流星のロックマン STARDUST BEGINS
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Prologue 秋の公園で
前書き
初めまして!
前の他サイトで投稿していましたが、この度、暁へと移動しました。
Arcadiaと申します。
早速ですが、この話は流星のロックマンの世界とエグゼの世界が共存している世界が舞台で、時系列的にはゲーム流星のロックマン1と2の間となります。
タイトルは流星のロックマンですが、基本的に主人公はロックマンエグゼこと光彩斗です!
オリジナルロックマンの誕生秘話のような作品です!
よろしければ感想などをくれると嬉しいです。
「ハァ...ハァ...!」
時刻は午後8時過ぎ。
デンサンシティのコトブキ町の歩道を走っていく少年がいた。
身長は170センチメートルちょっと、青の混じった瞳と長めの髪を額で分け、Yシャツにベストにジーパンといった格好。
発展した都会であるために、街灯によって真っ暗な夜だというのに、若干青みがかかって見える空の下、息を切らしながら走って行く。
そして角を曲がり石段を登ると、そこには広い公園があった。
草木の生い茂り、ブランコとシーソという今では遊ぶ子供も少ない遊具だけが設置されている都会には似つかわしくない公園だった。
そしてそこにはブランコに座り、空を見上げながらPEN・FTで写真を撮る少女がいた。
「探したよ...サヤナ。もう夕飯だ」
「え?嘘でしょ!?だってまだ6時...」
サヤナと呼ばれた少女は飛び上がり、公園の時計を見た。
公園のど真ん中に設置されている年代物の時計だ。
確かに6時31分を指している。
「残念だけど、その時計は止まってるよ」
「ホント!?...じゃあ今は....」
「10月30日午後8時13分ですよ?」
少年は腕時計を見ながらため息をついた。
少年はサヤナを迎えに来たのだ。
少女は身長が約140センチメートルで栗色の瞳とツインテールでいかにも小学生くらいの外見だった。
この時間の出歩きは正直言って危ない。
誘拐などされてしまったら気が気でなくなってしまう。
だからこそ少年は顔にこそ出さないが、とても安心していた。
「どうしてハンターに連絡してくれないの!?今日の夕飯はカレーだって舟子が...」
「電源が入っていないか電波の届かない場所にいるため繋がりませんだって」
「....ハァ...」
サヤナは自分のハンターVGのバッテリーが切れてしまっていたことに気づいた。
電源ボタンを押しても、いつものホーム画面は現れない。
そして予備に用意していた通話用のスマートフォンまでも忘れている始末だった。
少年はがっくりとブランコに座るサヤナの横に座った。
「まぁいいか。別に悪気があったわけじゃないだろうし。それよりも凄いな...街の明かりから逃れてみると、星ってこんなに綺麗なんだって思えるよ」
少年は先程とは違い、真っ暗な夜空に浮かぶ星を見上げた。
公園には街灯は1つしか無く、都会でありがちな夜空が見えない現象は無かった。
「そうだね。すごく綺麗で時間を忘れてたよ。やっぱりそういうこともたまにあるよね、彩斗?」
サヤナは少年を彩斗と呼んだ。
少年の名前は『光彩斗』、かつてあらゆる電脳犯罪に立ち向かった光熱斗の双子の兄だった。
「たまにはね。でも君は多いよ、テレビを見ても、ゲームしても、時間をすっかり忘れてるじゃないか?」
「う...そうだね...気をつけるよ」
「よろしい」
彩斗はサヤナの頭を撫で、立ち上がった。
夕飯でみんな待っているのだ。
家では『アイリス』、『メリー』、『スズカ』、『舟子』の4人の少女たちが待っている。
皆優しいため、少しくらい遅れても大丈夫という甘えが彩斗にもサヤナにもあった。
彩斗は立ち上がっても歩き出す気配を見せずに星を眺めていた。
「そういえばさ、スッゴク基本的なこと聞いてもいい?」
「?」
サヤナは彩斗に話し掛けた。
いつもサヤナからの質問というのは彩斗にとっては答えにくいものばかりだった。
好奇心の塊のような少女だった。
