ドラクエⅤ主人公に転生したのでモテモテ☆イケメンライフを満喫できるかと思ったら女でした。中の人?女ですが、なにか?
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二部:絶世傾世イケメン美女青年期
百一話:港町ポートセルミ
前書き
ずいぶん先の妄想に耽りすぎて手前が疎かになってたとか、Ⅵを更新するまでこっちを一旦止めようと思ったらどっちも止まるだけの結果に終わったとか、諸々のストレス解消も兼ねて今さらⅤを再プレイしてみるとか。
色々あって、止まってました。
開き直って、やっぱりこっちを書きました。
妄想で成り立ってる人間が、義務感でなんとかしようとしても無理だと思い知りました。
開き直りました。
船で一夜を明かし、航海を続けること更に一日。
折角の機会なので後学のために船の操作を教えてもらおうと、船員さんに近付こうとしては止められ。
通りすがった船長さんに声をかけようとしては止められ、こちらに目を留めた船長さんにビクッとして逃げられ。
色々と迷惑になるっぽいので船員さんたちとの接触を諦めて船室にこもり、アルカパで買ってそのままになっていた材料を用いて縫い物を始め。
ほぼ一日がかりで無事に仕上げて、更に船内で一泊した翌日。
港町ポートセルミに、到着しました!
「やっぱり港町は活気があるね!ただ港があるだけの、ビスタとは違うね!街並みもお洒落だし!」
ヘンリー以外の仲間たちの手前言えないが、前世での地中海あたりの街並みを思わせるような!
白い建物が多くて、明るい雰囲気です!
圧制下のラインハットの重苦しい空気を経験した後だけに、うきうきしますね!
浮かれる私をなんだか微笑ましそうに見やりつつ、ヘンリーが答えます。
「そうだな。今日はここで一泊するよな?町、見て回るか?」
「うーん。もう暗くなってきたし、昼間にやりたいことあるし。今日はいいかな」
前世と違って、電気の明かりが輝く夜景の美しさとか無いし。
夕焼けも星も船上で散々堪能したし、のんびり観光するならモモと合流してからでいいし。
この後イベントもあるだろうし、今回は用件を済ませることを優先していきたい。
「そうか。なら、宿に行くか」
「うん」
ということで、真っ直ぐ宿に向かいます。
……ここの、宿ではね!
色っぽい踊り子さんたちの、ステージがあるはずですからね!
強引に振り切って逃げ切るというのがほぼ不可能だとわかった以上、円満に別れるにはヘンリーの嫁を探すのが一番!
私よりも一緒にいたくなるような可愛いお嫁さんが見付かれば、私に着いてくるどころでは無いだろう!
そして次点で、私の婿を探すこと!
私が誰かと結婚してしまえば、新婚夫婦の旅に着いてくるほどヘンリーも野暮では無いだろう!
本当に要らなくなれば離れるとか言ってたし!
そんなポイ捨てみたいなことはしたくないから、できれば先にヘンリーの嫁を見付けたいけれども!
ヘンリーが夢中になれる可愛いお嫁さんを探すには、まずは好みを把握しないといけないし!
正しい嫁探しの第一歩として、踊り子さんのステージ観覧を通して、本格的にリサーチを開始しないと!
ということで、宿に入って部屋を取り。
あのイベントは無いのかなー、とキョロキョロしてみるも、まだ起こらなかったのでとりあえず部屋に入り。
荷物を下ろして、不自然で無い程度に武装はした状態で、夕食を取りに宿の食堂兼酒場に向かいます。
食事を済ませ、食後の飲み物を飲みながらステージを鑑賞する途中、トイレに行くフリで席を外します。
それはマナーとしてどうなんだという話だが、そんな理由でも無いと誰かしら着いてきてしまうので!
一人で離れて遠くからこっそり様子を見たいので、これは仕方がない。
男装中とは言っても実際は女の私が隣にいたらヘンリーがステージに集中できないかもしれないし、折角キレイなお姉さんが近寄って来てくれても私が持っていってしまうかもしれないし!
女性の格好でも男装してても、私が隣にいるのは嫁探しの障害にしかならんのですよ!
というわけで、ヘンリー他仲間たちから一人離れて目立たない物陰に潜んで気配を消して、遠くからヘンリーの様子を観察します。
たまに近くを通りかかった客の男性に見付かってビクッとされますが、適当に微笑みかけて誤魔化せば赤くなって動揺されて。
「オレは!オレはノーマルだ!……その、はずだ!」
「……ふふ、ふ、船旅が、長かったから!女日照りが長かったから、少しおかしくなってるだけだ!クラリスちゃんだ、クラリスちゃんを見れば!」
なんかブツブツ呟いて、踊り子さんたちのいる方向に向かって一目散に去って行ってくれます。
……多少、不審に思われても!
