転生者拾いました。
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濁り銀
覚銀
自己紹介を済ませるとワタシがどこから来たのか聞いてきた。
部屋備え付けのドレッサーの鏡から出てきたと言い、少しだけ鏡面魔法の仕組みを教えた。
「では、あたくしを外に出すことは出来ないでしょうか。」
「できなくはないですが、結界があるので外からしか入れません。ここからはワタシも出られません。」
「なら、破壊すれば、」
「自組織の協力者には手を出せないように設定されています。結界にも手出しできない。」
「ということは。」
「はい、外部からの介入を待つことしかできません。」
私たち二人の間に平和な空気が流れだしてきたとき、闖入者が介入する。
「やれやれ、様子見に来てみればこれはどういうことかな?」
「「!!」」
このテノールには聞き覚えがある。それにこの口調。思い当たるのはあの方しかいない。が、どこから発せられたものか。
「ふむ、サイモン様への捧げ物に付け加えるべきか。」
「誰です、どこにいるのです!」
「我はプラチナム・ミラー。鏡の騎士を統べるもの。」
「プラチナム・ミラー!?なぜあなた様が!?」
「教主様はサイモン殿との関係強化に悩んでおられる。ただクスィーの娘を差し出すだけでは不十分と考えなさった。
ちょうど、君たちは仲が良さそうだ。おまけのおかげでサイモン殿との関係が強化されそうだよ。ありがとう。」
「教主様が!?」
ワタシが供物に?それも教主様がそのようなことを。あり得ない。あのお方はそのようなことは決して考えないはず。白光教会を大事に思っていらっしゃるあの方がまさか。
しかし、教主様がそうおっしゃるのなら。
「教主様がそうお望みなら……。」
「駄目よ!あなただけでも逃げて!」
「君たちがここから出るときはすでにサイモン殿の愛玩動物だ。」
「いやよ!あたくし達はあなたたちの思惑通り動く人形じゃない!ヴェルテ!」
『Yes,Master.』
主の呼びかけに呼応した杖が壁を離れてエリザの下へ飛翔した。
「Licht・Magier!Sparkle eiskaltem(冷たき氷の輝き)!」
エリザの持つ杖の先から冷気を纏った光線が飛び、ドレッサーを氷付けに変える。
「無駄なあがきよ────。」
それっきりプラチナム様は鏡に現れなかった。
撃ち尽くしたエリザの手から杖が落ち、自身も床に崩れた。静かな嗚咽が聞こえ、ワタシは彼女の前に膝を突き顔を覗いてみた。彼女は泣いていた。自らの運命に嘆いているのだろう。
すると扉の開く音がし、死神と巫女が入ってくる。その姿はまさにボロ雑巾のよう。
「エリザ。」
「カズヤ様、セリナさん。」
死神がエリザを呼んだ。エリザは振り向き顔を合わせる。
「お久しぶり、と言えばいいですか?死神さん。」
「おまえは……!」
エリザの後ろに立ち死神を見据える。彼の顔には明確な怒りが見える。
「待ってください、カズヤ様!彼女は敵ではありません!」
「エリザ、退いてくれ。」
「いいえ、退きません。どうか彼女を……。」
「あいつはエリザたちを殺そうとしたんだぞ!」
「彼女は改心しました!あたくしたちを殺そうとしたことを。」
「だが、あいつは白光教会の人間なんだ。人間至上主義を掲げる危険な組織だ。ハーフエルフのエリザが擁護する必要はない。」
「しかし……。」
「もういいのです。エリザ様。」
エリザを脇に追いやって彼女の前に出て死神の前で頭(こうべ)を垂れる。
「ワタシは断罪されるべき者。幾千の命を刈り取りました。」
「だめです!シルバさん!」
「罪は償う必要があります。」
教主様のお言葉が真実ならワタシはすでに捨てられたも同然。私の代わりなどごまんといる。
「どうぞ、斬るなり犯すなりしてください。」
「シルバさん!カズヤ様、どうか彼女のお許しください!彼女は罪を強いられていたのです!」
今更教会に帰ったところで折半されるだけ。ならばここで死ぬのも一興。
しかしいつまでたっても命が刈り取られた感触がしない。
「……無抵抗の女性を斬る趣味も犯す趣味もない。消えろ。」
「はい。では。」
何もしないのか?この男は、何もしないのか。そうか。
ならばお望み通り消えてやる。
また会おう、死神カズヤ。
後書き
これで「濁り銀」を終わります。やっと終わった……。
次から新章に入るんですが、それが終わった後何するか考えてないんですよ。
カ「ナニぃ!?どうすんだよ!オレの活躍、どうすんのさ!!」
そこを読者の皆さんに考えてほしいのです。カズヤ達に行ってほしいダンジョンとかこんなキャラ出してくれとかがございましたら、応募して欲しいのです。善処しますから。
カ「こんな作者ですまん。応募は感想へではなく作者へメッセージを飛ばしてください。」
申し訳ありませんが感想欄に書き込まれた案は見送らせていただきます。
では、次回予告をば
虐げられた者の長は
棄民の城の王となる
次回 拠点
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