問題児たちが異世界から来るそうですよ? ~無形物を統べるもの~
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SUN SYNCHRONOUS ORBIT in VAMPIRE KING 一時中断
一輝はとりあえず、全員と合流するために、治療所へと向かった。
そして、向かった先で約二名いないと聞き、探してみたが、どこにもおらず、かなりあせる。
《前のゲームみたいに飛鳥がいない、なら解りやすいんだが、耀がいないってのは相当な事だ。十六夜たちのほうで見つかってるといいんだが・・・》
一輝は最後に空から強化した視力でざっと探した後、再び治療所へと向かう。
そこにウサ耳をへにょらせた黒ウサギと、一輝一派と耀、レティシアを除いたノーネームの主力メンバーを発見し、一輝は尋ねる。
「黒ウサギ、耀は見つかったか?」
「あ、一輝さん。行方については判明しました。」
「どこだ?」
「それが・・・子供を助けようとしてあの城に乗り込んで行ったそうです。」
一輝はそれを聞くや、ペットボトルを手に持ち出口へと向かう。
「一輝さん?一体どちらに・・・」
「決まってる。耀を助けに行く。」
一輝がいつもより低い声でそれを言うと、黒ウサギと飛鳥があわてて止める。
「ちょ、一輝君!?あの城に一人で行くつもりなの!?」
「ああ。俺なら飛べるし、妖使いを使えば戦力もいける。最悪、伝説を大量召喚するさ。」
「待ってください!これからこの件について会合を設ける予定ですし、攫われた人の中には連盟の要人もいるとか。早ければ明日にでも救援隊を組むかと思われますので、今は我慢してください!」
「そんな呑気にしてる場合じゃない!」
「落ち着けよ。」
一輝が声を荒げて言うと、十六夜が一輝の前に立ち、冷静な声で押さえる。
「確かに、オマエの言うとおり呑気にしてる場合じゃない。だが、それでも作戦は必要だ。今は、落ち着くべきだ。」
「・・・悪い。取り乱した。」
一輝は十六夜の言葉に納得し、いったん落ち着く。
「黒ウサギに飛鳥も、ごめん。たぶん、これからもあんな感じになるから、そのときもよろしく。」
一輝は二人に頭を下げ、他のここにいない人たちについて問う。
「で、俺のメイドたちは?」
「ここの手伝いをしています。どう見ても人手が足りていませんから。」
「そっか。じゃあ、あいつらには頑張っててもらおう。」
一輝はそのまま、攻略会議を待つことにした。
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「えーそれでは此れより、ギフトゲーム“SUN SYNCHRONOUS ORBIT in VAMPIRE KING”の攻略会議を行うのです!他コミュニティからは今後の方針を委任状という形で受け取っておりますので、委任されたサラ様とキャロロ様は責任ある発言を心がけてくださいな。」
「分かった。」
「はいはーい!」
まったく正反対の返答をする二人。
一輝は、高いテンションで応答した猫族が記憶に引っかかる。
《なんだっけ・・・間違いなくどこかで会ってるんだけど・・・》
一輝が悩んでいると、十六夜が猫族、キャロロと話し出す。
「アンタもしかして、二一〇五三八〇外門で喫茶店をやってる猫のウェイトレスか?」
《そうだ!何か三毛猫とも仲がよかった・・・》
そこで一輝は完璧に思い出す。
なんでも、六本傷の頭首、ガロロ・ガンタックの二十四番目の娘で、父親の命令の下東で喫茶店を開き、諜報活動を行っているそうだ。
いい噂もちゃんと流れている、とありがたい事を言っているが、問題児達がそれを気にするはずがない。
むしろ、そのタイミングで悪戯をしだすのが、この問題児達である。
「へえ、諜報活動か。そんなことをしてるなんて聞いたら、今後はあの店に入れなくなるよなぁ、二人とも?」
「だな。美味しいからよくあそこを使って作戦を立てたりしてたけど、全部筒抜けだったってことだからな。怖くてつかえたもんじゃない。」
「そうよねえ。此処は一つ、二一〇五三八〇外門の“地域支配者”として地域に呼びかけでもしたらどうかしら?『“六本傷”の旗本に、間諜の影あり!』みたいなチラシでも作って。」
「いいねえ、それ。簡単にだけど、こんな感じか?」
「お、いいじゃねえか。効果抜群だろうな。」
十六夜と一輝、飛鳥の三人は周りに聞こえるようなノリノリの声音で話を進め、一輝は話をしながら、いつの間に準備したのか、パソコンとプロジェクター、スクリーンを出し、そこに広告の画像を映す。
一方のキャロは猫耳と鍵尻尾を跳ねさせて焦る。
「ちょ、ちょっと待ってくださいよ!そんなことをされたらうちの店がやっていけなくなりますよ!それになんですかそのチラシは!無茶苦茶完成度高いじゃないですか!」
それはそうだ。一輝が元いた世界で、実際に喫茶店をつぶすために使ったものを、少しいじっただけなのだから。
今回のケースとは違い、その喫茶店は法律に違反しまくっていたので、一輝は店の信用を一日で破壊し、店を一日で破壊し、大元のヤクザを一日でつぶしたのだが。
「あら、そんなこと知ったことじゃないわ。私たち“ノーネーム”には地域発展と治安改善の義務があるのだもの。表立って諜報活動をしている喫茶店なんて、放っておけるはずがないわ。」
「それを見逃して欲しいって言うなら・・・相応の態度ってものがあるだろ?」
「ちなみに、キャロロの発言は全部録音されてるから、今更ごまかすのは無理だぞ?」
すっごく生き生きとしている、問題児三人である。
そして、キャロロは半泣きだ。
「こ・・・これからは皆さんに限り!当店のメニューを格安サービス一割引に
「「「三割だ。」」」
「うにゃあああああ!サ、サラ様ぁ~!」
キャロロはサラに泣きつく。
だが、サラは割りとシビアに答える。
「「「いえ~い!」」」
その脇で、大きな音を立ててハイタッチする三人のアクマ。
「何でこんな問題児様がたは~・・・」
「止められないリーダーでごめん・・・」
それを見て、頭を抱える黒ウサギとジン。
そんなメンバーは、フェイス・レスが話を進めるよう促すまで、ずっとそんな感じだった。
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その後の、まじめな会議の内容をまとめると、
①黄金の竪琴、バロールの死眼は敵に盗み出された。
②それぞれの階層支配者、“サラマンドラ”“鬼姫”連盟“サウザンドアイズ”が同時に魔王の襲撃にあっている。
③仮称“魔王連盟”とでも言うべき敵がいる。
④敵の目的はおそらく“全階層支配者”を決めること。
⑤これになれば、暫定四桁の地位と太陽の主権の一つが与えられる。
⑥黒ウサギは“箱庭の貴族(笑)”であり、“箱庭の貴族(恥)”である。
⑦かつて“全階層支配者”だったレティシアは修羅神仏に戦争を仕掛けた。
⑧とりあえず、今回は捜索隊を送ってから決める。
⑨十六夜は既に謎が解けており、この勘違いを利用する方針で行く。
⑩キャロロを再び脅して口封じ。
といったところだ。
余計なものは混ざっていない。
ちなみに、このときは不憫だと思ったのか、一輝はキャロロの頭をなでて慰め、一人だけ印象をよくしていたのだった。
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