騒ぎにならないなら問題無い、旅の恥はかき捨てって言うし!
一瞬妙な衝動を覚えられたとしても、目の前には素敵な踊り子さんたちがいるんだから!
大丈夫、問題無い!!
と、モブのみなさんのことは全く問題無いので置いておいて、問題のヘンリーですが。
なんとなくステージに目をやってはいますが、特に誰かに注目したり、食い付いたりということは無いようですね。
いないんだろうか、この中には。
好みのタイプが。
……肌も露に色っぽい踊りを見せてくれる踊り子さんたちを目の前にして、何の反応も示さないとは。
大丈夫なんだろうか、(体は)若い男性として。
一番人気のクラリスさんとか特に、美人だしスタイルもいいし、多少好みから外れてたとしても、目で追うくらいしてみてもいいんじゃなかろうか。
ちょっとくらい、赤くなってみてくれたって。
…………って、はっ!
……耐性か?
耐性が、付いてしまったからか?
ドーラちゃんという超絶美女を近くで散々眺めて接触もして、耐性を獲得してしまったから!
ちょっとやそっとでは、反応しなくなってしまったのか!?
私の、せいか!!
……どうしよう、ビジュアル面でドーラちゃんと張れるくらいの相手ってなると、かなりハードルが上がるんですが。
ぶっちゃけ、この中だといないかもと思うんですが。
好みによってはクラリスさんあたりはいけそうな気がするが、どうも好みでは無さそうだし。
可能性としてビアンカちゃんフローラさんあたりはいけそうかもと思うが、相手の気持ちと、やっぱり好みの問題があるし。
……いやいや、待て待て。
結論を焦るな。
かつてヤツが言ったことを、思い出すんだ。
『好きになった相手が、タイプだろ』
(四十七話参照)
そうだ、確かにそう言った。
外見から入って特に好意を持てなくとも、中身に惚れて、絆されてってことはあるんじゃなかろうか。
いや、あるだろう、きっとある。
中身に関して言えば、私の残念さといったらヘンリーも認めるくらいなんだから。
それならドーラちゃんというか、私に勝てる女性はいくらもいるというか、むしろ負ける相手を探すほうが難しいというか。
よしいける、大丈夫だ。
やはり人間、中身で勝負だ。
とは言えヘンリーのほうから他の女性に近付いて行くってことは、私を最優先にするヤツの行動を見るに、現状では無いだろうから。
ここはヘンリーに好意を持って近付いてきてくれるお嬢さんを、積極的に応援していくべきですね!
いい感じの人柄のお嬢さんをね!
見たところ今日のお客さんの中に私とヘンリー以上のイケメンはいないようだし、私は隠れてるし!
もう少し待てば、きっと誰かが言い寄ってきてくれるはず!
よし、もうちょっと様子見よう。
と、待つことしばし。
トイレに行っただけにしてはやけに遅い私を気にしてか、ヘンリーが辺りを見回し始めた頃、ステージが終わって踊り子さんたちが客席に降り、ヘンリーを取り囲みます。
……よし!来た!
「お兄さん!ずっと見ててくれたわね!私の踊り、どうだった?」
「私を、見ててくれたのよね?こんな素敵な人に見てもらえるなんて、嬉しい!ね、良かったら、このあと二人で」
「ちょっとー、思い込みはやめなさいよ、図々しい。お兄さん、そんなのほっといて一緒に飲みましょう。ね、お名前は?」
「あ、私、お酌しますね!普通はこんなのしないんだけど、特別!」
囲まれ過ぎて、もうヘンリーが見えません。
踊り子さんがキャッキャし過ぎてて、ヘンリーがなんて答えてるかも聞こえませんが。
……まあ、あれだけ綺麗どころに囲まれて、チヤホヤされれば。
男として、悪い気はしないだろう。
たぶん。
と、あまりにも囲まれ過ぎると個人的に親睦を深めるには逆効果なんではないかというちょっとした嫌な予感は頭の隅に追いやり、折角ヘンリーが獲得した人気をさらってしまわないように気配を消したまま、見えなくなったヘンリーから目を離して周りを見回すと。
「おい!さっさとその金を寄越しな!」
「いや!これは、村のみんなから預かった、大事な金だ!あんたらにゃ、渡せねえ!」
「金を預かるのが仕事ってわけでもねえだろ。おめえの頼みを聞いてやろうってんだから、おとなしく渡せばいいんだよ!」
「いんや!あんたらは、信用できねえ!おらは、腕が立って信用できる相手を探して」
「強情なあんちゃんだぜ!」
……イベントの気配です!
ヘンリーのついでに仲間たちも囲まれて身動きが取れないし、近頃は脇役に回ったり守られたりばっかりで少々鬱憤も溜まってたし!
ここはひとつ、私が一人で!
ストレス発散……いやいや、華麗に人助けをしてみるとしましょう!!
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