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黄昏アバンチュール

作者:どるちぇ
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仮入部


5.

今日から仮入部が始まる。
先輩たちから去年は人がほとんど来なかったという恐ろしいことを聞いていたので、
とりあえず誰でもいいから入ってくれれば良い、くらいにしかかんがえていなかった。

しかし、実際に部活が始まると一年生が大量にやってきた。
体操経験者の子、ダンス部と迷っている子、なんとなく来てみた子、新歓の演技に惹かれてやってきたという子。

四人いる部員で部長の浅尾は説得担当、黒瀬くんは説得と、実際に演技を見せる担当、そして私と三浦は指導担当、と役割分担を決めていたのだが想像以上に人が来たのでその分担すらもままならなくなっていた。


最後の方はみんなで黒瀬くんの演技を見る発表会になっていた。
黒瀬くんは幼稚園のころから体操をやっている経験者なのでとても上手い。
高校から始めた人などは床なんからすぐに上手くなる人が多いけれど、器具なんかはさっぱり、と言う人が多い。

それに比べ黒瀬くんは六種目すべてできる上に、すべての技が綺麗だ。
その上、体操らしいがっちりとした筋肉のつき方をしているので風貌が完全にコーチのようである。



一年生は最初は少し早い時間に家に返されるので、片付けは私達二年生しか残っていない。


「今日、すごい人だった…」
「入ればいいんだけどな」
気づくと部長のが隣に立っていた。
「そこが問題なんだよね、たとえ見に来ても結局怖いって言ってやめちゃう人もいたし」
「まぁ、そもそも体操は怖い怖いって言ってたら始まらないしな」
「平均台とか最初のぼったときは死ぬかと思ったよ…オリンピックの演技とかわかってはいるけど未だに信じられない」
「あいつらは人間じゃないんだよ」
「そうかもしれない…」


片付けを終えて部室に戻ると黒瀬くんがプリントを広げてメールを打っていた。
「それ何?」
「今日来た人達の連絡先、結構興味を持ってくれた人達にはアドレス聞いといたんだ」
「頭いいね」
「黒瀬、お前は男子を頼む」
「女子は?」
「俺がやる」
「…」

相手が女子だから張り切っているのだろうが…何とも言えない頼りのなさ
、すごく不安だ…





そして次の日の部活には一日目ほどの人は来なかったが、二日目の仮入部にきた一年生達はもうみんな入る気でいたのでその場で入部届をかいてもらった。

その場で入った一年生は女子三人、男子二人。
そして、浅尾の説得がきいたのかどうかはわからないが、女子があとから二人。

結局、七人の一年生が入ってくれた。
こんだけの人数がいれば、廃部にされることもないだろう。


初めてできた後輩、という存在に花乃子は胸が躍った。 
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