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Element Magic Trinity

作者:緋色の空
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悪魔の島編
  2階


「やっぱりシャバの空気はうめぇ!最高にうめぇっ!自由って素晴らしいっ!フリーダァーッム!」
「うおっ!喧しい!」
「大人しく食ってろ!」
「アンタの場合、あと3日くらい牢の中にいれば良かったんじゃない?」
「んだとぉっ!」

どたたたた・・・と炎を吹きながら走り回るナツ。

「結局『形式だけ』の逮捕だったなんてね・・・心配して損しちゃった」
「そうか!カエルの使いだけにすぐに『帰る』」
「さ、さすが氷の魔導士・・・」
「ハンパなく寒いギャグだね・・・」

ぐたーっとルーシィが項垂れ、グレイが寒いギャグを言い、エルフマンとルーが震える。

「・・・で、エルザとの漢の勝負はどうなったんだよ、ナツ」
「漢!?」
「そうだ!忘れてたっ!エルザー!この前の続きだーっ!」
「よせ・・・疲れてるんだ」

エルフマンの一言で勝負の事を思い出すナツだが、エルザは静かに食事をしている。
が、そんな事お構いなしなのがナツだ。

「行くぞーっ!」

右の拳に炎を纏い、エルザに向かって走る。

「やれやれ」

そんなナツにエルザは仕方ない、というように溜息をつき・・・。





ゴンッ!




ハンマーで一撃お見舞いした。
ナツはそのまま吹き飛び、ギルドの壁まで飛んでいく。
そしてそのまま気絶した。

「仕方ない。始めようか」
「終ー了ー!」

勝負らしい勝負が始まる前に、ナツは負けた。
まぁ、あの一撃を喰らって立っている方が無理だろう。
出来るとしたら、身体を水に変換できるティアくらいだろうか。

「ぎゃはははっ!だせーぞナツ!」
「やっぱりエルザは強ぇな」
「おい、この間の賭け有効なのか?」
「あーあ・・・またお店壊しちゃってぇ」

その光景に大盛り上がりするメンバー達。
だが、ナツにはもう1人勝負する相手がいた。

「ティアー!俺と勝負しろーっ!」
「はぁ?アンタ、今さっきエルザにやられたばかりじゃない」
「んなもん関係ねぇっ!行くぞーっ!」

すぐさま復活し、今度はティアに向かっていく。

「全く・・・」

ティアは溜息をつき、ティーカップを置くと・・・。







シュバッ!






ティアの左掌から圧縮した水が勢いよく飛び出した。
その水はナツの丁度腹に当たり、そのまま吹っ飛んでいく。
そしてまた気絶した。

「面倒ね、早く終わらせるわよ」
「終ー了ー!」

またしても勝負らしい勝負もせず、ナツは負けた。
そしてまた騒ぎ出すメンバー達。
その様子を見てミラはクスッと笑った。

「ふぬ・・・」
「どうしました?マスター」
「いや、眠い・・・奴じゃ」
「あっ」

マカロフがそう呟いた瞬間、ミラがカクンっと倒れ眠ってしまった。

「!」
「これは!」
「くっ」
「眠っ!」
「あぎゅっ・・・」

ミラだけではない。
グレイ、エルフマン、エルザ、ルー、ルーシィ、ハッピー、アルカ、ティア・・・ギルドにいた全員が一斉に眠ってしまった。
するとギルドに全身を覆い隠すような恰好の男が現れる。

「ミストガン」

覆面をした『ミストガン』は無言で依頼板(リクエストボード)の前に立ち、1枚の依頼書を手に取る。

「行ってくる」
「これっ!眠りの魔法を解かんかっ!」
「伍」

そう呟き、後ろを向く。

「四」

そう言って眠っているメンバー達を少し見つめる。

「参」

メンバー達は全員眠っている。

「弐」

そう呟いた時、ミストガンの姿は薄れる。

「壱」

そう呟いた時には、ミストガンはスゥ・・・と消えていた。
それと同時にギルドにいた全員が一斉に目を開く。
そんな空気の中、ナツだけはぐーぐー眠っているが・・・。

「こ、この感じはミストガンか!?」
「あんにゃろォ!」
「相変わらずスゲェ強力な眠りの魔法だ!」
「ミストガン?」
妖精の尻尾(フェアリーテイル)最強の男候補の1人だよ」