「どうして生きてるの?」
「え?」
意味不明の質問だった。
それは生物学者でもなければ答えられない難問。
だが彩斗はその質問の裏に隠れた真意が分かっていた。
「だってお祖父様から『彩斗は死んだ』って教えられてるから。まぁ実際は今、熱斗のネットナビとして心と記憶が蘇生してるけど、だとしたらあなたは誰?」
「......」
サヤナと彩斗の祖父は同一人物だった。
『光正』。
その道では有名なインターネットによる高度な情報化社会の開拓者の1人だ。
そして彩斗と熱斗はその息子、『光祐一朗』の子。
サヤナは祖父の生み出したネットナビだった。
光正には数え切れないほどの遺産がある。
電脳空間で超人を生み出してしまうようなものから、人間をデータ化してしまうようなとんでもないものまで揃いに揃っている。
彼女はそれが悪用されないようにとプログラムされた護衛のネットナビだった。
コピーロイドを使って現実世界に存在している。
しかしこのコピーロイドはかなり特殊なもので、普通のコピーロイドのように、プラグインしたネットナビの姿に変化するわけではない。
元からサヤナの姿をしている。
体は基本的に普通の肉体と変わらず、心臓が動き、血が流れ、食べ物も消化する普通の人間。
だが脳だけがユニット化された電子脳でプラグインすることが可能だった。
「良い質問だけど、正直言ってあまり答えたくはない...かな?」
彩斗は笑って誤魔化した。
ズバリ予感的中と言っても過言ではない。
その理屈からすれば、この世に『光彩斗』という人間は2人存在することとなる。
ロックマンエグゼとこの場にいる彩斗。
明らかな矛盾だ。
「やっぱりそう言うと思った。でも今日は答えて欲しい。そして彩斗がスターダスト・ロックマンになるまでの話も」
「...ハァ...でも一番僕が怖いのは、君が僕を嫌いになることだよ。きっと君は僕を嫌いになる」
「話さなかったらもっと嫌いになるけどね♪」
サヤナはとんでもないことを平気で言う。
一応、彩斗の生まれた年と、サヤナがロールアウトされた年は同じ。
つまり同年齢のはずなのに、外見も中身も小学生どころか幼稚園児に近い。
だが高校生の彩斗はそんな幼稚園児に勝つことはできなかった。
「...分かった。でも泣いても、苦しくなっても、僕は知らないよ」
「分かった」
彩斗は一呼吸置く。
そして再びサヤナの隣のブランコに腰掛けた。
「僕はね、君がおじいちゃんから聞いた通り、一度死んだよ。はっきりと覚えてないけど、苦しくて寒くてもう二度と味わいたくない感じ。そして父さん...パパが僕の脳から人格と記憶をコピーしてロックマンエグゼとして蘇生させた」
「うんうん」
サヤナもここまでは知っていた。
だが此処から先が問題だ。
ニホンでは基本的に死んだら火葬する風習がある。
そして彩斗も火葬され、光家の墓に入っているはずだった。
「でもここでちょっとした出来事が起こった」
「何?」
「僕の亡骸が他の人間とすり替えられたのさ」
「!?」
衝撃の告白だった。
彩斗自身、これは聞いた話だ。
実際、今の話でいうところの「亡骸」である彩斗がそれを体験した記憶があるわけがない。
「すり替えたのはディーラーっていう組織さ。前にスバルが倒したメテオGを地球にぶつけようとした犯罪集団。表向きは恵まれない子供たちを救済する孤児院の創設、援助を行う慈善事業財団。彼らはこの時、ある実験をしていた」
「.....」
「大昔に滅びたムー大陸の因子と技術で現代の人間にムーの力が使えるようにするという実験だよ」
彩斗はため息まじりだった。
そして自分の手のひらを見た。
「見事に僕はその実験台として蘇生し、こんなふうにムーの人間が持っていた力が使えるようになったのさ」
彩斗の手のひらで一瞬だけオーロラが発生したように見えた。
すると次の瞬間、彩斗の手のひらにはバラの花が乗っていた。
『マテリアライズ』。
電波を物質化する技術だ。
現代ではハンターVGなどの電波端末で使うことが出来るが、それを何のデバイスも使うこと無く、生身の肉体で行うことが出来る。
