| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

学園バラライカ

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

1.捨てた物
  2.強者と弱者

 
前書き
授業は始まった
 

 
授業は始まった


荒屋敷さんは普通に姿を見せた


「写真では軍服だったけど、普通に制服を着てるわね」
「ええ、とても綺麗な方ですね」
「片目塞いじゃってあれで戦闘できるのかしら・・・、」


たしかに荒屋敷さんは片目を前髪で隠している
それでも叉慧先輩の攻撃を全てよけているのだから
視界には何の問題も無いのだろう


「無駄な動作がないわね、さすが本物の軍人は動きが違う
ナイフだって叉慧の攻撃を受け流すぐらいにしか使ってない
荒屋敷からの攻撃はまだ一回も無いわね、」


パキ


確かに何か、たとえるならプラスチックの薄い板が折れたような
音が聞こえた


「変な音が・・・、」
「どうかしたの?薫」


嫌な予感がする、なんともいえない、寒いような苦しいような
ふと叉慧先輩達の方を見る
いまだに荒屋敷さんは避けているだけだった
違うこれは、


「魔術・・・!」
「魔術がどうかしたの?」
「真理子さん、荒屋敷さんの足元を見てください」
「・・・、あれは・・・!魔術を足で書いていたのね・・・!
風紀員、今すぐ一般生徒を追い出して、非難させて!」


普通の魔術は魔力使って行う、その魔力が大きければ大きいほど
強い魔術を使う事ができ、その魔術を発動させるには


「魔法陣を開くか、魔術を読むか、の二択、でも荒屋敷さんは」


魔術を地面に書いている・・・、
それで発動するの?叉慧先輩の攻撃を避け続けているのは
それだけじゃないはず・・・、


「叉慧先輩を誘導している、」


どんな魔術なのか描いている文字があいまいすぎて分からない


「発動」
「なっ」

「叉慧先輩!」


荒屋敷さんの足元が紫色にふわりと光ると
叉慧先輩の足元からグチャリと音を立てて鋭い爪の手が出てくる


「召喚魔術、魔術がぐちゃぐちゃだから未完成のままで
呼ばれるだろうけど、それでも飛びっきりのヤツだよソイツは」


手は叉慧先輩の足をがしりとつかむと
地面からゆっくりと人の顔のような物が出てくる
腐臭が漂い、肉は腐りただれ、それは人ではなく死体


「死人・・・?!」
「驚く程じゃない、お前だって何回も見てきてるだろ、死体ぐらい」


死人は叉慧先輩の足をどろどろとした沼に引きずり落とそうとする


「くっそ!!」


叉慧先輩は死人に日本刀を突き立てる
その瞬間非常ベルが鳴る


「・・・、やめにしよう生徒会長殿、」


スウッと消える死人を見てホッとするが荒屋敷さんは
キョロキョロと周りを見ると真理子さんを見た
それと同時に真理子さんの携帯がなる


「もしもし、私よ、何?そう、ええ、殲滅?
まさか全員殺す気なの?ええ、わかったわ、
2、3人は生きて捕まえなさい、ええ、ありがとう」


真理子さんが携帯をしまうとスッと息を吸う


「23人の反対派グループが第三資料室に火炎瓶を投げたらしいわ」
「そうですね、今日は一般生徒が特別科の方へ入って良い日
ですから・・・、そこで狙って来たのかも知れません、」
「とりあえず一般生徒の非難を優先に、真理子、風紀からは?」
「・・・、とりあえず生徒会も殲滅に向かうように・・・、との事で」
「ソウ・・・、」

「叉慧と私は東校舎へいきましょう、薫、ごめんなさいね
荒屋敷さんはまだ帰り道が分からないだろうから」
「わかりました、」


真理子さんと叉慧先輩が出て行くのをみてから
荒屋敷さんに話しかける
荒屋敷さんはすんなりと頷いてついて来てくれた


「荒屋敷さんは、軍人さんなんですよね?」
「ええ、そうだけど?」


さらりと返されどう話せばいいのか困ってしまう・・・、


「どうして嵐ヶ丘へ?」
「短期で日本特別調査本部へ移動となった
ついでに嵐ヶ丘の視察も頼まれた、それだけ」
「ずっとイヴァレータにいたんですか?」
「国籍は日本、そうね、でもまあ、イヴァレータに
10年以上はいるから、日本は10年ぶりかしら・・・、」