ルーシィの疑問にルーが答える。

「どういう訳か誰にも姿を見られたくないらしくて、仕事を取る時はいつもこうやって全員を眠らせちまうのさ」
「何それっ!怪しすぎ!」
「だからマスター以外誰もミストガンの顔を知らねぇんだ」
「睡眠ガスの類いなら吹き飛ばせるんだけど、魔法ときたら吹き飛ばせないしなぁ・・・」

ルーの説明を次ぐようにグレイとアルカが言い、ルーが困ったような表情をする。

「いんや・・・俺は知ってっぞ」

すると突然ギルドの2階から声が響き、全員がそっちを向いた。

「ラクサス!」
「いたのか!」
「珍しいなっ!」
「ちっ・・・」

声を上げる中、ティアは1人舌打ちをする。
ナツが後ろの方でピクッと反応した。

「もう1人の最強候補だ」
「で、ティアの天敵」

アルカがティアの方を向き、ルーシィもつられてそっちを見る。
ティアは明らかに不機嫌そうな顔で頬杖をついていた。
あの無表情のティアがこんな顔をするのは珍しい。

「ミストガンはシャイなんだ。あんまり詮索してやるな」
「ラクサスー!俺と勝負しろーっ!」

漸く目が覚めたナツの第一声はそれだった。
金髪にラクリマヘッドフォンの男『ラクサス』は葉巻を吸っている。

「ナツ、さっきエルザとティアにやられたばっかりじゃん」
「そうそう。エルザとティア如きに勝てねぇようじゃ俺には勝てねぇよ」
「それはどういう意味だ」
「エ、エルザさん・・・とりあえず落ち着こうぜ、な?」

ラクサスの言葉に反応し怒るエルザをアルカが宥める。

「俺が最強って事さ」
「降りて来い!コノヤロウ!」
「お前が上がって来い」
「上等だ!」

怒り任せにどたどたと2階への階段へ走るナツ。
だが、マカロフが手を巨大化させ、押し潰す形でナツを止めた。

「2階には上がってはならん。まだな」
「ははっ!怒られてやんの」
「ふぬぅ・・・」
「その位にしておきなさいな、七光り」

そこに文字通り氷のような声が響いた。
言うまでもないが、ティアである。

「おぉ・・・誰かと思えば女王様じゃねぇか」
「私の名はティアだと何回言えば解るかしら?それともアンタの脳はナツと同じで灰と化している?」
「テメェの名前なんざ、聞いた瞬間忘れちまうなァ」
「あらあら。灰ではなくてもう塵になっているわね」
「あ?テメェの凍りついた脳よりはまだマシだな」
「相変わらず、人をバカにするのが好きね」
「そいつァ、テメェもじゃねぇのか?愚かだ哀れだ、よく言ってんだろ」
「私は真実を述べているだけよ。アンタと同類にしないで」
「物は言い様、ってか」
「なんですって?」

バチバチと火花が散りそうな雰囲気。
犬猿の仲という言葉を説明してください、と言われたら誰もが『これです』と指さしそうな感じだ。

「な、何かいつも以上にティアが冷たいんだけど・・・」
「あの2人は文字通り犬猿の仲なんだよ」
「ナツとグレイと同じくらい・・・いあ、それ以上に仲が悪いよな」
「ギルドで1番仲の悪い2人だよ」

