問題児たちが異世界から来るそうですよ? ~無形物を統べるもの~
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露店巡り
「さて、三人を呼んだのはちょっと相談があるからなんだ。」
収穫祭前日の夜。
一輝は自分の部屋に音央、鳴央、ヤシロを呼んでいた。
余談だが、年少組、年長組も既にアンダーウッドに来ている。
「それって、スレイブちゃんのことですか?」
「確かに、あの子だけいないわね。」
「うん、正解。ちょっと気になることがあってさ。」
「気になること?」
ヤシロが聞きなおすと、一輝は一つうなずいて、話を続ける。
「スレイブって、お前たち・・・いや、俺以外と話すときはタメ口だろ?」
「ええ。初めて会ったときからそうだったわ。」
「実際、俺も始めて会ったとき、戦闘中はタメ口だったんだよ。」
「それがどうしたのですか?」
特に問題点が見つからなかったのか、鳴央が首を傾げてたずねてくる。
だが、一輝にとっては一つの問題(?)がある。
「つまり、あいつの素は初めて会ったときの口調のはずなんだ。
なのに敬語で話してるってのが・・・違和感ハンパ無い。」
「それは仕方ないわ。」
「それは仕方ないです。」
「それはしょうがないね。」
上から音央、鳴央、ヤシロの順で否定される。
「だって、あの子は剣で、一輝を所有者としてるわけでしょ?」
「それに、自分にかかっていた呪いも一輝さんが解いたわけですし。」
「何より、あの子は騎士っぽいところがあるからね。」
「だとしても、あそこまで固いのは・・・」
四人全員が黙る。
一輝は、三人の言うことに少し納得してしまい、音央、鳴央、ヤシロもまた、一輝の言うことに共感できたのだ。
「・・・で、今回の収穫祭で少しでもどうにかならないか、と。」
「それで私たちを呼んだのね・・・」
「でも、これは・・・」
「難しいよね~・・・」
四人のうち三人、アイデアが出てこない。
そして、残りの一人のヤシロはといえば、
「じゃあさ、お兄さんとスレイブちゃんでデートでもしてみたら?」
「「「は!?」」」
アイデアを出して、残りの三人を驚かせた。
「ちょっと待て!何でデート!?」
一輝は自分の部屋から音が漏れないようにしているので、何の躊躇いもなく大声を出す。
「あ、でも・・・」
「それならもしかしたら・・・」
しかし、残りの二人は納得してしまったようだ。
「じゃあ、多数決で決定だねっ。」
「その前に説明をしてくれ!」
一輝の言葉に、ヤシロが説明を開始する。
「特に深い意味はないよ。デートって行っても、男女の二人が出かけるってだけだし。」
「それは途中で気づいたからいいんだ。何で、それで解決するんだ?」
「遊んでて感覚が途中で友達、とかに変われば解決するでしょ?」
「もし解決しなかったら?」
「それなら、スレイブちゃんにとってどっちも素だ、ということです。」
しっかりと解決しそうなので、一輝は文句が言えなくなる。
「じゃあ、解決ね。私と鳴央は一緒に回るけど、ヤシロはどうするの?」
「う~ん・・・レティシアちゃんと一緒に回るよっ。まだちゃんとお話したことないし。」
「はぁ・・・OK。それで行こう。また相談があったら呼ばせてもらっていいか?」
「「「もちろん!」」です!」
こうして、一輝はスレイブと二人で収穫祭を回ることが決定した。
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収穫祭初日。
一輝とスレイブは二人で露店を回っていた。
「さて、何か食べたいものはあるか?」
「いえ、特にありません。マスターが食べたいものでいいです。」
結論、特に変わる様子がなかった。
「・・・はぁ。さっきも言ったけど、今日は主従関係とか気にしなくていいぞ?」
「無理です。マスターがマスターであることは、変わりようがありませんから。」
メイド服の一部である尻尾がフリフリしているところを一輝は確認する。
《これは・・・本心で言ってるな・・・》
このメイド服に搭載されている猫耳と尻尾は本人の感情に従って動く。
こうして動いているということは、感情を偽っているわけではないのだ。
《これじゃあ何も解決しそうにないけど・・・》
「食べたいものを言いなさい。」
一輝は命令した。
「そうですね・・・強いてあげるなら甘いものです。」
そう淡々と言ったスレイブに、一輝は大げさではなく、驚愕の表情を向けた。
「マスター、さすがにその表情は傷付きます。私も一応、女ですよ?」
「・・・あぁ、悪い。だな。スレイブは、一応じゃなく、れっきとした女の子だったな。ちょっと待ってろ。」
「え、ちょ、マスター!?」
一輝はスレイブをベンチ(?)に座らせると、“化”の式神も使ってざっと露店を回る。
一分後。
「好きなのを食っていいぞ。」
「どれだけ買ってきたのですか・・・」
一輝は目に付いた甘いものと、美味しそうだったものを片っ端から買ってきた。
両手に収まらず、ギフトを使って落ちないようにしているほどだ。
「お祭りなんだから気にするな。」
「マスターらしいですね。では、これをいただきます。」
スレイブは一輝の手の中から一つの袋、綿あめを取る。
そしてそれを、笑顔でモフモフ食べ始めた。
尻尾も音が鳴るほどに動いている。
《すこしずつ溶けてきてる・・・かな?》
一輝はそう判断して、買ってきたでかい骨付き肉を食べる。
「ふう、美味しかったです。箱庭にも綿あめがあるとは・・・」
「俺も驚いたよ。まあ、ハバネロ味とかがある辺り、どうかと思うけど。」
しかもそれが一番売れているのだ。
さすが箱庭。
そこからは全部食べるまでは話しながら歩き(さすがに大体を一輝が食べた。)、それからは遊びの類の露店を(どこもギフトゲームの形で出店している。)回ることにした。
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