転生者が歩む新たな人生
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第37話 修学旅行-1日目- その2
嵐山の旅館に着いたらネギがいた。
何を言っているのかわからないだろうが………、とかはいいわな。
まぁ、つまり学園長が無理矢理ネギをここに送って来たのだ。
ちなみに学園に残っていた某一般の先生が、学園長に指示され、高速道路をひたすら車で走って来て、送り届けた後、とんぼ返りしたようだ。
ホントお疲れ様です。
あきれて何も言えなかったのは、魔法先生である瀬流彦先生と模蕪先生だ。
ここまでしてネギを密使に仕立てたいのか、と。
清水寺での後始末の終わった新田先生と合流した後、学園長と電話越しに話したが、同じ日本語を話しているのかと思える程話が通じない。
さすがに先生として同行させるのは無理だと思ったのか、英国人のネギに古都京都奈良を堪能させてあげたい、とか情に訴えてくる。
宿等をキャンセルが(意図的に)されてないこともあり、結局こちらが妥協して、「ネギの教育実習生としての同行は認めないが、休暇中のネギがキャンセルされてない修学旅行用の宿や施設を使うことは認める」ということで落ち着いた。
つまりこの旅行の間、ネギを先生として扱わず、一緒に同行する休暇中の同僚として扱う、ということだ。
学園長が譲らず、いてもお荷物が増えるだけなので、こういう風に落ち着いた。
もちろん、ネギが一緒に連れて来たペットは、しかるべき場所以外では、新たに購入して持ってきたであろうケージに入れて出さない、出したのを見つけた場合は自由に処分することも学園長と確約し、学園長からネギに説明させた。
当たり前だがこの旅館内でのペットの放し飼いは禁止だ。
電話で学園長から指示を受けているネギは、かなり不満そうだったが、学園長に説き伏せられていた。
教員は割り当てられている時間の内に交代で宿の露天風呂に入ることになっている。
関西呪術協会との事前協議で収まる範囲の結界を3人の魔法先生で手分けして張り、その後順に露天風呂に入る。
風呂上がりにロビーを歩いているとケージを持ったネギが何やら神楽坂と話している。
「私達3-Aが変な関西の魔法団体に狙われてる!?」
とか認識阻害の結界も張らずに叫んでいやがる。
………。どういう説明をしているんだろうか?
狙われているのは、密使である「ネギ」と関西呪術協会の次期長候補で極東最大の魔力を持つ「近衛木乃香」であり、別に3-Aが狙われているわけではない。
清水寺の件は麻帆良学園に対する警告であって、たまたま被害が3-Aの生徒に集中しただけだ。
本気で狙われているなら、あの程度で済むわけないだろうに、そんなこともわからないのか? わからないんだろうなぁ。
盗み聞きするつもりもないので、そのまま2人の前を普通に横切る。
なんか桜咲がスパイだとか、わけわからんことも言ってるようだが当然スルー。
神楽坂がなんか話しかけたそうだったが、彼女は3-Aの生徒であるが、それ以前にネギの従者であるので、裏の話しでは正直関わりたくもない。
なので、聞こえなかった振りをしてスルーして通り過ぎる。
与えられた部屋でのんびりしていると、結界に反応がある。
ごく普通の侵入者と極小に気配を抑えた侵入者の2組の反応だ。
あらかじめ決めていたとおり、瀬流彦先生に全体の守備にまわってもらい、模蕪先生に普通の侵入者を対処してもらい、オレの方は気配を抑えた侵入者に向かう。
オレが向かった先はネギに与えられた部屋だった。
時間的にネギは露天風呂に入っている頃合いなのか? 侵入者しかいないようだ。
侵入者は部屋に据え付きの貸金庫を開けているところだった。
というか、知っている奴だった。
「何やっているんだ、小太郎?」
後ろから声をかけたら、小太郎はビクッとして振り返る。
「うぉっ。びっくりしたわ。なんや、暁にいちゃんか」
そう侵入者は狗族のハーフで修行仲間の犬上小太郎だった。
「いや、何をしているか聞いてるんだ」
「まぁまぁそう怒らんといてや。ただちっと東から来た暁にいちゃんの兄貴さんの戦力確認や。もっともおらんかったから、なんか役に立ちそうなもんを探してるんやけどな」
「はぁ………。まぁいい。で、なんかあったのか」
「そや。聞いてや、にいちゃん。金庫の中にこんなもんがあったんやで。しかもや。金庫もこの部屋も、なーんも魔法的な細工がしてないんやで。しかも笑えることにこの金庫の解除番号何番やと思う?」
「まさか………」
「せや。1000番やで。さすがに悪名高きサウザンド・マスターの息子や。結界破りの符やらなんやら準備してきたワイが情けなくなってきたわ」
………。いや、スマン。こっちが謝ることでもないがスマンとしか言いようがない。
ちなみに「こんなもん」と言われて渡されたのは学園長からの密書だったりする。
「なんというか、スマン。それしか言いようがないな。だが、さすがにこれは渡せんぞ」
気付いていないならともかく、気付いたからには盗難は防がないとな、一応。
「しゃーないわ。ここはにいちゃんの顔を立てんとな。その代わり、無事に帰らしてぇな」
「ふぅ。まぁ、いいか。わかったから去ね」
「へいへい。んじゃ、またな、暁にいちゃん」
「ああ、またな」
そう言い置いて小太郎は窓から出て行く。
小太郎が出て行った後、携帯電話で瀬流彦先生に無事撃退と連絡すると、模蕪先生が向かった方も木乃香がサルの式神に襲われたらしいが、桜咲が撃退したようだ。
さて、目の前に今回の騒ぎの焦点の一つである密書があるのでスサノオにも手伝ってもらい、多角的に精査する。
結果は何も仕掛けられていないようだ。
何考えてるんだ、学園長? まさかネギなら無事に届けれるとでも思っていたのか?