ルーシィの言葉にルーとアルカ、ハッピーが説明する。
その間にも2人は睨み合っていた。

「テメェが真実を述べているっつーんなら、俺もそうだな」
「アンタなんかと同類にしないでくれるかしら?迷惑よ」
「たまにはその口封じらんねーのか?女王様よォ」
「何度も言わせないで。私の名はティア、女王なんて愚かな誰かが勝手につけたモノよ」
「なら俺も言うが、俺ァ七光りっつー名前じゃねぇんだがなァ」
「アンタなんか七光りで十分よ。己の力を過信している、私が1番嫌いな人種」

相変わらずの冷めた口調だが、いつも以上に厳しい。
ティアの背後に吹雪が見えそうだ。

「弱者をからかうのが趣味なら仕方ないけれど、ナツをからかうのも大概になさい」
「はっ!俺に命令してんじゃねぇよ。妖精の尻尾(フェアリーテイル)最強の座は誰にも渡さねぇ。エルザにもミストガンにも女王様にも、あのオヤジにもな」
「あら、そう。ならいつまでも己の力を過信しているがいいわ」
「うるせぇ!俺が・・・最強だ!」















そんなひと騒動があった後、ルーシィとプルーはカウンター席に座ってミラとアルカと会話していた。

「さっきマスターが言ってたでしょ?2階には上がっちゃいけないってどういう意味ですか?」
「まだルーシィには早い話だけどね。2階の依頼板(リクエストボード)には1階とは比べ物にならない難しい仕事が貼ってあるの」
「S級の冒険(クエスト)な」
「S級!?」
「ププッ!?」

ルーシィとプルーが驚愕する。

「一瞬の判断ミスが死を招くような危険な仕事よ。その分報酬もいいけどね」
「うわ・・・」
「S級の仕事はマスターに認められた魔導士しか受けられないの」
「資格があるのはエルザ、ラクサス、ミストガン、ティアも含めてまだ6人しかいねぇんだ」
「S級なんて目指すものじゃないわよ。本当に命がいくつあっても足りない仕事ばかりなんだから♪」
「みたいですね」

笑顔のミラに対し、引きつった笑みを浮かべるルーシィ。

「・・・でも、俺はS級になる。同じ過ちを繰り返さない為に」
「え?」
「んじゃ、俺もう帰るわ」

アルカの言葉をルーシィが聞き返す前にアルカは席を立ち、入り口に向かっていく。

「今の・・・どういう意味なんだろう」

ルーシィがこの言葉を意味を知るのは、まだ先の話だった。














その後、ギルドを後にしたルーシィは運河沿いを歩いていた。
運河を渡る小舟から「じょーちゃん、危ねーぞ」と声がかかる。

「ミストガンもラクサスも聞いた事ある名前だったなぁ。やっぱ妖精の尻尾(フェアリーテイル)って凄いギルドよね」

とっとっと子供のように歩くルーシィの横をプルーが歩く。

「だいたい妖精の尻尾(フェアリーテイル)内の力関係も解って来たし・・・」

そう言うルーシィ。
ちなみにマスターが1番うえ、その下にあのオヤジ、その下にエルザ・ラクサス・ミストガン・ティア、そしてその下にナツ・グレイ・ルー・アルカと・・・何故かルーシィがいた。

「明日から仕事がんばろー!」

まぁ本人はそれでいいと思っているようだが。
そう言って意気揚々と家に入る、と。

「おかえり」
「おかー」
「やっほー」

凄い勢いで腹筋運動をするナツとダンベルを上げ下げするハッピー、そして何故か部屋のど真ん中で逆立ちをするルーがいた。

「きゃああああああっ!汗臭ーい!」
「ふんごっ!」

悲鳴をあげながらルーシィはナツの腹部にドロップキックを決める。

「筋トレなんか自分家でやりなさいよ!」

ルーシィの言葉は御尤もなのだが、そんな常識がこの3人に通用するはずもなく。

「何言ってんだ。俺達はチームだろ」
「はい、これキャバ嬢の分」
「ルーシィ、ピンク好きでしょ」
「それ以前に鉄アレイに興味ないですからっ!」

的外れすぎる3人の発言にルーシィがツッコむ。

「エルザやティアやラクサスを倒すには、もっと力をつけねぇとな」
「うん。ティアに追いつくために僕も頑張らないと!」
「あいさー!」
「あたし関係ないし・・・帰ってよ!」
「今日は修行でオールだ」
「誰か助けてぇぇっ!」

