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舞台神聖祝典劇パルジファル

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第一幕その三


第一幕その三

「この者が持って来ました」
「クンドリーがか」
「そうです」
 その倒れ伏したままのクンドリーを指し示しての言葉であった。
「アラビアの果てからです」
「そうか、済まぬな」
 王はそれを聞いて申し訳なさに満ちた顔で述べるのだった。
「そこまでしてもらってだ」
「はい、それでは」
「このバルザムを使ってみよう」
 王はそのバルザムを受け取ってから言うのだった。
「クンドリー、礼を言うぞ」
「御礼なぞは」
 クンドリーは獣の様に起き上がって王に顔を向けて応えた。
「ただ。それを使って頂ければ」
「済まぬな、それではだ」
「はい、それでは」
 こうして王達は湖に向かう。グルネマンツ達はそれを頭を垂れて見送る。そして一行が過ぎ去ってからだ。グルネマンツはクドリーに対してまた声をかけるのであった。
「クンドリーよ」
「今度は何でしょうか」
「いつも済まぬな」
 穏やかな目を彼女に向けての言葉だった。今彼女はまた顔をあげている。倒れ伏したままだったが徐々に起き上がってもきていた。
「本当にな」
「ですが御礼なぞは」
「いつも我々を助けてくれる」
 こうも彼女に告げた。
「常に誰よりも先に出て知らせをくれて誰よりも遠くに行って王の為のものを持って来てくれる」
「しかしこの女はです」
「魔女で異教徒ですが」
「それでもなのですね」
「そうであろう」
 グルネマンツは周りの騎士や小姓達にも応えはした。
「しかしだ」
「しかし?」
「しかしなのですか」
「そうだ、しかしだ」
 そして言うのだった。
「今この女はこの聖地で暮らしているな」
「それは確かに」
「その通りです」
「そういうことだ」
 穏やかな声での言葉であった。
「ではそれでいいではないか」
「いいのですか」
「それで」
「そうだ。いいのだ」
 言葉はそのまま穏やかなものであった。
「心をあらためてこれまでの罪を購うものならばな」
「それでは」
「今は」
「ここにいてもいい。この女の贖罪は善行そのものだ。我々への助けはそのまま彼女を救っているのだ」
「しかしです。思うのですが」
「そうだな」
 小姓達は顔を見合わせて言い合いだした。
「この女がいない時に」
「我等にとって多くの苦難が起こっています」
「これは」
「それはあるな」
 このことはグルネマンツも否定しなかった。
「この女がこの聖域からいない時には」
「はい、その時にです」
「常にです」
 騎士達も小姓達も言う。
「我等にとってよからぬことが起こっています」
「常にです」
「わしも先の王もだ」
 ここでグルネマンツはあらたな人物の名前を出したのだった。先の王というのだ。
「ティートゥレル王だが」
「先王がですか」
「あの方もまた」
「あの方が聖杯の城モンサルヴァートを築かれた時」
 語るグルネマンツの目は遠くを見ていた。それは彼にとってはまさに最初の喜びであった。
 
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