「そう、なんですか・・・、」
「坂神 薫と言ったかな、」
「え、あ、はい!」
「君はあの馬鹿よりは頭が回るようだな、」
「え、っと?叉慧先輩ですか・・・?」
「私の魔術に気づいたの、薫、貴方が一番早かった
薫と同じタイミングで馬鹿も気づいていたら私の詠唱は
止めれていたかもしれないのにな、」

「叉慧先輩は確かに、戦闘となると前しか見えなくなる所は
あるとは思います・・・、でも荒屋敷さん、貴方が誘導していた
とも見えるのですが・・・、」

「確かに、あの魔術は指定した場所に獲物を誘い込まなきゃ
ただのゴミカスだ、だがそれに気づかずホイホイ誘われる
馬鹿は本当の戦場じゃ餌、いや餌以下か、時間稼ぎにすらならない」


荒屋敷さんはハッと笑い飛ばす
長い辛子色の髪が太陽の光をうけてキラキラと輝く


「私はな、薫、どんなに力を持っていたとして、その力を
上手く使うには頭が必要だと考えている、そしてその頭が
使い物にならないのならば私は味方に必要ないとも思う
逆に言うと、力が無いが頭が良ければ、ただの脳筋馬鹿よりは使える
そう言いたいんだよ」

「荒屋敷さんは、」

「やめた、薫、無駄な話はやめにしよう」


荒屋敷さんはゆっくりとハンドガンを懐から出す


「荒屋敷さ・・・、ん・・・?」
「薫、一つだけ良いことを教えてやろう、戦場は
弱者は強者に縋り付く事で生き残るんだ・・・、
この戦場で誰が強者で誰が弱者か、その空っぽで
平和ボケした頭でもチッタァ考えりゃ分かるでしょう?」


そう言うとハンドガンを握り締めゆっくりと
荒屋敷さんは歩きはじめた


「薫、何故私馬鹿が嫌いか、わかるか?」
「え?」


ざわりと寒気が走った


「6人、ハッ、ただの死に損ないか」


ゆっくりと階段を下りると荒屋敷さんはニィっと目を細め
壁を撃つ


「馬鹿はな、自分の命を一番大切にする、」


もう一発、もう一発、銃声が鳴り響く


「そして自分の命を一番投げ捨てる、」


ドクリドクリと赤い血溜りが広がる


「貴様っ!!」
「ヒッ!」


急な男の怒声にびっくりして荒屋敷さんの後ろに隠れる


「そして、馬鹿は、絶望に弱い恐怖に弱い、
だから弱者と強者の差が分からず孤独に飲み込まれる」


荒屋敷さんは男に蹴りを入れると
男は吹っ飛び壁にぶつかる


「私はな、何も考えない阿呆が一番嫌いだ」


銃声と共に男は血を噴出し倒れた


「薫、そう考えると、お前は長生きするかもなぁ・・・、」


ホールを抜けると中庭にたどり着いた
中庭はかなり広く特別科の校舎へ行くにも最低5分以上はかかる


「聞きたい事があるようだが?」
「荒屋敷さんは、」
「月子でいい、苗字で呼ばれるのは慣れてない」
「月子さんは、何故日本に・・・?」


月子さんはチラリと私を見ると制服のポケットから
煙草を取り出し一本口に銜えると魔術で火をつける


「イヴァレータ王族、イヴァレータ国第四女王
セシリア・イヴァレータ、名前ぐらいは知ってるだろう」
「は、はい、現在の王シュヴァリエに王権を託したと言う」
「そうだ、そして私の上司でもある、」
「はい、月子さんは女王護衛部隊、隊長だったと聞いてます」
「失踪した、」
「え・・・、」