そう言いながら腕立て伏せをする3人。
ルーシィが泣きたくなるのも解る。

「俺、決めたんだ」
「?」

するとナツは筋トレを中断すると、ニカッと笑った。







「S級クエスト行くぞ!ルーシィ」






そう言ったと同時にハッピーがSの文字のハンコが押された依頼書を取り出す。

「どーしたのよ、それ!ちょっとどういう事!?2階には上がっちゃいけないはずでしょ!?」
「勝手にとってきたんだ、オイラが」
「ドロボー猫ー!」
「あ、それ面白いねっ!」

ルーシィの言葉を聞いたルーがケラケラ笑っている。

「とりあえず初めてだからな。2階で1番安い仕事にしたんだ」
「それでも700万Jだよ」
「ダメよ!あたし達にはS級に行く資格はないのよ」
「これが成功したら、じっちゃんも認めてくれるだろ」
「ティアもきっと認めてくれるよ!」

脱いでいたベストを着てマフラーを巻きながら、ナツは笑顔でそう言う。

「本当にもうメチャクチャなんだからなァ。自分のギルドのルールくらい守りなさいよね」
「そしたらいつまで経っても2階に行けねぇんだよ」
「とにかくあたしは行かない。3人でどうぞ」

ルーシィはきっぱりと断る。

「『島を救ってほしい』って仕事だよ」
「行ってみよーぜ」
「島?」

すると3人は怪談話をするかのように怖い顔をする。

「呪われた島」
「「ガルナ島」」
「呪・・・!絶対行かないっ!」

その言葉を聞いたルーシィは冷や汗を流しながら拒否した。
まぁ、呪いと聞けば誰だってこんな反応をするだろう。

「魚半分あげてもついて来ない?」
「全然嬉しくないし!」

嬉しいのはハッピーくらいだ。

「ちぇーっ!じゃあ帰ろ」
「そうしよっか」
「あい」
「少しは頭冷やしなさいよねっ!てゆーかドアから出てって!」

その言葉を無視し、ナツ達は窓から出ていく。

「ふぅ・・・」

それを見送ったルーシィは一息つく、が。

「あれーっ!?紙置きっぱなし!?」

足元に先ほどの依頼書が落ちていた。

「ちょっとォ!あたしが盗んだみたいじゃない!どおしよォォ!・・・お?」

頭を抱えてジタバタするルーシィだったが、ふと依頼書の報酬の部分に目が行く。

【報酬700万J+金の鍵】

金の鍵・・・それは黄道十二門の星霊を呼び出す鍵の事だろう。

「ウッソォ!黄道十二門の鍵が貰えるの!?」

それを見たルーシィはしばらくそのままで制止し、にっこぉと微笑んだ。

「ナツー!ハッピー!ルー!待ってぇぇん♪」

あれほど断っていたのに、金の鍵1本で3人の後を追ってS級クエストに行ってしまったのだった。 
 

 
後書き
こんにちは、緋色の空です。
えっとですね、少しご相談が・・・。
今考えているティアの過去なんですが、そうするとティアの新たな力が明らかになるんですね。
でもその力は攻撃も防御も出来て身体能力も上がるっていう、かなりチートな力なんです。
百鬼憑乱がチートだ、という感想を貰った為、こっちはそうしない様にと思ってたんですが・・・。
力が入るけどチートになるのと、チートにはならないけど力が無いの、どっちがいいですか?
意見をください。

感想・批評、お待ちしてます。 
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