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第十八話 三体と二人
前書き
やっと更新できました。
この間、大学のレポート等で時間を取られた上に、書いている途中のデータが消えるというアクシデントに見回られるも何とか投稿できました。
それではどうぞ。
「オラァァァァァァァァ!!」
先に動いたのはランサーだった。
ランサーの標的はアサシン。
血のように紅い槍は、まっすぐアサシンの心臓を目掛け伸びてくる。
「ふんっ」
だが、アサシンも簡単にはやられない。
槍がアサシンの体を突く寸前、拳で穂先の腹を打ち、槍の軌道を変える。
アサシンはその勢いのままランサーへと拳を走らせた。
「甘ぇ!!」
ランサーは、アサシンの拳が届くよりも早く槍を手元へと引き戻していた。
アサシンの拳がランサーの槍の柄へと突き刺さる。
ガキン。
と、まるで鉄同士が当たったような音が響いた。
ランサーはアサシンから距離を取ると、槍を再び構え、攻めへと走る。
だが、ランサーがアサシンへ槍を突き出す事は出来無かった。
ランサーの蔭から、紅い影が飛び出す。
黒と白の双剣を握ったアーチャーは、ランサーがアサシンから離れると同時に自らも駆け出していた。
ランサーへと追いついたアーチャーは、意識がアサシンへと向いている内にランサーを討取ろうとした。
双剣が☓を描くようにランサーを切りつける。
「ムッ……」
アーチャーの剣がランサーを捕らえる事は無かった。
ランサーの槍はアーチャーの双剣を二振りとも受け止めている。
ランサーはアーチャーの存在に気付くと、アーチャーの剣の軌道を読み、神速の速さで攻撃を防いでいた。
槍と剣が交差する。
ランサーは剣を弾くと、アーチャーのバランスを崩しに掛かった。
その一瞬の隙。
ランサーの狙いはそこだ。
だが、
「……チッ――――」
ランサーは、アーチャーを追撃する事はせず、その場をバックステップで遠のいた。
同じく、アーチャーもランサーと同じように後方へと飛びずさった。
瞬間、地面が震えた。
先程までランサーとアーチャーが交錯していたその場所に、アサシンが拳を叩き込んでいる。
地面を震わせ、轟音を鳴らすほどの一撃。
アサシンはどちらかをこの一撃で仕留めるつもりで拳を叩き込んでいた。
片膝を突き、拳を地面に付けた状態のアサシンが、その場にゆっくりと立ち上がる。
ランサーもアーチャーもそのアサシンに攻撃を仕掛けたりはしない。
それがまるで、仕切り直しだと言わんばかりに。
ランサーは好戦的な笑みを浮かべ。
アーチャーは表情を崩すことなく冷静に。
アサシンは口元を歪めて至極楽しそうに。
それぞれがこの戦い、全力で他の二人を殺しに掛かっている。
三人はその場で、睨みを利かせて……
そして、次の瞬間には同時に地面を蹴っていた。
ランサーの朱槍は、確実に急所を貫こうとする。
アーチャーの双剣は、隙を見せた所を確実に斬り払おうとする。
アサシンの拳は、肉体を破壊するため一撃放とうとする。
三者三様だが、互いが殺し合いのために持つべき物を駆使し、命を狩りに来ている。
その戦いを、アーチャーのマスター……アスナはただ茫然と見つめていた。
人知を超えた戦い。
アスナはその時、自分自身の無力さを実感していた。
三人の戦闘はそれほど激しい。
まるで人間大のハリケーン同士が正面衝突しているかのようだ。
その一振りが突風を起こして木々を大きく揺らす。
戦闘の余波だけで周囲の空気が揺れ、衝撃が伝わってくる。
この戦いに、一般のプレイヤーである自分が介入する余地なんてない。
それどころか、近づいただけでその余波を食らい、HPを0にする……つまり死ぬ事になるだろう。
アスナはそう思った。
「……っ!」
ふと、視線を感じた。
殺し合いの最中、何故そのような視線を感じたのかは分からない。
ただ一つ言えるのは、それは敵意が向けられているわけではないという事。
正面へと目を向けた。
アスナの視線の先。
そこに彼女に目を向けていた少女が居る。
ランサーのマスターであるサチは、自分のサーヴァントであるランサーが交戦中にも関わらず、アスナへと視線を向けていた。
