問題児たちが異世界から来るそうですよ? ~無形物を統べるもの~
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種
「さて、ついでだしこのままアンダーウッドに行こうか。」
森を歩き、外門に向かっていた一輝は二人にそう提案する。
「白夜叉には報告に向かわなくていいのですか?」
「大丈夫だろ。そんなことよりも収穫祭に参加したい。」
「楽しそうだもんね、収穫祭!」
スレイブは少しばかり抵抗があり、ヤシロは肯定的。
この様子なら多数決で決定だろう。
ちなみに、残りの二人はいまだに気絶しており、音央は一輝が背負い、鳴央は一輝の腕の中だ。
一人で二人を運ぶのはつらいはずだが、一輝は何の問題もなく進む。
「それに、白夜叉からも急がなくていいって言われてるし。」
「・・・解りました。では、そちらに向かいましょう。」
「レッツゴー!」
そうして、一輝たちは心躍らせ、アンダーウッドに向かった。
が・・・
「・・・なあ二人とも、ブチギレてもいいか?」
そこは、巨人族であふれかえっていた。
「失礼ながら、マスターが本気で暴れるとやり直す、ということも出来なくなるかと。」
「そうだね。本人が戦うにしろ、伝説を召喚するにしろ、そうなるのは目に見えてるよ。」
今にも暴れだしそうな一輝を、二人のメイドが冷静に抑える。
「それにほら、あの黒い霧が巨人達を倒していってるし、すぐに収まるよ。」
ヤシロのいうとおり、黒い霧が広がり次々と巨人族を倒している。
それを見た一輝は・・・
「あれ、何かで見たな。えっと・・・ペストか。」
一輝はかつて魔王であったものの名前を思い出す。
そして、すぐ横にいる元魔王を見て、
「ついでだし、お前のお披露目もやっちゃうか。」
「?」
「雹の嵐で全部つぶしちゃおう。」
一輝の提案に、ヤシロは楽しそうな顔になる。
「待てヤシロ!あなたがそれをやっても危険なのに変わりはない!」
「大丈夫!あの群れがいる範囲に限定するし、巨人だけを貫くよう設定するから!」
「いや、それでも」
「やっちまえ、ヤシロ!」
「マスターもあおらないでください!」
スレイブが必死に止めるも、止まる気配はない。
そして、ヤシロは詩を唱え始める。
「 Le tremblement si fort au mois de Mai,
Saturne,Caper,Jupiter,Mercure au boeuf:
Venus aussi Cancer,Mars,en Nonnay,
Tombera gresle lors plus grosse pu’un oeuf.」
唱え終わると、一輝とのバトルのときに比べれば低い威力の、それでも強い攻撃が巨人族を襲う。
結果として、ペストによって死ぬか弱り、そこに雹がとどめをさす。
オーバーキルだな、これ。
「さて、ジンのところに向かおうか。」
一輝はその光景に満足したのか笑顔になり、二人に提案する。
その笑顔は、どこか怖いものがあった。
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ヘッドホンの召喚に立会い、眺めていた一輝は耀が登場するなり、
「スレイブとキャラがかぶった?」
そう漏らした。
一輝の見る先では、耀がヘッドホンを、猫耳ヘッドホンをつけていた。
「う~ん・・・スレイブちゃんは猫耳メイドでワンセットだから大丈夫じゃない?」
「それもそうか。よかったなスレイブ。」
「別に、かぶっても構わないのですが・・・」
一輝は、音央と鳴央を医務室に預けた後、今回加わった二人を紹介するために来たのだが、それどころじゃなかったのでこうしてたわいもない会話をすることになった。
そして、フェイス・レスが耀のギフト、生命の目録をみていくつか会話をし、全部終わったところで一輝たちはジンのほうへ向かう。
「再召喚、お疲れ様。全部終わったからこっちに合流させてもらった。」
一輝は、ギフトを使ってほぼ瞬間移動でジンの背後に現れ、皆を驚かせる。
「か、一輝さん!?いつこちらに?」
「ペストが暴れてたとき。」
「へえ、魔王に勝手に挑んでたことに対して、いくつか聞いておきたいのだけど。」
「後回しでお願いします。」
「なら、質問をかえましょう。もしかして、あの雹は一輝君が?」
「その辺も含めて、二人紹介しとく。」
というと、一輝は後ろにいた二人を、前に押し出す。
「今回、俺が参加した魔王のゲームの結果、新しく同士になる二人だ。」
「元魔王のヤシロです!これからよろしく!」
「剣としてマスターに仕えることになったスレイブだ。これからよろしく。」
ぜんぜん違うテンションの二人の自己紹介の後、一輝からいくつか説明を入れる。
「まず、ヤシロちゃんは“ノストラダムスの大予言”で、あの雹をやったのもそのギフト。
スレイブは魔剣ダインスレイブ。といっても、その呪いはもう解いたから、今は超強い剣。
とまあ、こんな感じだな。質問があるなら、二人はここに置いてくから。」
といって、一輝はその場を去り、面白そうな気配のするほうへと向かう。
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一輝は、自らのギフトで邪魔なものをどかし、目的地・・・展示保管庫だった場所にたどり着く。
そして、そこにある燃えカスの中から面白そうな気配の正体、、まだ生きている種を発見する。
「これか・・・ためしに育ててみるとしよう。」
一輝はその種を、倉庫のうちの一つ、畑になっているところの一角に植え、成長を待つことにした。
その日の夜、アンダーウッド中に黒い契約書類が降り注ぎ、
一輝にとっては三戦目、魔王とのゲームの連戦が始まった。
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