさらに近付き、重なって倒れているゴロツキ二人をまとめて踏みつけます。
「ぐはっ!な、なにしやが……」
「ぐえっ!ぐ、ぐるじい……」
「卑怯者とは、誰のことですか?まさかとは思いますが、私のことですか?」
ぐりぐりと足に力を込めながら、問いかけます。
「ぐあッッ……!やめ……!」
「ぐうッッ……!ぐるじ……しぬ……!」
「卑怯者とは、誰のことですか?恐喝を言葉で止めようとした、私ですか?他人の大切なお金を巻き上げようとした挙げ句、格下と見た相手を、二人がかりで痛め付けようとした誰かのことではないですか?」
さらにぐりぐりと踏みにじりながら問いかけ、不意に思い出したように力を緩めます。
「ああ、これでは答えられませんでしたね。もう一度、聞きますが。……誰が、卑怯者ですか?」
「ごほっ、ごほっ!……お、オレたちです!オレたちが、卑怯者です!」
「げほっ、げほっ!……そ、そうです!アニキと、オレが、卑怯者です!」
正しい答えを返せたゴロツキどもに、踏みつけたままではありますがにっこりと微笑みかけます。
「そうですか。そうですよね。……でも、おかしいですね?確か、何かを教えて頂けるはずだったと思いますが。まだ、教えて頂いて無いようですけれど。……確か……世の中が、どうとか。……なんでしたっけ?」
踏みつけた足の下で、ゴロツキどもがビクッと震えます。
「……そ、……それは……」
「……世の中、なんでも」
「馬鹿!黙れ!」
「なんですか?答えてください、なんでしたか?」
冷や汗をダラダラと流して黙り込む一人目と、問い詰める私と止める一人目の板挟みでまごつく二人目。
「……返事が、ありませんね?……仕方ありませんね」
笑顔を引っ込め、また足に力を込めようとする私に、一人目が焦って口を開きます。
「ま、待ってくれ!教えるんじゃない、教わるんだった!世の中、なんでも思った通りにいかねえって!オレたちが、アンタに、教えてもらうんだった!」
正しそうな答えが返ってきたので、ひとまず力を込めるのは止めます。
「おや、そうでしたか。そうだったかもしれませんね。それで……わかったんですか?」
無表情で問いかける私に、一人目が激しく首を縦に振りながら、勢い良く答えます。
「わかった!わかったから!もう、許してくれ!」
「オ、オレも!わかった!許してくれ!」
「……どうしましょう。わかったところで、またするのであれば。やはり、野放しにはできませんよね、人として。……他に何か、言うことはありませんか?」
「しねえ!もう、しねえから!だから、許してくれ!」
「オレも!オレも、もうしねえ!絶対、しねえ!」
「そうですか。それは、良かった。安心しました、人として。……ところで」
一度また微笑み、さらにまた無表情に戻って、言葉を続けます。
「……私は、モンスター使いですから。モンスター使いのネットワークで、離れていてもこの町の情報が受け取れます。……もしも、嘘だったら。……わかりますよね?」
「……わかった!嘘じゃねえ、絶対に、もうしねえから!」
「しねえ!本当に、絶対に、しねえ!」
「そうですか。それなら、本当に安心ですね。……ところで」
また一度微笑み、さらにまた引っ込めて困った顔を作ります。
「あなたたちを許すのは、私ではありませんよね?誰に、許しを乞うべきですか?誰に、謝ればいいんでしょうね?」
私の問いかけを正しく理解し、一人目が村人さんに呼び掛けます。
「…………おい、あんちゃん!オレたちが、悪かった!もうしねえから、許してくれ!頼むから、この人になんとか言ってくれ!」
「そ、そうだ!悪かった、許してくれ!」
「え?ええ、え?」
突然話を振られて、村人さんが動揺してます。
基本的に善良な村人さんには、優しくフォローをする必要がありますね!
村人さんは何も悪くないので、あくまで柔らかい声で、優しく問いかけます。
「そこの方。この人たちはこう言っていますが、どうしますか?もしも許せないというのであれば、私も乗りかかった船です。言葉でどう言っても嘘かもしれませんし、物理的に再犯が不可能な程度にまで痛め付けることもできますが」
「ひッッ!やめッッ!」
あくまで村人さんに向けての親切心で言い放った私の言葉にゴロツキどもが悲鳴を上げ、村人さんが慌てて答えます。
「い、いらねえ!そこまでは、しねくていいから!許す!もうしねえなら、金も無事だし、おらは許すから!見逃してやってけれ!」
「そうですか。被害者であるあなたがそう言われるなら、仕方ありませんね。……あなたたち。彼に、感謝することですね」
本気でそこまでするつもりだったわけではありませんが、さも残念そうに言い捨てて、ゴロツキどもの上から足を退けます。
心底安心した様子のゴロツキどもが、床を這いずって村人さんに近付き、足下に縋り付きます。
「あ、ありがてえ、ありがてえ……!あんた、なんていい人だ……!」
「うう、オレたち、ホントに最低だったよ……!これからは、真面目に生きていくから……!」
「ん、んだか。うん、頑張ってな」
泣き崩れるゴロツキどもにドン引きしながらも、励ます言葉をかける村人さん。
うん、いい人だねえ。
思ったよりもストレスが溜まっていたのか、適当に済ませるつもりが予定よりやり過ぎて、図らずも改心させてしまったが。
村人さんの恩人ポジションも含めて、なんだかいい感じにまとまったようで良かった。
なおも村人さんにお礼を言いながら体を引きずるように立ち去るゴロツキどもを見送ったところで、村人さんがこちらを振り返り、駆け寄ってきます。
「あんた!見かけによらず、強えだな!んだ、あんたなら信用できる!おらの頼みを、聞いてけれ!」
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