「少し昔の話だ、セシリア女王は失踪した、私は責任を問われ
護衛部隊を解散し、そのまま日本へ来た、現在もシュヴァリエ率いる
数個の軍隊が女王の探して世界中を飛び回っている」

「失踪って、連れ去られたのですか?」
「さあ、ある日突然いなくなった、あの方の事だ魔族との交流も深い
魔族の方にも連絡を入れているが、あっちもあっちで色々あったらしい」


月子さんはフウッと煙を吐くと煙草を携帯灰皿にしまった


「月子さんはセシリア女王を探しているのですか?」
「探している、が、日本に来たのは別の理由もある」
「別の理由・・・?」
「率直に聞こう、嘘をついたならすぐにお前の頭に風穴が開くと
思いなさい、叉慧、四季塚 叉慧は人間か?」


月子さんは真面目な表情で私を見る
綺麗な顔だと思った、あまりにも出来すぎている
何一つとしてかけてない完璧な美を持っている
なのに綺麗ではなく恐怖が強くて、私は目をそらした


「わかりません、この世には人体の一部が機械もしくは魔術
で生きている人間もいます、日本の科学では何が起きても
おかしくはないです・・・、叉慧先輩が人間かそうじゃないか
それをお決めになるのは月子さん貴方の仕事だと思います・・・、」

「・・・、例えばの話だ最終的に叉慧が殺人兵器だったとしよう
イヴァレータ国の全ての技術を持って作られた叉慧と言う
殺人兵器はいつ暴走するかわからない欠陥品、
一回暴走すれば、この学園はすぐにでもゴミクズとなるぐらいの強力」


月子さんは私の前に立ち足を止める


「もしも、叉慧がそういう存在だったとするなら
お前はこれからどうする」
「暴走は絶対なんですか?」
「絶対、欠陥品はいつかは壊れる」
「月子さんだったら止めれるんですよね」
「止めれるがそれと同時に兵器の破壊もする」

「私は、叉慧先輩が兵器で私達の敵になっても叉慧先輩を救える
のならば救いたいと思います、確かに頼りない先輩ですけど
悪い人じゃないんですよ?」
「救えると思ってるの?」
「月子さんは、月子さんは大好きな人いますか?それとも
落ち着くって思う場所ありますか?その人がその場所が
敵になったり跡形も無くなったりしても、守りたいって
そう思いませんか?」


最悪な状態になっても、


「月子さんはとても綺麗な人ですね、本当に日本人ですか?」
「え、ええ・・・、」
「月子さんの髪、本当のお月様みたいです」


そう言って私は笑う
月子さんも釣られて微笑む、懐かしいと言う感じに
きっと私の言葉は昔誰かに言われたのだろう


「昔、ある一人の女性にあってね、薫、お前は
どの女性に少しだけ似ているような気がするよ」
「その人はどういう人だったんですか?」
「優しい人だった、」


そう月子さんは言うと校舎の入り口で待つ叉慧先輩を見つけ
少し早歩きで叉慧先輩に近づく


「2、3人あっちで死んでる、回収しておいてくれる?」
「俺の方が先輩なんだけどナァ、まあいいや、薫、怪我ない?」
「はい、月子さんが守ってくれました、とっても強いんですよ?」
「非難解除が出たから安心して寮に帰ってネ、月子は明日から
生徒会員になるから、判子忘れないヨーニ!」
「生徒会員?」
「真理子とヴィチカが話してタヨ、後で電話するって、んじゃ俺
風紀員と掃除にいくから!」


そういって笑顔で訓練場へと走っていく叉慧先輩を見送る


「月子さんも生徒会員になるんですか?」
「確かに授業がさぼれるのはありがたいわ・・・、」


月子さんは月子さんで軍の仕事があるらしく
生徒会に入るのは嫌ではないらしい


「じゃあ改めて、荒屋敷月子だ、宜しく」
「宜しくお願いします!」


暖かい日だったのに月子さんの手はとても冷たかった


--------------------------------------------- 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