黄昏アバンチュール
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黄昏の火曜日
4.
ジリリリリリリ…
私は目覚ましの音で目が覚めた。今日は火曜日だ。放課後のことを考えると胸が踊る。
そのおかげか、今日は布団から出るのが少し楽だった。
なり続けていた目覚ましを止めると、クローゼットをあけて着替えをはじめる。
この制服も慣れたもので最近は一分ほどで着替えられるようになっていた。
桜ヶ峰学園の制服は少し変わっていて、ブレザーにセーラー服の襟がついている。可愛いと言われ、結構人気があるのだ。
男子は学生服などではなく、普通にブレザーをきている。
歯磨きをし、顔を洗いトイレをすませるとすぐさま家を出る。
私に朝ごはんを食べる、という習慣はない。
いつもぎりぎりに学校に行っていたため気づけばそんな生活になっていた。
電車に揺られつつ、この前の新歓のことを思い出す。
新入生の反応はバッチリだった。そんなに大きな技をしなくても、体操に見慣れていない人からすると十分にすごいことらしい。後からとったアンケートでも上位に入っていたと聞き、みんなでガッツポーズをしたのだ。
あとは、今週末から始まる仮入部に何人来るかが問題だが人さえ来てしまえばなんとでも勧誘はできるはずだ。
そんなことを考えたら駅に着いていた。
そして反対側のホームからやってきた沙耶に合流すると、そのまま学校へと向かった。
放課後、私は授業が終わるとすぐに三郷駅に向かった。
三郷町はちょうど、私と天野の学校の中間あたりに位置する町だ。それなりに大きい街で、平日の夕方などは学校帰りの生徒のよい遊び場となっている。
そして、私は三郷町での定番の待ち合わせ場所、変なオブジェのあるところで天野のことを待った。
基本的にわたし達は時間と、場所さえ決めてしまえばその後はよっぽど時間に遅れないかぎり連絡をしない。
天野がそっちのほうが楽しい、というのでそうしているのだ。
「和泉っ」
後ろから背中を叩かれた。振り向くと、そこに天野がいた。
「なんか…久しぶり。何カ月ぶり?」
「一カ月ぶりくらいじゃないのか」
「そっか…」
「で、何すんの?疲れたんだけど」
「どっか店、はいろーぜ」
というものの、この時間帯はどの店も混んでいる。なんとか二人が座れる店を探して、やっとのことで席についた。
「最近どう?」
「うーん、別に普通」
私達は付き合っている、ということにはなっているものの毎日メールをしたり頻繁にあったりもしない。
どちらかというと友達に近い。
いつも、会ってお茶して、話して、それくらいしかしいてないが、飽きないのでそれでもいいかな、と思っている。
遊園地に行ってみたり、クリスマス、お互いの誕生日を祝ったりしてみたくないわけではないが天野がそんなことができるとは思えない。
「そっちは?」
「俺、モテ期が来たかもしれない」
「…それ、嬉しいの?」
「嬉しくない、一刻も早くやめて欲しい」
「男子校ってすごいところだね…」
天野はイケメン、というよりかは美少年。中性的な、女の子に近い顔立ちをしている。おまけに細くて小さいので男子校ではいい女子がわりになるのかもしれない。
「私とのとこ、ばらしちゃおっか」
「それはやめて、俺そういうキャラじゃない。それに男子校での彼女持ちってかなり危うい立場にいるんだ。」
「へー…大変そう、共学でよかった…」
その後もたわいのない話を二時間くらいだらだらと続けると
「会計するよ」
「うん、待って今お金出す…あ、ぴったしあっまた」
おごってもらったり、は基本的にしないなんだか借りを作るようで嫌なのだ。
「それじゃ、帰ろうか」
私はこのタイミングが一番嫌いだ、なんだか胸を締め付けられるような、息ができないような、そんな気分にさせられる。
前を歩いている天野の背中と真っ赤な夕日が私を切ない気分にさせる。
だからといってそれを言っても仕方がないの無言でついていく。
中学校が同じなため、家も近く最寄駅も一緒だ。
そうすると帰りの電車も必然的に同じになる。その間、ずっと息の詰まるような思いをすることになるのだ。
帰り道、途中の三叉路で私達はわかれる。
「じゃあね、」
今までずっと無言だった天野が言う。
「…うん、またね」
そのまま天野は振り返ることなく行ってしまった。夕日のまぶしさが目を細めながら、私はしばらくそこに佇んでいた。
家に帰ってベッドに飛込んで思うのだ。
なんで、こんなに息が苦しくなるのに、私は天野に会いたい、と思ってしまうのだろう…
後書き
普段からこのくらい長めにかければいいのですが…
既に自分で自分の決めた設定が分からなくなってきてます。ちゃんと書き留めておかないとだめですね。
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