「そして僕は記憶を消され...別人としての生きていくこととなった。ディーラーの孤児で名前も分からず、ただ実験を受け、食事を与えられ、まるまると太らされる家畜みたいに...」
「...ゴメン、軽い気持ちで聞いた私が馬鹿だった」
サヤナは心から謝った。
聞く自分はともかく、安らかな眠りから無理やり起こされ、辛い生活を強いられていたのだ。
そしてそれを知らずに生きてきた。
それほど辛いことはない。
だがサヤナは次の瞬間、とんでもないことを口にした。
「じゃあ次はロックマンになった時の話を...」
自分でも馬鹿だと思った。
今の話でかなりの罪悪感が心にあったはずなのにまるで忘れてしまったように、次の話題に移った。
無神経、そんな言葉が似合う。
好奇心が罪悪感を打ち破った。
「...そうだね。次はその話か....。今度はもっと気分が悪くなるかもよ。辛くなったら止めて」
彩斗の言葉にサヤナは更に罪悪感に駆られる。
それはこちらのセリフだった。
何となく、この話も明るい話題ではない気がした。
「地球の平和を守るために!!」とか、そんな前向きな精神からロックマンになったわけではない。
何か辛い経験と向き合うために、何かの目的を果たすために望まずしてというのが大体なところだろう。
辛くなったら止めなければならないのは、彩斗の方だった。
「あれはもう4年くらい前になるかな?僕はディーラーの孤児院での教育ではなく、普通の中学校に通ってた。ディーラーの外の世界を見てみたかったんだと思う。だけどそれは間違いだった」
「どうして?」
「あの頃はW.W.Wやゴスペル、ネビュラなんかの組織が起こした事件のせいで、街中が腐敗してたんだ。みんな疑心暗鬼になって、自分が一番だとか、自分が優れている、劣ってるっていう競争が起こっているような状態でね。街には汚職と不良と犯罪が溢れてたんだ....。僕はそんな中、その競争に巻き込まれ、イジメを受けていた...」
サヤナはやはり後悔した。
彩斗の表情は今にも泣きそうだった。
だが彩斗は話を止めなかった。
「毎日毎日...学校では朝から暴力、暴言、陰口...ディーラーの孤児院に帰れば、実験、実験。味方はメリーだけだった。でもとうとう体に限界が迫っていた。そんな時、僕は彼女に出会った。学校でイジメられていた僕を救って友達になってくれた...。まだ世界は終わってないって思ったよ」
「世界が終わってないって....。この街を救ったロックマンがそこまで深く考え込んでるなんて誰が考えるだろうね?」
サヤナは公園の草原の中央のレリーフを指さした。
そこには流星のエンブレムが彫られた印象的な記念碑があった。
Dear Hero who saved our city.
STARDUST ROCKMAN
そうメッセージが彫られている。
「別にヒーローは何を考えていても人々はそれに干渉する必要なんか無いのさ。だから僕がロックマンである必要性もない。ロックマンはシンボルだよ。誰だっていいのさ。熱斗ともう1人の僕やスバルとウォーロックが作り上げてきた救いの象徴....いてくれるだけで安心できる。それでいいのさ」
彩斗は語り始めた。
4年前の出来事を。
ちょうどFM星人が地球を侵略するためにやってきたのをスバルが和解し、地球の危機を救ってから1ヶ月といった時だった。
体が悲鳴を上げ、もうだめだと思った時、ヒーローのように自分を助け、守ってくれた2人目の友達。
『高垣美弥』と出会った時だった。
後書き
最後までお付き合いいただきありがとうございました!
4年先の未来から始まり、過去を語りながら進んでいく話となります。
この話は彩斗=スターダスト・ロックマンというヒーローとして登場し、そんなヒーローの誕生秘話についての物語です。
原作に大体則っているのですが、スバルたちが小学5年ではなく中学1年と年齢が若干違います。
もしよければこれからも読んでやってください。
感想や誤字脱字の指摘等もお気軽に。
お願いしますm(__)m
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