アスナはその目線に、思わず言いようも無い感情を覚えた。
憐みにも似たような感情。
サチの眼は、感情をほとんど宿していなかった。
先程、アサシンが来た際には感情を少なからず出していたのだが、今はその感情すら読み取れない。
どこか悲しい眼。
自分が何をしているのか……。
何をすれば良いのか分からない。
そう訴えかけているようにも見えた。
「なんで……」
アスナの口からそのような言葉が漏れた。
それは本能的に出てきた言葉。
「なんで貴女はこんなことを…」
アスナは問いかける。
目の前の少女……サチに。
サチは静かに眼を閉じて、口を開いた。
「私は、聖杯を手に入れる」
眼を開きアスナを真っ直ぐ見つめる。
アスナは体中から鳥肌が立つような感覚を覚えた。
絶対的な覚悟の眼。
何が何でもやり遂げて見せるという、覚悟の眼を……。
「聖杯を手に入れて、私は全てやり直す。みんなで笑いあった日常を、取り戻してみせる」
サチは言った。
自ら聖杯を手に入れると。
やり直してみせるという自らの願いを。
「だから、倒して。ランサー!!」
サチは自らの従者に命令を下した。
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私は彼女の言葉に思わず寒気を覚えた。
彼女の眼つきは本物だった。
最初は無感情で私を見つめていた。
だけど、私の本能的に出てしまった言葉で彼女の眼つきが変わった。
絶対に成し遂げなければならない。
その覚悟の持った眼を。
「なんでサーヴァント同士で戦わなくちゃいけないの!?協力し合えば攻略だって今以上に速くなるわ。なのになんで……」
私は少女にそう言葉を投げ掛けた。
サーヴァントという存在は人知を超えた強力な存在だ。
そんな存在がこの世界には七体もいる。
きっと協力すればこのゲームをあっという間に攻略してしまうだろう。
「……私は攻略する気なんてない」
「な……!?」
私は思わず耳を疑った。
攻略する気がない?
このゲームを終わらせるには、百層ものエリアを全て攻略するしかないのに。
「攻略しなくても、聖杯さえあれば全てをやり直せるのだから……」
「何を…言ってるの……?」
私は少女の話す内容が上手く理解する事が出来なかった。
全てをやり直すとはどういう事なのか。
「私はこの聖杯戦争で、最後まで勝ち残ってみせる。そして聖杯でこのゲームごと、全てを無かった事にして皆を救う。私が無くしたものを全て取り返してみせる!!」
絶句した。
聖杯で全てをやり直す?
私はアーチャーを召喚した次の日に監督役の所で、一応聖杯戦争について大まかな説明は聞いていた。
万能の願望機である聖杯を手に入れるための戦い。
確かに、万能の願望機と言うだけあってある程度の願いは聞いてくれるのだと思う。
だけど、彼女の言っている事は不可能としか思えなかった。
彼女は聖杯を使って、このゲームを存在ごと消し去ろうと言うのだ。
そんな事が本当に出来るのか。
正直、一度起こった事をそのまま無かった事にしようだなんて私には理解できない。
誰かを生き返らせようとか、そんなモノとは違い過ぎる。
「……そんなこと……出来るはず―――」
「あの人が教えてくれた。聖杯に不可能は無い。このゲームを無かった事にする事も」
彼女の顔は真剣だった。
このゲーム自体を無かった事にする。
その使命感がありありと伝わってきた。
「だから、私も自分自身で出来る事をやろうと誓った。皆が死んだあの日、絶対聖杯を手に入れてみせるって」
彼女は、私の眼を見つめていた瞳をランサーへと向ける。
「ランサー。宝具を使って二人を倒して」
彼女のその言葉は、私を含めてこの場にいる全員の空気を変えた。
後書き
三つ巴の戦いもようやく終わりを迎えそうです。
次回更新辺りには終わる予定で書いていきます。
また、私事ですが挿絵等々を描いて下さる方を募集してます。
描いて下さる方がいられれば、お願いいたします。
感想お待ちしています。
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