ローエングリン
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5部分:第一幕その五
第一幕その五
「ホルンを」
「はっ」
伝令は王の言葉を受けて一礼する。そのうえで後ろにいるホルン奏者達に指示を出した。するとすぐにホルンの四重唱が辺りに響いたのであった。
「エルザ=フォン=ブラバントの為に剣を取らんとする騎士はここに」
エルザは期待の顔で立っている。しかし返事は誰からもなかった。
「いないのか?」
「ここには」
「いえ」
しかしエルザはそれは首を横に振って否定した。
「それは必ず」
「来られるというのか」
「それでは」
「我が神よ」
エルザはここで神の名を口にしてきた。
「どうかここに。夢に出て来てくれたあの白鳥の騎士を」
「白鳥の騎士!?」
「それでは」
ここで何人かがあることに思い立った。
「ここに来るには」
「川か?」
こう考えたのである。
「川から来るのか!?」
「ならば」
「むっ!?」
ここで川岸に近い丘の上から声がしてきた。
「あれは」
「どうかしたのか?」
「小舟がやって来る」
こう言うのである。
「小舟が来るぞ」
「小舟がか」
「そうだ。白鳥が曳いている」
「白鳥!?」
「それでは」
「乗っているのは誰だ」
今度の問いは乗っている者についてだった。
「誰なのだ!?」
「騎士か!?」
「そう、騎士だ」
「見ろっ」
見るようにさえ言われる。
「あそこだ」
「近付いて来るぞ!」
「むっ、確かに!」
「あれは!」
皆川岸に行って一斉に声をあげる。そこに確かに彼がいた。
「白銀の鎧だ」
「白いマントを羽織っている」
「うむ」
「白鳥の曳く鎖は黄金で」
「見ろ」
また言う彼等だった。
「あの剣を」
「白銀の剣だな」
「間違いない」
彼は剣も持っているのであった。
「腰には黄金のホルンがあり」
「その剣を両手に抱えるようにして持っている」
「間違いない!」
「騎士だ!」
皆口々に叫んだ。
「公女の仰っていた騎士だ!」
「間違いないぞ!」
「奇蹟だ」
遂にこの言葉が出された。
「騎士が来られたのだ」
「公女の為に」
「今ここに」
そして遂にその白銀の騎士の小舟が彼等の前に泊まり彼は岸にあがってきた。白銀の鎧と白い服にマントを身に着けた彼は長身で引き締まった身体をしていた。波打つ金髪を後ろに撫でつけ彫刻を思わせる硬質の端整な顔の青い目は強い光を放っていた。まるでゲルマンの美貌をそこに集めたかのような。麗しい姿の騎士であった。
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