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舞台神聖祝典劇パルジファル

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第一幕その四


第一幕その四

「その時にはだ」
「もういたのですか」
「この女が」
「森の茂みの中でまどろんでいた」
 実際にその時の光景を語るのだった。
「その時既に死んでいる様で生気もなかったのだ」
「そうした状況だったのですか」
「この女は」
「そしてあの時もだ」
 グルネマンツのその目に今度は怒りが宿ったのだった。
「あの不幸が起こった時だ」
「山の向こうにいる不貞の輩が」
「王を傷つけたその時ですね」
「その時にもこの女は森の茂みに倒れていた」
 クンドリーを見ての言葉であった。
「御前はあの時何をしていたのだ」
「何を、ですか」
「そうだ。我等が槍を失ったその時にだ」
 その時のことを話すのであった。
「御前は我等を助けなかったのは何故だ」
「私は助力はしません」
 だがクンドリーはこう答えたのだった。
「それは決して」
「しないというのか」
「はい」
 まさにそうだというのである。
「その通りです」
「そうなのか」
「この女にあの槍を奪い返せというのは」
「できないのでしょうか」
「それだけ誠実で力もあるのなら」
「それはまた別の話だ」
 しかしグルネマンツは暗鬱な顔に戻って首を横に振ったうえで騎士達や小姓達に答えた。
「それはだ」
「違うのですか」
「それは、だ」
「あの槍をあの男から奪い返すのは誰にもできはしない」
「誰にも」
「できないと」
「そうだ、できはしない」
 こう語るグルネマンツだった。
「主の傷の奇跡がこもったあの神聖な槍はだ」
「恐ろしいことに」
「今は」
「世にも汚れた者が手に入れてしまっている」
 グルネマンツだけでなく他の者達も嘆いていた。
「その通りです」
「恐ろしいことにです」
「豪勇至極なアムフォルタス王があの槍を手に妖術師クリングゾルを討ちに向かった時に」
 グルネマンツの声の嘆きはさらに深まる。
「誰がそれを阻止し得たか」
「それは」
「とても」
「できはしなかった」
 こう語るしかなかった。
「恐ろしい美女に魅了され陶然としたその時にだ」
「槍を落とされたと聞いていますが」
「誰も見ていませんが」
「全てあの男の魔力だった」
 グルネマンツは自然にその目を閉じていた。
「そう、全てはだ」
「そしてその魔力によってあの男は」
「槍を」
「わしが駆けつけた時には槍は既にあの男の手にあった」
「そして王は倒れられていて」
「そうしてですね」
「その通りだ」
 今度は己の言葉に悲しみを込めるグルネマンツであった。
「わしは奮戦し血路を開き王と共に逃れたがだ」
「王はその時に」
「あの傷を」
「王の脇のあの傷は火の様にうずき」
 言葉には嘆きも入っていた。複数のそうした感情の中での言葉であった。
 
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