とにかく良い機会なので密書の内容を確認する。
内容はある意味最高だった。
「下もおさえれんとは何事じゃ。しっかりせい婿殿!!」と書いてある上に、ご丁寧に「ぷんすか」と怒っている学園長のデフォルメしたイラストが描かれている。
こんな書状を身内の手紙ならともかく、「親書」としてもしも認めるようなら、それはもう関西呪術協会の長ではない。
ある意味、詠春殿を計る試金石には打って付けだ。
早速、写メで撮って中部魔術協会の長に送る。
確認次第、強硬派を除く穏健派や中立派の有力者へと転送されるだろう。
ネギはどうやらロビーにいるようなので、密書を開封前の状態に戻して渡しに行く。
ロビーに着くとネギだけでなく、神楽坂と桜咲もいるようだ。
「3-Aガーディアンエンジェルス結成ですよ!! 関西呪術協会からクラスのみんなを守りましょう!!」
などとアホな掛け声が聞こえる。
わかっていたけどあれが自分の双子の兄かと思うともの哀しくなっいていく。
ネギははりきって外に出ようとしているのでその前に声をかける。
「ネギ、忘れ物だ」
オレに声をかけられたのが意外なのか、警戒しながら振り返る。
まぁ、ネギの反応なんか気にしてもしょうがないので強引に近づいてその手に密書を渡す。
「サギ! どこでこれを!!」
手渡されたのが大事な密書だったのがわかると詰問口調で問い質してくる。
「あーもうメンドクサイ。瀬流彦先生に聞いてくれ」
どうせ何を言っても信じないんだろうから、無駄な時間をかけないように瀬流彦先生に電話して事の次第を説明してもらう。瀬流彦先生にはネギが魔法的な防御を何もかけずに金庫に密書を入れただけで部屋から出ていることも報告しておいたので、その辺も注意してもらう。
電話をしている内に叱られたのか段々と落ち込むネギ。
神楽坂がどうしたのか聞いてきたので、「風呂に行っているネギの不在を狙って賊が侵入したので撃退して追い返し、密書を取り返した」と簡単に説明した。桜咲は前の件もあってかただ睨んでくる。
大方、関西呪術協会の回し者とか思っているんだろうなぁ。
微妙に違うんだが。
電話が終わり、携帯電話を返してもらうと用は済んだので、さっさと自分の部屋に戻る。
が、「ちょっと待ちなさいよ!」と神楽坂に捕まる。
まぁ、ネギは既に外に出ているのかいないので、神楽坂の話しを聞いてやる。
ロビーの片隅のソファーに座り、軽い認識阻害の結界を張る。すると「何をしたの!」とか言ってくるので、一般の人に聞かせないよう結界を張ったことを説明してやる。えらく感心していたので、「こんなことは裏の話しをする場合の最低限のことだ」と言うと、「ネギがしたことを見たことない」とか返事をされ、ネギの秘匿意識の低さが改めて浮き彫りとなる。
で、ギャーギャー騒ぎながら話すのを我慢して聞いていると要は「3-Aのみんなを守るのを手伝え」ということらしい。
あまりにもバカらしい話しだったので断ったら、よりうるさくなった。一緒にいる桜咲の視線も剣呑さが増していく。
仕方がないので、わかっていないだろうことを説明してやることにした。
長い話しになりそうだ………。
後書き
感想でもありましたが、ネギ訪京。ただし、修学旅行の先生としては数に入っていません。
で、一瞬?の隙をついて問題の親書の内容が詠春の敵性派閥に。
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